一昨日、12時近くカラオケ屋でうたの練習をしてから帰る途中、横断歩道を渡ると傘を差したままうずくまっている人がいた。
傘しか見えない状態だった。しゃがんでその人を覗き込むようにして声をかけると70代ぐらいおじぃちゃんだった。
「大丈夫ですか?どうかされました?」
おじぃちゃんは顔をゆっくりと上げ、自分を誰だか知り合いかと思ったのか、それとも、誰が声をかけているのかを確かめるためにほんの少し時間が必要のようだった。その時間が必要だったのは酔っていたからだった。
「どうしました?大丈夫ですか?飲みすぎたの?おじぃちゃん、こんなところにいたら危ないよ。もし、寝てしまったりしたら、車に引かれてしまうよ。もっと道の外側に来ないと。どう歩ける?」
「いや~飲みすぎた。五時から飲んでた。飲みすぎて腰が抜けた・・」
「どこに住んでるの?家は近い?」
「六丁目に住んでいる。。富士スーパーの・・」酔い過ぎてうまく言葉が出てこない状態だった。
「大丈夫なの?飲みすぎちゃったんだ{笑}」
「そう、飲みすぎた{笑}」
「帰れる?送っていこうか?」
「大丈夫。ありがとう。こんなに優しくされて自分は幸せだぁ」片手を地面に付けて礼を言っていた。
「そう、んじゃ、道の脇で、こっちでちゃんと座って少し酔いを醒ましてから帰って」
「うん、ありがと」
「それじゃね」
その場を離れた。五メール歩いては後ろを振り向いた。
どうしようか、これで良かったのか?あのまま寝込んだりしていないか?ちゃんと手を引いて家まで送ってあげれば良かったのか、どうなんだろう。
また五メートル歩いて後ろを振り向いた。
あそこまで歩けたら、また歩けるだろう。
また暫くして、後ろを振り向いて立ち止まった。
もう一度見に行こうか、どうしようか、心の納まりが良くなかった。
何人かの通行人がいた。
自分だけが彼を助けるのではない。きっとまた誰かが自分と同じようにおじぃちゃんに声をかけるだろうと思った。
自分がすべてするのではない。見えない他者に信じることも必要だろう。
自分がすべてしなくては気がすまないという思いは誰かを信じていない思いと合わせて、そこにあった。
気がすまないという思いは自分のなかでの思い、相手への思いではない。
そして、いつも決断の遅い自分がいた。いつも迷っている自分がいた。そうした自分がいたことを確認した。居るんだっていうことをあたたかく認めてあげた。
また雨のなかを歩いた。傘が雨に濡れることから守っていてくれた。
雨は静かに降っていた。優しく降っていた。
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