前に触れたように、崋山が「小山ノはな」として描いたスケッチは、伊良湖岬の西端、現在の「道の駅 伊良湖クリスタルポルト」の南側にその姿を見せる「古山」が海岸に落ち込むところと、その荒磯のやや沖合を、おそらく神島に向けて航行する小さな帆船を、鳥瞰図として描いたものであり、向こうに見える海はもう伊勢湾ではなく太平洋(遠州灘)になります。「古山」についての崋山の記述で注目されるのは、神島に渡る時は、この山の上で火を焚くということであり、山頂で火を焚けば船で迎えに来るのだということ。その山頂には火を焚くところが三ヶ所あって、一つは「公事」のためのもの、一つは「急ぐ事」のためのもの、一つは「私の事」のためのもの、と崋山は記しています。神島に渡る場合は、山頂で火を焚けば、神島から船を出して迎えに来るというのです。崋山の場合は伊良湖村の船を雇ったので、神島からの迎えの船を利用したのではなく、もちろん山頂で火を焚くということもありませんでした。これらの情報を崋山は誰から聞いたのだろう。明神下の彦次郎だろうか。それとも雇った船の船乗りからだろうか。いずれにしても、まわりに気軽に声を掛け、興味をもって貪欲に情報を集めている崋山の姿をうかがうことができます。 . . . 本文を読む