カルカッタより愛を込めて・・・。

次のアピア40のライブは6月でしたがお休みします。

夏の再会。

2014-07-21 13:15:19 | Weblog

 「お疲れ~、サワキ」

 「あっ、お疲れ様です。テツさん、すいません。先にやってます」

 上尾に向かう新宿駅のプラットホームのベンチに座りながら、サワキはすでに缶チューハイを口にしていた。私もすぐにキヨスクで500のスーパードライを買った。

 サワキとは毎年アサダの墓参りに新宿のこのキヨスクの前で待ち合わせをし、一杯やりながら上尾に向かうことにしている。もう何年もそうしているのだが、いつからそうしたのかは覚えていない、たぶん、最初からそうしたのだろう、アサダの墓参りに行く寂しさから「まぁ、飲むか」みたいな感じで缶チューハイかビールを買い、墓参りに行く勢いを付けていくのだった。そして、この日は十三回忌のアサダの墓参りであった。

 私は毎年このアサダの墓参りの幹事をしている。幹事など面倒なことは私の柄でもないのだが、やはり弟のように可愛がっていたアサダのこととなると違う、私は生涯この幹事を続けることを決めている。そして、墓参りなどと言う畏まった言い方は、私たちには似合わない、照れ臭いので「毎年恒例のアサダの飲み会」としている。

 「まぁ、乾杯。最近どうよ?」

 「いや~、テツさん、金曜にやっちゃいましたよ。現場で6メートルの高さから落ちて足首を捻挫しました」

 「おぉ、そうか。でも、まぁ、骨折していないんだろう。それだけで済んで良かったな」

 「そうですよ。良かったです」

 「で、どう、その他は元気でやっているの?子供のひぃーちゃん{サワキの娘}は元気か?」

 「ヒビですか?元気ですよ。もう参りますよ。やんちゃで・・・」

 サワキはそう言ってデジカメをバックから出して、私にひぃーちゃんの写真を見せ始めた。

 電車は遅れていた。サワキはもう一つ缶チューハイを買い、私たちは遅れてプラットホームに入ってきた電車に乗った。

 「今日は誰が来ます?」

 私はコウキチ、タマ、ユウ、キョウイチ夫婦、タロウ・・・など来るメンバーを伝えた。それと誰が返信がないのかも教えた。

 私たちが卒業した文化学院の学生と言うものは呑気な輩が多く、しっかりとした社会生活を営めるものはいないと言っても過言ではない連中の集まりであり、その代り個性が極めて強いのである。そんな半人前の輩だが、しかし、それでも時とともにどうにかみんなそれなりの大人になってきた。

 私は毎年メールを送るがまったく返信のないものも一人や二人ではない、半数近かったりもする。それでも、返信がないからと言って、次の年にメールしないと言うことは絶対にしない。そこには愛がないし、アサダが寂しがるし、アサダが望むことではないことを私は知っている。そして、二三年返信がなかったものがちゃんと返信をしてくれたり、またずっと音信不通だったものが急に連絡をしてくれたりすると私はアサダと一緒にそれを喜ぶのであった。

 サワキと私は返信のない友達を心配し、また妊娠中で来れない友達の喜びを分かち合い、それぞれの酒を口に運んだ。

 その私たちの間にはアサダもきっと居たのかもしれない。

 {つづく}

 
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