天の川銀河系の誕生と超新星

2005年10月20日 | 心の教育
 宇宙カレンダーでいえば4カ月、1年の最初の3分の1、つまり50億年が、無数の銀河の形成に費やされます。

 カレンダーの4月9日つまり100億年前頃(これは説によって誤差が相当大きいようですが)に、私たちが現にいる「天の川」銀河系も生まれたようです。

 つまり「私たちの天の川銀河は宇宙によって生まれた」わけです。

 さて銀河を形成している無数の星――例えば天の川銀河系には太陽以上の大きさの恒星が2000億個くらいあるといわれています――には、誕生があるだけではなく、死もあるといわれています。

 質量によって、終わり方もいくつかのタイプがあるのですが、特に太陽の10倍以上ある星は、寿命が1000万年以下で、まず水素を燃やした後にできるヘリウムが核にたまってくるとやがて、その核の部分は温度も圧力も太陽よりもはるかに高くなります。

 そして核融合によって、炭素や酸素よりも陽子の多いネオン、マグネシウム、ケイ素、イオウなどを作り、さらにケイ素の原子核から鉄の原子核を作っていきます。

 そして鉄まで来ると、鉄の原子核はとても安定しているので、新しい元素の形成はいったん止まります。

 ところが、重力で星の内部は収縮し、さらに温度が高くなり、あまりの高熱にこんどは鉄の原子核が分解し始めます。

 すると、星の核の圧力と重力のバランスが崩れて一気につぶれ、その反動で爆発します。

 この爆発によって、非常に強く輝くので、新しい星が突然生まれたのかと思われて、超新星(スーパーノーヴァ)」と呼ばれていました。

 しかし研究が進むと、星が新しく生まれたわけではなく、実はそれはいわば「星の死」だということがわかりました。

 何か永遠なものの象徴のように思われる星も、誕生しやがて死を迎えるのですね。

 そのことだけを考えると、何か淋しいような、空しいような、あるいはひどく恐ろしいような気がします。

 しかし、星はムダに死ぬわけではなく、その大爆発の際の強烈な熱と圧力によって、鉄よりも重い元素が作られ、それらは宇宙空間に広く広く撒き散らされます。

 宇宙空間に広がった物質は、星間ガスと呼ばれ、またそれが集まってより複雑な原子からなる新しい星が誕生するのです。

 つまり、超新星は、いったん死ぬことによって新しいもの・新しい星を生み出していくわけです。

 すでに学んできたとおり、私たちの体はさまざまな元素でできています。

 その元素の多くは、そういうふうにして星の誕生と死の繰り返しの中から生まれたと推測されています。

 私の体・いのちが、今・ここにまちがいなく存在することから逆に遡って考えていくと、水素ガスの星の誕生、銀河の誕生、その中での星の誕生と死は、それに続く太陽系、地球、生命、人類、私の先祖、そしてこの私の誕生の準備だったことになります。 

 そうした元素の誕生の歴史と、それが明らかにされてきた近代の科学の歴史を語った、きわめて興味深い、マーカス・チャウン『僕らは星のかけら――原子をつくった魔法の炉を探して』(無名舎)という本があります。

詳しいことはその本にゆずるとして、一文だけ引用しておきましょう(同書2頁)。

 「私たちの血液に含まれている鉄、骨に含まれているカルシウム、息を吸うたびに肺を満たす酸素は、すべて、星の内部奥深くの灼熱のオーブンで焼かれ、その星が年老いて、消滅すると同時に、宇宙に解き放たれたものだ。私たちは、誰もが大昔に死に絶えた星の忘れ形見なのである。私たちの誰もが、文字通り天でつくられたのである。」

 それにしても、「私たちの誰もが、文字通り天でつくられたのである」とは、なんとロマンティックな言葉でしょう。

 しかし、これもまた詩人ではなく科学者の言葉です。

 よく調べれば調べるほど、宇宙そのものがとても壮大な物語=ロマンに満ちている、つまりロマンティックな存在だったことが、科学によって明らかにされてきた、ということでしょう。

人気blogランキングへ

にほんブログ村 教育ブログへ

*写真は、銀河NGC2403付近の超新星。Credit:NASA
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする