いろはに踊る

 シルバー社交ダンス風景・娘のエッセイ・心に留めた言葉を中心にキーボード上で気の向くままに踊ってみたい。

「おくりびと」に接して

2012年03月22日 10時01分32秒 | 兎に角書きたいの!
 平成20年8月・滝田洋二郎監督による「おくりびと」が公開された。本木雅弘氏が平成8年に青木新門著「納棺夫日記」を読んで感銘を受けて映画化された。しかし、私は観ることはなかった。

 突然の縁者の逝去。そこで「おくりびと」の細やかで心のこもった作法に思いを深くした。人には最大の儀式が3っある。「生・結婚・死」がそれである。このうち、自ら決められないものは生と死の2つ。そこに共通するものは自分自身の手で「世話や後始末」が絶対に不可能なことで、生も死も、だれかの手に支えられていると言うことである。

 自宅において納棺する前に死体を清める「湯潅(湯棺)」が行われた。湯灌をされる方は女性であった。遺族に向かいこれから湯潅を行いますが1時間程かかります。席を外されても結構ですとの挨拶があったが親族はその場を離れなかった。すべての用具を持参し「逆さ水」(普通は湯に水を入れてぬるめるが、この場合は水に湯を入れて適温にする)を作ってくださいとボールを差し出した。

 逆さ水で体全体を守るように細やかな作法をもって清めて旅装束に整えた。あぁ誰もこのように人の世話を受けるのだと思いながら「死」というものを考えこの世からの別れとは無常なものだ。地球誕生46億年なるも人がこの世から消えるということは何億年経ても再び蘇るということはなく生きているからこそ生を考え悩みそこに人生がある。と湯灌の儀の間考えを巡らせていた。

 旅装束が整い親族が着物、草鞋などの紐を縦結びに締めその場に居た親族の手で納棺の儀を執り行った。映画「おくりびと」は観ていないが、映画主演の本木雅弘氏が本を読んで感銘を受け映画化を図ったことは並みの人では思い描くことは無かったろう。本木氏の感性に敬服する。

 「おくりびと(納棺師)」主演の本木氏は、「納棺の時間によって故人も遺族も死を納得する度合いを深めている」「化粧をして棺にお納めして…その場の空気がゆっくりと溶けだすような感覚があった」「茶道と納棺それぞれの作法に人間らしい配慮が存在している」…と感想を語っている。

 納棺される直前に清める仕事内容は全く知らなかった。納棺師の仕事をつぶさにみつめることにより「生きていくこと」を通して「死んでいくこと」を考えさせられた「おくりびと」の存在である。
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