べッティーが駅の仕事に参加するようになり、私はすぐにプレムダン{マザー・テレサの施設}にべッティーを連れて行き、男性病棟の責任者のシスターと女性病棟の責任者のシスターに紹介していた。
それとシアルダーから運んだ患者たちやデナーダスにもべッティーを会わせていた。
その時、デナーダスは私の顔を見ては涙を流した、「誰も見舞いに来てくれない。友達に会いたい」と寂しがっていた。
すでに彼女の娘は一度面会に来ているとシスターから聞いていたが、私は彼女が会いたいと言う友達の名前を聞きメモした。
彼女が会いたがっていた一人がウドルだった。
そう言えば、ウドルが一番、私に「どうかあの人{デナーダス}を助けてください」と言い続けた女性だった。
私は最後の駅の仕事を無事に終え、べッティーを連れて、ウドルと待ち合わせた場所に向かった。
私が居なくなった後、べッティーに時間がある時はウドルをプレムダンに連れて行ってほしいと考えていた。
ウドルは4歳ぐらいの小さな可愛い女の子と待ち合わせた場所でちゃんと待っていた。
私はその小さな子を見て、なぜウドルが私との約束を破らざるを得なかったかをしっかりと理解した。
路上で煮炊きをするような貧しい生活をし、小さな子までいるウドルにはデナーダスを心配し見舞いに行きたい気持ちはあったとしても、やはりなかなか行けなかったのだろうと。
ウドルの子はとても恥ずかしがり屋で私たちと目が合うとすぐに目を逸らし、ウドルの後ろに隠れた、それがとても愛らしく思えて、私とべッティーは何度か顔を合わせ微笑んだ。
たぶんインド人以外の人と一緒にいることがその子には生まれて初めてのことであったのだろう。
ウドルはすまなそうに笑っていた。
シアルダーの次の駅パークサーカスにプレムダンは隣接して立っている。
駅のプラットホームから施設の入り口は反対側にあり、少し歩かなくてはならなかった。
私とべッティーはプラットホームを普通に歩いていたのだが、ウドルの子は小さい子ゆえ歩くのが遅く、私たちが振り返り、ウドルを見ると、早く歩きなさいと子をせかし、終いには手を繋ぎ、速足で歩き始めた。
私は「急がなくても大丈夫だ」とウドルに言うと、またウドルはすまなそうに笑った。
{つづく}