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まさに名作への入口作品です。『尾崎紅葉の「金色夜叉」 ビギナーズ・クラシックス』by山田有策 

2020年12月29日 | 小説レビュー

『尾崎紅葉の「金色夜叉」 ビギナーズ・クラシックス』by山田 有策 


~許嫁・宮に裏切られた貫一は、金本位の世の中へ復讐を誓い、冷徹な高利貸“金色夜叉”となる。「今月今夜のこの月を…」の名文句で有名な熱海の別れや、貫一をめぐる女たちの壮絶な修羅場など、尾崎紅葉晩年の渾身作から名場面を凝縮。貫一・宮の恋の顛末、個性的な登場人物たち、偽続編の存在など、近代文学研究の第一人者による詳細な解説とコラムで名作の新たな魅力に迫る。平易な現代語訳で、難解な原作を手軽に1冊で味わえる。「BOOK」データベースより

 

以前、「やっぱり名作と呼ばれる作品は読んでおかなアカンやろ」と、尾崎紅葉の『金色夜叉』を借りてきました・・・が、とても難解な旧仮名遣いや、漢詩のような文章に「こらアカンわ」と、すぐに断念しました。

すると、表題のような「角川文庫 ビギナーズ・クラシックス 近代文学編」と題して、難解な文章を現代語版に翻訳し、解説や時代背景などを加えるなどして、我々のような者にも、「近代の名作にふれておくれ」という有難い計らいがあり、早速図書館で借りてきました。

熱海で貫一が宮を足蹴にする場面の名ゼリフ、

「吁、宮さん恁して二人が一處に居るのも今夜限だ。お前が僕の介抱をしてくれるのも今夜限、僕がお前に物を言ふのも今夜限りだよ。一月の一七日、宮さん、善覺えてお置き。來年の今月今夜は、貫一は何處で此月を見るのだか!再來年の今月今夜……十年後の今月今夜……一生を通して僕は今月今夜を忘れん、忘れるものか、死んでも僕は忘れんよ!可いか、宮さん、一月の一七日だ。來年の今月今夜になったならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから、月が……月が……月が……曇ったらば、宮さん、貫一は何處かでお前を恨んで、今夜のやうに泣いて居ると思ってくれ。」

こういう読みにくい文章も大変分かりやすく解読してあり、金色夜叉という意味もバッチリよくわかり、ストーリーもよくわかりました。

作者の山田有策氏は言います「これで大体のあらすじがわかったら、原書版を是非とも読んでほしい。これまで難解だった言葉がスッと入ってくるはずだし、何より尾崎紅葉の素晴らしい表現や描写、セリフをそのまま味わってほしい」と。

まさにその通りだと思いますね。機会があれば原書版を読んでみたいと思います。

解説にある通り、尾崎紅葉が『金色夜叉』を連載していた頃、彼の身体は病に侵され、幾たびも断筆をせざるを得なくなり、最期には完結を見ることなく途中で絶筆となってしまった訳ですが、「それでは師匠が浮かばれん!」と、紅葉門下の小栗風葉をはじめ、その他多くの方々によって様々な続編、完結編が綴られ、現代に語り継がれているまさに名作です。

とっつきにくい原書版の金色夜叉に入る前に、まさに助走をつけるという意味で手に取って欲しい作品です。

★★★3つです。

コメント
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