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水滴 石を穿つ『ヒマラヤに学校をつくる』by吉岡大祐

2019年11月14日 | 小説レビュー
『ヒマラヤに学校をつくる カネなしコネなしの僕と、見捨てられた子どもたちの挑戦』by吉岡大祐

~子どもたちに教育を!人身売買、児童労働、カースト差別…
貧困のネパールで、ゼロから学校づくりに挑んだ著者の涙と感動の20年の軌跡。「BOOK」データベースより

図書館の司書さんオススメの第2段です。
こういう外国でのドキュメンタリーものは、かなりの感動をおぼえるはずで、期待しながら読みました。
実際に読んでみると、とても良い話で、思いがけない人との出会いや一言から、人生の方向が大きく変わっていくドキュメンタリーでした。

しかし、ネパールと言われても、ハッキリ言ってイメージが沸きませんよね?沸きます?
位置を調べてみると、インドと中国という両大国に挟まれた、北海道二つ分ほどの国土に人口2600万人の小さな国なんですって。

ネパールでは、法的にはカースト制度は廃止されおり、表向きの階級差別はなくなったように言われていますが、いまだに古いカースト意識が残っていて、特に農村部に行けば行くほど根強く残っているそうです。また、女性に対する強烈な差別、極度の貧困など、想像を絶する世界が広がっていました。

著者の吉岡大祐氏は、小さい頃にアメリカ旅行に行った際に出会ったアメリカ人のオジサンの優しさに触れ、「アメリカ人になりたい!」と、夢を抱き?大学卒業後、鍼灸師の資格を取り、アメリカに渡るべく準備をしていたところ、父の友人であるネパール人のダルマさんから「ネパールに来ればいいじゃないか」という一言で、ネパール行きを決断します。

60万円の手持ち資金だけ(ネパールの1ヶ月の給料がだいたい2万円程度です)で、ネパールに渡った吉岡氏は、貧しい人たちを相手に無料で鍼治療をおこなったり、貧しい地域へ出掛けていって出張治療を施したりしていきます。
その様な活動の中で、医療キャンプに参加したとき、子どもたちが感染症で亡くなる現状を目の当たりにして衝撃を受けます。

究極の貧困の中で懸命に生きている子どもたち、そしてロクに読み書きのできない親のもとで、教育を受けずに育つ子どもたちの未来に不安を感じた吉岡氏は、「何とかネパールの子どもたちに教育を受けさせてあげることは出来ないか?」、「教育を受けることによって拓ける未来があるはずだ」、「自分の使命はこれなのでは?」と、神の啓示のようなものを受けます。

お金もなければ、ネパールの政界や官界、経済界などの上層部にコネがある訳でも何でもない一人の日本人青年が、一念発起して物事をスタートさせていくのですが、色々な困難を乗り越えて、三浦雄一郎さんをはじめとする多くの日本人支援者の力添えもあって、『クラーク記念ヒマラヤ小学校』を開校するところまで、やり遂げてしまうところが、本当に素晴らしいことですよね。
 
ネパールの現地の人々との温かい交わりや、日本での募金活動、クラーク高校の生徒さんたち、そして世界中の人々からの力強い支援の数々など、「一人ひとりの力は小さいけれど、コツコツと積み上げることによって、大きな力を生み出し、その力を合わせれば、さらに大きな物事を成し遂げられるんや」ということに気付かされると同時に、「自分にも何か出来ることはないかな?」と、考えさせられるドキュメンタリーでした。

★★★3つです。