邦画ブラボー

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「大菩薩峠」(岡本喜八版)

2007年11月10日 | ★ぐっとくる時代劇
仲代達矢
の「これまでの」ベスト3をあげるとすると
「切腹」「用心棒」そして本作だと思う。

机竜之介は実の父親にすら
「邪剣に身も心も冒されている・・早く死んでくれた方が世のため」
と言わしめるほどの狂気の男である。
原作を読んでいないため映画だけの解釈ですから念のため。

あの世から来たような暗いキ●ガイじみたまなざしは
洋画邦画東西南北見渡しても見当たらない。

竜之介のまわりにいる人々が生き生きと描かれているのは
橋本忍の脚本の力もある。

レイプされた挙句、夫を殺され、
竜之介と暮らすようになった浜(新珠三千代)が
「あなたさえいなければ私はこんなに不幸にならなかった」と責めると
「全ての悪を導いたのだのはお前だ。お前が悪女だ。」と
反対に攻撃する場面などは
「切り替えしをして相手にとどめをさす」
竜之介論法に深く感心してしまった。

内藤洋子の棒読み台詞もかえって可愛らしく聞こえてしまう。
その内藤洋子に謎の「たけのこ遊び」を迫る
天本英世の奇人殿様もはまりすぎ。

剣の道から逸脱した竜之介に対し、
「剣は心だ」と説く島田虎之助(三船敏郎)、
竜之介を仇と狙うが腕がついていかない宇津木兵馬(加山雄三)、
近藤勇(中丸忠雄)率いる新選組のダーティな結成なども絡ませ
怒涛のようにラストへなだれ込む。

三船敏郎の、雪の中での2,30人、一気斬りは
岡本監督の「侍」での桜田門の斬り合いを彷彿とさせワクワクする。
雪とか雨とか紙吹雪とか・・
「降り物」は最高に場を盛り上げますなあ~~

そして!

ラスト長まわしの竜之介狂乱の場面は、前代未聞の大迫力だが、
御簾もふすまもあんなにすっぱり斬れるということは、
やっぱり「真剣」では?!

抜群のタイミングで新選組がなだれ込んで
(いくらなんでもここは模擬刀でしょうが)
猛烈な斬りあい(クエッ!)が始まる。
畳に血をしたたらせながら
「ケ、ケケケケ・・・」と笑いながら斬りまくる姿は
手負いの狼、
狂犬、踊る獅子頭、
いや得体の知れぬ化け物のようで最高に恐い!
加えて人の斬り方が異常でこの男を表しているように思う。

このたちまわりをスローで再生して何度も見た私。
からだの動きが美しい。

続編が作られるはずが中止になったそうで、話は宙ぶらりん。
恐いままで終わるのもまた見たものを放心状態に追い込む。

20巻ある原作も読んでみたくなった。

市川雷蔵版は狂四郎に通じるカッコ良さが強調されていて
それはそれでよいが
完結編で見知らぬ子供とほのぼのと
風呂に入ったりするシーンでイメージが壊れた。

片岡千恵蔵版も見たい。

岡本監督のセンスにしびれた。白黒の・・影の使い方にも。
時代劇好き、必見!

監督 岡本喜八
脚本  橋本忍
原作   中里介山
撮影 . 村井博
音楽 佐藤勝
美術 松山崇

●映画の中のイイおんな
川口敦子:内藤洋子を売り飛ばす女将を演じてます。
いわゆる悪婆役だけど
すっきりした一重まぶたが色っぽい。立ち姿も
すらりと美しくいい女っぷり。いつも悪女役だけど上手いひとだなあ!

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