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「晩菊」杉村望月細川沢村 in成瀬MOVIE

2005年08月02日 | ★人生色々な映画
ものすごい顔ぶれ。
いずれ劣らぬ役者揃いとは
この映画のためにあるような言葉。

枯れるまでいかず、まだほのかな香りが残る
晩菊な女たち。

いずれも昔はならした芸者だった。

きん(杉村春子)は子供も持たず、
独身で金だけが頼り。
金貸しをして生計を立てている。
こざっぱりした家に聾唖の女中(この人もまた
一言もしゃべらないけどイイ)と二人暮らし。

かつての仲間たちにも金を貸しているが、
取立てはいたってシビア。

杉村春子はこういうドライな役が憎らしいほどよく似合う。
細かい動作や目線も見逃せない。

たまえ(細川ちか子)は旅館で働いている。
一人息子だけが生きがい。

私はこの人が大好きで、出演作を色々みたいと思っていた矢先だった。
年をとっても艶っぽく、
凄艶とも言える美貌はずっとながめていてもあきない。
加えて堂々たる演技!

そしてたまえと一緒に暮らすとみ(望月優子)は
雑役婦をしながら競輪やパチンコで金を稼ぎ
時々ひとり娘(有馬稲子)にも金をせびりに行くていたらく。

沢村貞子が居酒屋のおかみさん役で
一番おとなしい役どころ。
さらりと嫌味が無いのはさすが。

原作は林芙美子。

脚色がさすらい日乗さんによると
「反男性主義」の田中澄江。
なるほどこの映画の中の男性は、
たくましい女たちと比べ、徹底的にみすぼらしくしょぼくれている。

かつて心中しそこなった相手が尋ねてきても
門前払いをくわせるきんだったが
一番好きだった色男(上原謙)が尋ねてくると
娘のようにはしゃぎ、もてなす。

このシーンが面白い。

最初は浮かれていたのに、「この人いったい何しにきたのかしら」
と次第に疑い出して
酔っ払った上原が金を貸してくれと言うやいなや、
「まったく!うかうか酔っ払っていられないわ」と、
男が厠に立った隙に
大事にしまっていた若かりし頃の上原の写真を
火鉢でめらめら燃やしてしまうのだった!!(ガクゼン!)

この辛らつさ。可笑しさ。

また望月優子と細川ちか子の
飲みながらの「母親ぐち」も聞きもの。

望月優子の台詞まわしとだらだらした姿に圧倒された。
愛嬌と可愛さとだらしなさと哀しさと
可笑しさがごちゃごちゃに入り混じって、
このひとやっぱりすごいわあ。

細川ちか子もさすがの受けと、
誰にも一歩もひかない芝居で大女優の貫禄を感じさせる。
超美人ですしね。

海千山千、酸いも甘いも噛み分けたように見えても
少女のような弱さや可愛らしさや
脆さも併せ持つ熟年の女たち。

ラストもまた忘れられない開放感。

こんな物語を撮る成瀬監督もまた、
前世は女だったとしか思えないなあ。面白かった。

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成瀬巳喜男監督作品 原作 林芙美子 脚色 田中澄江 井手俊郎 美術 中古智