鎌倉 佐助の風街便り

陶芸、街歩き、クルマ、オーディオ・・。思いのまま徒然に

100年の時と葉山の奥行きの深さを感じつつ、新春の一日に想う「永遠の戦後」

2024-01-09 09:14:03 | 日記
年明け早々、北陸地方での地震と羽田空港での飛行機事故が相次いで発生し、新春のお祝い気分に浸れぬままにお正月の日々は過ぎ、ふと気がつくと松が明けてました。松の内にも陶芸教室や友人知人が立ち寄ってくれて、それぞれのお正月を楽しく語り合う時間を過ごしましたが、その話の合間合間にはやはり地震と羽田の事故が話題に…。

蛇足ながら「大きな地震の後で駅伝はいいのかなぁ…」と少々戸惑いながらお客様とともに観戦していた100回目の箱根駅伝は大本命の母校が予想どおり? 2位に終わりました。されど不思議なことに悔しい気持ちが少しも沸いてきません。これもかの大きな地震と被災された方々のつらい日々が心と頭の多くの部分を占めているからなのでしょうか。ことほど左様に今年は年初から不安な気持ちに包まれてしまいましたが、これから先、少しでも希望が持てる日々が来るように念じて止みません。

そして一昨日、松が明けて例年どおりまずは松飾りを外し、玄関ドアの上にお祀りしている鶴岡八幡宮の「おはらひさん」を冬仕様に交換。

昨年7月から年明けまでの半年間にわたり玄関先で災難から守ってくれた水色の御幣の夏仕様から赤い御幣の冬仕様に替り、6月末までわが家を守ってくれることとなります。

さらに昨日の8日は近郊の葉山町にある森戸神社に向かい、松飾りをお焚き上げしてもらうために奉納へ。

おりしもこの日は成人式の祝日ということで、境内には成人式前に二十歳のお祝いとお礼の意味を込めて参詣に向かう新成人さん親子の姿が多数見られ、例年の松飾り奉納とは少々異なるとても華やいだ雰囲気に包まれていました。そして神社の西に広がる相模湾の向こうには、富士山がくっきりと。

いつもこの森戸神社に来るときは見事なまでの晴天で、富士山との相性もとても良い記憶があります。

森戸神社を後にして、続いて訪ねた先は神社から葉山御用邸方面に向かってクルマで5分ほどの地に位置する神奈川県立近代美術館 葉山。昨年秋から今月28日まで開催されている「移動するモダニズム 100年前の未来 1920 ~1930」を鑑賞してきました。ちなみにこの1920年は、箱根駅伝がはじめて開催された年でもあります…。


美術館の向かい側の北側の山あいには瀟洒な住宅が並び建っています。


ひるがえって南側に目を移すと、相模湾の向こうに遠く伊豆半島が望めます。

葉山という地は、気候の面や首都・東京との適度の距離感を保つまことに恵まれた土地であることが感じられます。このような地で生まれ育った人たちが本当に羨ましいかぎりです…。

その葉山の地で開催されている展覧会は今から約100年前にわが国の画家が遺した作品をメインに朝鮮や中国、ヨーロッパの画家の作品も併せて展観する企画展です。

日本において100年前の1920年代といえば、昭和の前の大正時代後期から昭和初期、第一次世界大戦直後でアメリカ合衆国は経済的に大繁栄を遂げ、その一方においてヨーロッパではファシズムが台頭し始めてきた頃でした。この後の約20年間、アメリカとヨーロッパ列強が覇権を競い合い、そしてアジアの東の果ての日本も時代の波に翻弄されて戦争の渦に巻き込まれ、その末に1945(昭和20)年に太平洋戦争で敗戦を迎えたなんとも悲しい時代となりました。

そのような時代背景の中、この1920年代に残された作品を展観する同展の中でワタシが「ぜひまた観たい」と願っていたのはこの作品 古賀春江「窓外の化粧」1930年。

古賀春江という名前と作品名から女流画家を連想しそうですが、福岡県生まれの男性画家です。ワタシがこの作品をはじめて目にしたのは今から8年前に市内の神奈川県立近代美術館 鎌倉 にて最後の展観として開催された「鎌倉からはじまった。神奈川県立近代美術館 鎌倉 の65年」という企画展の時でした。もとより具象絵画よりも現代美術を好んでいたこともあり、この作品の奇抜な構図とともに昭和初期の製作ということにたいして言葉を失うくらいの衝撃、ならびに感動したことを昨日のことのように記憶しています。この作品は古賀氏が東京に住んでいた当時から親交があった文豪・川端康成氏の手元に置かれ、川端氏が晩年を鎌倉で過ごしたことから鎌倉市に寄贈されたようです。

ウチの陶芸教室会員さん達にもこの企画展を紹介していましたが、面白いことに数名の若い会員さんがかねてより興味をもっていたようです。さらに興味深いことに皆さんが一様に古賀春江のこの作品に「惹かれていました」と申し合わせたように言っていたことがとても不思議な感があります。さしずめ「同好の士」年代の壁を越えて、と言っては褒め過ぎかな…。

この作品のほかにも同展のフライヤーとなっている和達知男「謎」

のコラージュの技法を馳駆した作品をはじめ、驚いたことにワタシが大好きなカンディンスキーの「コンポジション」

にも出会うことが出来ました。

そのほか、藤田嗣治や国吉康雄…あまたある画家の作品を前にて、しばし、北陸地方の震災に心さいなまれ続けていた状況からしばし解放された感があります。

その一方、今から100年ほど前の戦争に突き進みつつある時代背景もあってか、展観されている作品群には近い将来が戦火にまみえるのではという予感に満ちたような暗いテイストも漂っています。

ひるがえって同展で紹介されている作品が制作されてから約100年後の今、世界は「第三次世界大戦…」がまことしやかに語られる、なんとも陰鬱な雰囲気に満ちた時を迎えている感もあります。

思えば一昨年の年の瀬のテレビ朝日「徹子の部屋」にて出演したタモリさんが番組の中で「新たなる戦前」と発言し、その言葉の意味するところがさまざまな方面で注目されました。
今、私的ながら、ただただ「永遠の戦後」を願うばかりです。

それにつけても、100年という時間軸の長さを心より感じた葉山の一日でした。






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2 コメント

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連面と続く時代 (神沢原たつ)
2024-01-09 13:49:00
カンディスキーノ「コンポジション」は素晴らしいですね‼ 絵もさるところ「コンポジション」と言う名称もです‼
Unknown (マキロウ)
2024-01-09 16:06:44
カンディンスキーやリヒテンシュタインをはじめ、現代アートに心惹かれています。作品、タイトルともにエッジが利いている感じがとてもすてきです。

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