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Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

石田えり初監督作品 『私の見た世界』

2025-07-27 | Weblog
俳優の石田えりさんの初監督作品。

私は石田えりさんとは『阿部定と睦夫』という劇でご一緒している。
『八ッ墓村』のモデルになった「津山三十人殺し」の犯人である都井睦夫が、阿部定の熱狂的ファンだった事実から、もしも阿部定と睦夫が邂逅していたら、という想像力から始まっている。
日本が戦争に向けて大きく舵をとった時代。「個」としての犯罪に身を投じた二人が、その存在で戦争の蒙昧にひた走る国家を批評するという構造の作品だった。
この企画は、阿部定をやれる俳優がいるだろうか、というところで「うーむ」となり、進んでいなかったが、「石田えりがいるではないか!」と気づいた後は、わが劇団員の結婚式に出席してくれたえりさんと知己を得ていたこともあって、ご本人の快諾を受け、とんとん拍子で上演となった。阿部定=石田えりの見立ては、我ながら大当たりだった。みごとだった。以前にも以後にもない阿部定像を造ることができたと思う。『阿部定と睦夫』の作品じたいも、読売演劇大賞で二度目の最優秀演出家賞をいただいた対象となったので、それなりに評価されたと思う。

その石田えりさんが初めて映画を監督した。
 『私の見た世界』は、「松山ホステス殺人事件」の犯人・福田和子の人生を、福田自身の視点から映画化したものである。殺人を犯した彼女は、時効までの15年を、整形手術を繰り返しながら逃げきろうとする。
「福田和子自身の視点から」というのが、気の効いた惹句としてではなく、ほんとうに彼女らしき人物の一人称で捉えられた世界なのだ。演じる石田えりの「目」としてカメラが動くわけである。文字通り「私の見た世界」ということだ。
最後にはご本人も写ってしまうのだが、せっかくなら一人称に徹した方がよかったのではないかとは、思う。

昨日イメージフォーラム等で公開されたので、ご紹介致します。

で、私も、福田和子=石田えりの夫の役で、登場します。
登場といっても、逃走中の彼女のかける公衆電話の向こうで、声だけの出演です。

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ついに「餓死」である

2025-07-27 | Weblog
ついに「餓死」である。

長期にわたってガザ住民が生存するためのライフラインは保たれずにいたが、ついに圧倒的多数の「餓死」の事態が急迫している。

AFPによると、国連世界食糧計画(WFP)は、紛争下のガザが「飢饉の重大なリスク」に直面していると警告していたが、25日、住民の約3分の1が「数日間、何も食べていない」「栄養失調が急増し、9万人の女性と子どもが治療を至急必要としている」「この危機はかつてない、そして驚くべきレベルの絶望に達している」とした。
9月までに47万人が「壊滅的飢餓(飢饉)」に直面するとの見通しを示している。

その直前にBBCも、その時点でガザの栄養不良による死者が、「過去48時間だけで33人」としていた。栄養不良によって死亡した人数。うち12人は子どもだ。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は22日の国連安全保障理事会で「飢餓があらゆる場所で生じている」と警告。210万人の住民が基本物資の深刻な不足に直面しており、イスラエルには国連とそのパートナーによる人道支援を促進する義務がある、と述べた。

そしてAFPによると、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のタミーン・アルキータン報道官は22日、米国とイスラエルの支援を受けてパレスチナ自治区ガザ地区で人道支援物資の配給を行う「ガザ人道財団(GHF)」が活動を開始して以来、イスラエル軍がガザで食料を受けとろうとしたパレスチナ人1000人以上を殺害したと明らかにした。
「7月21日現在、ガザで食料を受け取ろうとして殺害された人の数は1054人に上る。うち766人はGHFの配給拠点付近で、288人は国連などの人道物資を運ぶ車列付近付近で殺害された」と発表。報道官のデータは「医療チーム、人道支援団体、人権団体など、現地の信頼できる情報源からの複数の情報に基づいている」という。

GHFは、イスラエルがガザへの物資供給を2か月以上遮断し、大規模な飢饉の警告が出された後、5月26日に活動を開始。しかしその配給を待つ人々にイスラエル軍が発砲したと毎日のように報じている。

イスラエルの軍事組織・イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、責任逃れか誤魔化しか、ハマスが「人道状況に関する虚偽のキャンペーンを実施している」という。
だが、「イスラエルは国際法に従って行動しており、支援物資をハマスの手に渡らないようにしながらガザ地区内に運び込まれるのを促進している」という主張を、もはや真に受ける者はいない。
食糧価格が高騰しているため、ガザの人々が食料を手に入れるには食糧援助に頼るしかなくなってから、久しい。
イスラエルは「ハマスの手に渡らないように」という「虚偽の大義名分」で、「餓死」を強要している。
国連もそれを認めている。

そして、ほんとうに文字通り、言葉の意味を考えて読み直していただきたい。

「食料を受け取ろうと集まったガザ住民」をイスラエル軍が既に「1000人超殺害」したのだ。
人道支援を待つガザの住民が、イスラエル軍に、「毎日何十人も射殺されている」のである。
このことがいま現在、今日も、進行形で行われている。

イスラエル軍はガザで、「イスラム組織ハマスの壊滅」を錦の御旗に活動してきた。
2023年10月7日にハマスがイスラエルに対して行った越境攻撃が発端とされている、イスラエルのガザに対する大規模な軍事攻撃である。だがネタニヤフ首相は、イスラエル軍・治安当局について調査委員会の設置を拒否しているため、多くの疑惑があるまま、とにかく「ガザへの包囲攻撃」が,以来2年半以上続く。

だがそもそもパレスチナの人々は、1948年イスラエルの建国と第1次中東戦争(ナクバ)によって居住地を追われ、多くが難民という立場を余儀なくされた。国連で帰還権が認められているにもかかわらずイスラエルによって阻まれ、ガザ地区とヨルダン川西岸地区に残った人々は、1967年以降イスラエルの占領下にある。
このような理不尽を国際社会が容認してきたのだ。

ガザの恒久的停戦と和平を求める以上に、パレスチナの国家としての自立を国際社会が確実に守る仕組みがなければと思う。
「国際社会」がイスラエル批判をしてこなかったという「不作為の罪」は、ここまでの長期間にわたり、この状況を生み出したことを考えると、今新たに強いられている「死」については、「国際社会全体の責任」であるともいえるのだ。

ハマスの戦争犯罪が指摘される一方で、イスラエルこそ戦争犯罪を重ね続けている。軍事的脅威と無関係に人を殺し、町全体を無差別に破壊してきた。イスラエルがパレスチナ人にジェノサイド(集団虐殺)を行っているのは明白だ。
ジャーナリストの取材も禁止され、極めて困難であるどころか、報道陣もまた、イスラエル軍に標的として殺されているのだ。
ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント前国防相は、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出されている。

フランスのマクロン大統領は、パレスチナを国家として承認することを決め、ことし9月に開かれる国連総会で正式に表明する考えを明らかにした。
欧米の主要国や日本はこれまでパレスチナを国家として承認しておらず、フランスが承認すれば、G7=主要7か国としては初めてとなる。
国連の四分の三の国がパレスチナを国家として承認するには、あと何カ国必要なのか。
日本も続くべきであり、その社会的な気運を作らなければならないとは思う。
だが、今さら、という気持ちにもなる。

情報が得づらい中でも、少なくとも事実として行われていることは伝わってきている。
万単位の人間が餓死させられている。
食料を受けとろうとした人間が殺害されている。
国際的な人道支援が不足しているために、その実行が阻止された後、間に合うだけの動きをとれていないから、人々が命を落としている。
私たちは「見殺し」にしている。

なぜ国際社会は正義を守るために動けないのだ。

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「映画芸術」の特集「敗戦後80年−戦争映画」に書きました

2025-07-27 | Weblog
久しぶりに「映画芸術」誌に書きました。

特集「敗戦後80年−戦争映画」で、『宝島』と『木の上の軍隊』について。
「沖縄を描いたこの二本の映画が作られたことは意義があると思うし、感謝もする。敬意を払いたい。一筋縄ではないことだと思うからだ。多くの人に観てほしいと思う気持ちもある。議論が始まればいいと思う。」
末尾にそう記した。
ブログにこの二本の映画について触れなかったのは、「映画芸術」に書いてしまったからです。

髙田宏治さんの『国宝』への意見には唸らされます。

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猛暑の中、キリバスを思う

2025-07-27 | Weblog
猛暑の中、気候変動による海面上昇は、刻一刻と進んでいることを、思わざるを得ない。

国土が水没の危機にある太平洋のキリバス共和国のことを、思う。

1979年に独立。
1997年の京都議定書会議の時はまだ「十八歳」の国であった。

写真は、『KYOTO』に登場した、キリバス代表を演じた永瀬美陽。(撮影・姫田蘭)

キリバスは33のサンゴ礁から成り、東西約3,870キロメートル、南北2,050キロメートル、赤道付近に350万平方キロメートルにわたって散在している。
キリバスの有するEEZ(排他的経済水域)は世界第3位。ほとんどを海が占める。
陸地の総面積は730平方キロメートルと対馬と同程度で小さい。海抜は低く、首都のあるタラワ環礁は最高標高3メートル。

1995年1月1日に日付変更線の位置を東端にずらして全領域で統一、「世界で最も早く日付が変わる国」になった。

世界銀行の予測では、最悪の場合、2050年までにタラワ環礁は5〜8割が浸水するといわれている。
マングローブを植林したり防護壁を作るなど対応しているが、いつ限界が来るかわからない。 

その狭さでも戦後4,000人から6万人にまで人口増加したタラワ環礁には、深刻な都市問題がある。
淡水の確保の問題も深刻だ。雨が降らないと水不足になり、豪雨が続くと井戸の海水が流入して水質汚染につながる。
 
国の歳入の65パーセントを、キリバス領海で漁をするために外国船が支払う入漁料に頼っているという。就業人口は2割。ほとんどが自給自足。オーストラリア、日本はじめ、諸外国の支援に頼るところが大きい。
キリバスの経済活動維持を目的として日本の援助によって造られた官庁街バイリキと港町ベシオを結ぶ3.4キロの「ニッポン・コーズウェイ」は有名。
日本のマグロ・カツオ漁船でも多くのキリバス人が活躍している。
海水温の上昇により生態系に変化が見られる。現状が維持できるとは限らない。

『わが友、第五福竜丸』では、核実験によるマーシャル諸島の被害についても描いたが、クリスマス島等、核実験の脅威にもさらされてきている地域。
『KYOTO』を上演する機会がなければ、このキリバスという国のことを私が認識することはなかった。
知ってしまった以上、何かを続けなければならない。
その思いに駆られてやまない。


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