邦画ブラボー

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「永遠の人」

2006年10月27日 | ★人生色々な映画
木下恵介映画を見ると
いつも開いた口がふさがらなくなるので
見る前に
何が来ても驚かないように気持ちを整理しておく
のだが、

今回も仰天してしまった!

「永遠の人」?ロマンチックな恋愛物語かしら?などと
思っていたら大間違いだった。

思い切った発想、誰も考えない手法、
ズバッと切れる脚本と、三拍子揃っている上に
音楽がびっくり仰天です。

なんと「フラメンコ」に熊本弁の歌詞・ト書きを乗せるとは!!

水戸黄門のテーマでもおなじみ、
木下忠司は恵介映画に無くてはならないビックリ野郎だ。
木下兄弟が揃った眩惑世界は最強である。

切迫したシーンにフラメンコギターを
かき鳴らし、あおりにあおってくるからたまらない。

それでもって雲が綺麗
途方にくれるようなセンスである!

さだ子(高峰秀子)は
許婚のたかし(佐田啓二)が兵隊に取られている間に
地主の息子(仲代達矢)、に乱暴されてしまう。

戦地から帰ってきたたかしはそれを知り、村から出て行く。
さだ子は年老いた父親(加藤嘉)を連れ
仲代の家に嫁に入るが、終生夫をなじり続け、
過ちによって出来た長男(田村正和)まで憎んで
死に追いやってしまう。

次男は東京に出て「アカ」になって警察に追われるわ、
娘はたかしの息子と駆け落ちするわで、めちゃめちゃである。

高峰秀子はくどくどと恨みがましく、
仲代達矢は乱暴、佐田啓二は優柔不断だし
その妻乙羽信子は嫉妬深く陰鬱だし、息子は問題児だし、加藤嘉は情けない父親である。

全員どうしようも無いが
その反面、愛すべき側面も見えたりする。
それが人間という複雑な生き物なのだろうか。
脚本がすごい。

笛吹き川」に続いて作られた一代記、
憎しみの連鎖、愛憎の物語である。
ドロドロの内容なのに、
木下組のはえぬき楠田浩之が撮る画面は
引きもアップも恐ろしいくらいに美しいときたもんだ!

そんな作品に「永遠の人」という皮肉な題名をつけるとは、
木下恵介は
予想を裏切り続ける、天才だ!と確信した。

*映画の中のイイ女*
高峰秀子;この作品の中のデコちゃんは
恨みツラミで口がちょっと「へ」の字です。
田舎の奥さん役なので着物も思い切り地味。
佐田啓二を見つめる時だけは可愛い。乙羽信子は
「黒塗り」で、これでもかと醜く撮られてます。爆)

監督
木下恵介

脚本
木下恵介
撮影
楠田浩之
音楽
木下忠司
美術
梅田千代夫

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