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小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

それでも生きていく『トリップ』by角田光代

2021年03月10日 | 小説レビュー

『トリップ 』by角田光代

~普通の人々が平凡に暮らす東京近郊の街。駆け落ちしそびれた高校生、クスリにはまる日常を送る主婦、パッとしない肉屋に嫁いだ主婦―。
何となくそこに暮らし続ける何者でもないそれらの人々がみな、日常とはズレた奥底、秘密を抱えている。小さな不幸と小さな幸福を抱きしめながら生きる人々を、透明感のある文体で描く珠玉の連作小説。直木賞作家の真骨頂。「BOOK」データベースより


「人生上手くいかへんよあぁ~」と、つくづく思う時があると思います。この作品の登場人物は、小さな町に暮らす、どこにでもいそうな人たちの日常の物語です。
連作短編集で、それぞれの主人公が見かけた風景や人物が次の物語に繋がっていき、なかなか面白いです。
みんなそれぞれに、大なり小なり不安と不満を抱えていて、それでも日常は過ぎていくわけで、その中でもがいたりあがいたりしながら生きています。
それでも不満や不安は解消されることなく、心と身体を侵食していきますから、どうしても現実逃避(トリップ)してしまうのでしょう。

登場人物の全てが中々個性的で面白いです。共感や気持ちを共有することはあまりありませんでしたが、誰しも多かれ少なかれ、「あぁ、わかる。」とか「こんな人いるよね。」という風に感じるかもしれません。
そしてそれぞれの物語の主人公たちは、色々と妄想したり逡巡したり、現実逃避したりしながらも、最後には「それでも生きていく!」と、小さな決意を胸に明日へ向かっていきます。
清々しくはありませんが、一瞬だけ爽やかな風が吹き抜けるような、それぞれのエンディングです。

それぞれの物語の続きは、結局、同じような日常の繰り返しなんでしょうけど、世界中でも日本中でも、多くの方がこのような感じで毎日を過ごしていると思います。
その中で、どれだけ意味と意義のある時間を過ごせるか?過ごせたのか?というところに人生の充実度が表れてくると思います。
「暗いと不平を言うよりも、進んで灯りをつけましょう」の精神で、日々暮らしていきたいと思います。

★★★3つです。

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