邦画ブラボー

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「西鶴一代女」

2007年01月17日 | ★人生色々な映画
どんぶり飯三杯食べたような満足感が残る女の一代記。
井原西鶴の原作を
溝口健二と田中絹代の黄金コンビががっぷりと
四つに組んで作り上げた日本映画屈指の傑作。

溝口健二が作り上げた作品を見ると
いつも「宝石」みたいだと思うのだけど
これもとびきり大きな翡翠のようなメノウのような
真珠のような映画である。

今だったらたぶん外国語賞はもとより、
アカデミー主演女優賞・ゴールデングローブ賞総なめ
するであろう、娘から老女まで。超セレブから街娼まで演じた
田中絹代の神がかりの演技力に圧倒される。

由緒ある家柄に育ち御所勤めをしていたお春だったが、
不義密通を犯し、男は斬首、家は取り潰しになり、
親子は追放されるが
器量がいいので松平家の側室となり、
殿様の子を産むも子と離されて里へ戻され、
借金で首がまわらなくなった親に島原に売られる。
身請けされた男が盗人だったために捕まって・・中略・・・
商家に雇われ、主人夫婦に可愛がられたかと思うのもつかの間、
廓勤めがばれて旦那に手をつけられ、嫉妬深い細君に責められ出奔・・
その他にも色々あるけど中略・・・乞食になっていたところを娼婦たちに拾われ、ヨタカになるが・・・

何度も中略しないと書けないくらい
運命に翻弄される「流転」と言うにふさわしい人生で、
男運が悪いと片付けるにはあまりにも酷い。

諸行無常の響きありありなのである。

で、無駄が無いといいますかテンポが実にいいんですね。
先へ先へと運んでいく脚本も素晴らしいし
水谷浩の見事な美術、流麗なカメラワークと
見るところは沢山あるが、なんといっても田中絹代。
強そうで弱い、弱そうで強い、
死ぬにも死ねない女の悲しみが伝わってきます。

年老いて娼婦になったお春が
巡礼の百姓たちの前で辱めを受ける場面は、
汚れ役もいとわない田中の女優魂を感じた。
汚れ役といえば
「モンスター」のシャーリーズ・セロンもすごかったが。
(注:文脈とはなんら関係ありません)

他にも名優が沢山出ている。
三船敏郎と宇野重吉が若すぎて、
そしてアクが無さすぎて誰だかわからない!!
三つ子の魂百までというが(?)かろうじて鼻をすするクセで宇野だとわかった
沢村貞子が可笑しすぎる!

1952年 原作:井原西鶴監督:溝口健二 脚本:依田義賢
稚影:平野好美 音楽:斎藤一郎 美術:水谷 浩

*映画の中のイイおんな*
田中絹代:田中絹代の凄さは何本か見てわかったのですが
わかったときは背筋がぞおっと寒くなりました。
凄すぎて。
役を完璧に理解して表現出来る女優さんなので、
いつもその役そのもののように見えますね。

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