いのちのつながりを歌った詩:糸まきをする母と娘

2007年09月09日 | 生きる意味

 だいぶ前から兄に勧められていて、なんとなく読む機会のなかった大木実さん(1912~ )の詩集(『大木実詩集』思潮社)を図書館で見かけて、なんとなく借りてきて読み始めました。

 生活詩人とでもいうのでしょうか、しみじみとしたいい詩がたくさんありました。

 なかでも、昨日お話しした「いのちの自己実現」にも関わる次のような詩に感動しました。


   糸まきをする母と娘

  燈火のしたで 母と娘が
  糸まきをしている
  糸まきをする母と娘の
  影が障子に映っている

  母の両手にかけた糸たば
  糸たばは
  ほそい一本の糸となって
  娘の手のなかに巻かれてゆく
  くるくるくるくる 巻かれてゆく

  母と娘を結ぶ
  一本の糸
  母から娘へ続いてきた
  遠い昔からの一本の糸
  糸まきをする母と娘の
  影が障子に揺れている


 現代人の多くは、自分にこだわりすぎて、そもそも自分のいのちが「母から娘へ続いてきた/遠い昔からの一本の糸」のような、つながりによって生み出されたものであることをほとんど忘れているようです。

 そして、自己実現を目指しながら、実は自己喪失をしてしまっているのではないか、と私には思われてならないのです。

 ところで、私たちはつながりコスモロジーを学んでいるので、理論的に言えばいのちを結ぶ糸は一本ではなく無数なんだけどな、とつい思ってしまいます……理に走った、詩にはあまりふさわしくないコメントですね。

 ここでは実感-表現としてはやはり「一本の糸」なんでしょうね。

 他にもいい詩があります。




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