新総合読本
死んだらどうなるか 2
板倉聖宣 著
◆ 人間の身体は原子でできている
人間の身体だって、他の生物の身体や原子・分子と同じなのです。しかし、原子がでたらめに結びついただけでは、生命活動は続けることはできません。おもちゃの機械やロボットだって、ちゃんと動けるようになるには、たくさんの部品がちゃんと組み合わされていなければならないのと同じことです。
もっとも簡単な生物は「単細胞生物と言って、顕微鏡でやっと見えるくらいの大きさしかありません。ところがそんな小さくて簡単な単細胞生物でも、うんと複雑なロボットよりもるかにうまくできていています。そこで、どんなに複雑で高級な仕事をするロボットを作り出すことのできる人間でも、まだ一番簡単な生物させつくりだすことができないのです。
単細胞生物生物の身体は簡単ですが、ふつううの動物の身体はは、頭とか目とか口とか心臓とか胃とか、たくさんの〈器官〉が集まってできています。それらの器官はみな原子の集まった分子からできています。そこで人間の身体全体も原子や分子からできていることになるのです。
人間の身体を作っている器官は、とてもうまくできていますが、いつまでも故障なく働けるものではありません。悪い病気になると、ある一つの器官が弱まって、ついにはまったく働かなくなるときもあります。そうすると、ほかの器官がいくら丈夫でも、身体全体がうまく働かなくなって、死んでしまうことがあります。
医者は、多くの人びとが死なないように研究したり、治療したりしていますが、今のところ、たいていの人は百歳くらいで死んでしまいます。いくら病気にならなくても、長い間のうちには「老衰」と言って、たくさんの器官の働きが弱くなってきて、身体全体が動かなくなってしまうからです。
その人の身体が働かなくなってしまったら、その人一生は終わりです。身体の働きが止まったら、その人の心の働きも止まります。心と身体は一つのもので、身体が死んでも心だけが生き残ると言うことはありません。霊魂などというものはないからです。
〈続く〉