今は、一段落したが、東北の瓦礫のこういく処理を巡っては、その反対者を非国民のように非難する雰囲気が、日本中を覆っていた。それはなぜ生まれたのか、小文にまとめてみましたので、お読みください。
「東北の瓦礫の広域処理」の賛成者と反対者
東北の瓦礫の広域処理に反対することは非国民・身勝手な人なのか
「東北の瓦礫処理を広域で、沖縄や九州にまで運んで処理しよう」という政府の方針がでたとき、私は自分の耳を疑った。こんな合理性も正当性も妥当性もない政策を、なぜ政府(頭のいいはずの官僚)がうちだすのか。そして、こんなバカな政策は、普通の頭で考えれば、すぐに全国で拒否されると、高を括くっていた。ところが、私が、この政策に反対を表明すると、半分くらいの方は同調してくれたのだが、半分の方からは「人でなし」のような目で批判されました。
私は、この方針が生まれた時から、なぜ、こんなバカな方針がうまれたのか、不思議でなりませんでした。また、多くの国民が、「絆」論を口にしながら、この政策に批判的な人に対して、「人でなし」のように言うのも、何か、戦争中の非国民扱いと同様な雰囲気に包まれたのが、怖いように感じていました。特に、産廃反対運動で10年以上も一緒にがんばってきた人の中にも、その雰囲気が生まれたことには、あらためてマスコミの影響力を感じたものです。
そこで、もっと深くこの問題を考えなくてはいけないと考え、過日、ゴミ弁連(たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士連絡会)主催の講演(環境総合研究所・池田こみちさんの資料)を聞いてきました。その中で、私の考え方が間違っていなかったことに確信がもてましたので、まとめてみました。
●東北のゴミを九州まで持っていくことの非合理性
だれが考えたって、ゴミを1400㎞もはこぶ非合理性には気づくと思ったのだが、そうではない人もいる。岩手県女川から北九州市まで1400キロ。1トン当たりの輸送コストは17・5万円(河北新報)。エネルギーとお金のムダ以外の何物でもない。
勿論、トラック業界は「絆」をもとに協力を申し出ている。
●広域処理が必要なほどがれきの量があるのか。
2011年7月 衛星画像をもとに推計
2012年5月 広域処理希望量が大幅に減少(①海洋に流失した量が多かった
②仙台市の焼却炉に余裕あり、③宮城県内への受け入れ要請、
④木質系瓦礫はリサイクルが可能)
現在では、広域処理が必要ではないことがあきらかになった。
注)宮城県知事の「海洋に流失した量が予想以上に多かった」という発言も、今になって何をいっているのかという感じをもつのは私だけでしょうか。
●大量の瓦礫が復興を妨げているのか
「阪神淡路大震災」と「東北の震災」では瓦礫の量はほぼ同じ。
▲ 阪神淡路大震災は、瓦礫が復興の妨げになったので、広域処理により、3年で処理が終わった。都市部の中心部だけで被害地域が狭い。津波被害はない。
▲東日本大震災 農村部が広いので、仮置き場は確保できる。津波被害地域は家を建てられないので、仮置き場としていくらでも使える。人家に近いところにある瓦礫は、別の場所に移動すればすむこと。衛生管理もしかり。瓦礫が、津波で海水等に浸かったため、油などで複合汚染している。焼却処理も単純ではない。
●宮城・岩手の瓦礫は安全か
福島の瓦礫よりは汚染度は低い。しかし、関東地域の放射線汚染をみてもわかるはずだが、汚染度合いは、場所によって極端に違いがある。(茨城では県南がたかい。栃木では那須方面が高い)。部分検査(サンプル検査)をもって、全体が安全とはいえない。もし、本当に安全であれば、地元で、時間をかけて処理した方が、雇用も増えて地元も潤う。東北で一番してほしいことは、「瓦礫処理ではなく」、仕事の確保です。
●地方自治に関わって
今回の瓦礫受け入れで目立つのは、知事(東京、神奈川、秋田等)が基礎自治体(焼却場を持っているのは市町村)に相談もせず、早々と受け入れを発言していることです。受け入れる、受け入れないは、あくまで、自治体の判断が先にあるはずです。
教訓はなにか
マスメディアの情報を「無条件」に信じてはいけない
今回の一番大きな教訓はなにか。私たちが、新聞やテレビからたくさんの情報をもらっている以上、それらに影響されるのはやむを得ないことです。しかし、ちょっと立ち止まって、自分の頭で考えれば、少なくと、「瓦礫受け入れに反対する人々を非国民・身勝手」呼ばわりすることはないと考えるのですが、みなさんの考えはいかがでしょか
注)一番の過ちは、政府が、東北の瓦礫処理を、(阪神淡路とおなじ)3年間で処理してしまうという方針を決めたことと言われています。なぜ、そう決めたのかはわかりません。
いろいろな憶測はできますが・・・・・・・・・。