先週の土曜日の白髭橋の炊き出しでHIV患者のIさんに会った。
その一週間前の今年初めての炊き出しの時にも彼は彼の友人のNさんと一緒だった、その時には挨拶だけでゆっくりと話すことは出来なかった。
「Iさん、どうですか?身体の調子は?」私はやけに浅黒くなったIさんの顔色が気にかかり、彼の前に立った。
「いや、良くないです・・・」
「どうしたんですか?薬はちゃんと飲んでいますか?」
彼は少し顔をしかめ苦しそうに答えた。
「薬を20日間飲むのをやめちゃったんですよ・・・」
「どうしてですか?」
「ドヤでケンカして、そのまま出てしまったんですよ。クリスマスの時に・・・。隣に住む住人に、黙っていたらいつもうるさくしやがってって思って。ついに言っちゃんです。それでそのままドヤには帰っていません・・・」
「んじゃ、看護婦さんにも会っていないの?」
「はい、でも、この前体調が悪くなって、急遽病院に行って一週間分だけ薬をもらってんですよ」
「そうだったんですか・・・。もう、Iさん、この時期のアオカン{路上で夜を過ごすこと}じゃ、辛いですよ・・・」
「うん、だから、雨の時は友達のところに泊めてもらったりしました。だけど、死んじゃいますよ・・・」
「うん、ほんと、死んじゃいますよ・・・」
HIV患者は例え一日でも薬の服薬を中断するだけで、どれだけ危険であるかは彼は知らない訳はないが、どうにもならなく自暴自棄にもなったのであろう、もう死んでも良いとさえ思ったかもしれない、その痛みと苦しみは頬を差す冷たい風のように否応なしに鋭く痛く感じられた。
私は彼の肩を強く握るようにして言った。
「お願いですから、Iさん。しっかりね」
「はい、ありがとうございます」と彼は苦笑いを見せた。
彼は今週役所と病院に行くらしい、そこでまた今後の立ち直りのために、この冬を乗り切るためにどうにかしてほしいと私は切に彼に願った。
{つづく}
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