ついに「餓死」である。
長期にわたってガザ住民が生存するためのライフラインは保たれずにいたが、ついに圧倒的多数の「餓死」の事態が急迫している。
AFPによると、国連世界食糧計画(WFP)は、紛争下のガザが「飢饉の重大なリスク」に直面していると警告していたが、25日、住民の約3分の1が「数日間、何も食べていない」「栄養失調が急増し、9万人の女性と子どもが治療を至急必要としている」「この危機はかつてない、そして驚くべきレベルの絶望に達している」とした。
9月までに47万人が「壊滅的飢餓(飢饉)」に直面するとの見通しを示している。
その直前にBBCも、その時点でガザの栄養不良による死者が、「過去48時間だけで33人」としていた。栄養不良によって死亡した人数。うち12人は子どもだ。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は22日の国連安全保障理事会で「飢餓があらゆる場所で生じている」と警告。210万人の住民が基本物資の深刻な不足に直面しており、イスラエルには国連とそのパートナーによる人道支援を促進する義務がある、と述べた。
そしてAFPによると、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のタミーン・アルキータン報道官は22日、米国とイスラエルの支援を受けてパレスチナ自治区ガザ地区で人道支援物資の配給を行う「ガザ人道財団(GHF)」が活動を開始して以来、イスラエル軍がガザで食料を受けとろうとしたパレスチナ人1000人以上を殺害したと明らかにした。
「7月21日現在、ガザで食料を受け取ろうとして殺害された人の数は1054人に上る。うち766人はGHFの配給拠点付近で、288人は国連などの人道物資を運ぶ車列付近付近で殺害された」と発表。報道官のデータは「医療チーム、人道支援団体、人権団体など、現地の信頼できる情報源からの複数の情報に基づいている」という。
GHFは、イスラエルがガザへの物資供給を2か月以上遮断し、大規模な飢饉の警告が出された後、5月26日に活動を開始。しかしその配給を待つ人々にイスラエル軍が発砲したと毎日のように報じている。
イスラエルの軍事組織・イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)は、責任逃れか誤魔化しか、ハマスが「人道状況に関する虚偽のキャンペーンを実施している」という。
だが、「イスラエルは国際法に従って行動しており、支援物資をハマスの手に渡らないようにしながらガザ地区内に運び込まれるのを促進している」という主張を、もはや真に受ける者はいない。
食糧価格が高騰しているため、ガザの人々が食料を手に入れるには食糧援助に頼るしかなくなってから、久しい。
イスラエルは「ハマスの手に渡らないように」という「虚偽の大義名分」で、「餓死」を強要している。
国連もそれを認めている。
そして、ほんとうに文字通り、言葉の意味を考えて読み直していただきたい。
「食料を受け取ろうと集まったガザ住民」をイスラエル軍が既に「1000人超殺害」したのだ。
人道支援を待つガザの住民が、イスラエル軍に、「毎日何十人も射殺されている」のである。
このことがいま現在、今日も、進行形で行われている。
イスラエル軍はガザで、「イスラム組織ハマスの壊滅」を錦の御旗に活動してきた。
2023年10月7日にハマスがイスラエルに対して行った越境攻撃が発端とされている、イスラエルのガザに対する大規模な軍事攻撃である。だがネタニヤフ首相は、イスラエル軍・治安当局について調査委員会の設置を拒否しているため、多くの疑惑があるまま、とにかく「ガザへの包囲攻撃」が,以来2年半以上続く。
だがそもそもパレスチナの人々は、1948年イスラエルの建国と第1次中東戦争(ナクバ)によって居住地を追われ、多くが難民という立場を余儀なくされた。国連で帰還権が認められているにもかかわらずイスラエルによって阻まれ、ガザ地区とヨルダン川西岸地区に残った人々は、1967年以降イスラエルの占領下にある。
このような理不尽を国際社会が容認してきたのだ。
ガザの恒久的停戦と和平を求める以上に、パレスチナの国家としての自立を国際社会が確実に守る仕組みがなければと思う。
「国際社会」がイスラエル批判をしてこなかったという「不作為の罪」は、ここまでの長期間にわたり、この状況を生み出したことを考えると、今新たに強いられている「死」については、「国際社会全体の責任」であるともいえるのだ。
ハマスの戦争犯罪が指摘される一方で、イスラエルこそ戦争犯罪を重ね続けている。軍事的脅威と無関係に人を殺し、町全体を無差別に破壊してきた。イスラエルがパレスチナ人にジェノサイド(集団虐殺)を行っているのは明白だ。
ジャーナリストの取材も禁止され、極めて困難であるどころか、報道陣もまた、イスラエル軍に標的として殺されているのだ。
ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント前国防相は、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状が出されている。
フランスのマクロン大統領は、パレスチナを国家として承認することを決め、ことし9月に開かれる国連総会で正式に表明する考えを明らかにした。
欧米の主要国や日本はこれまでパレスチナを国家として承認しておらず、フランスが承認すれば、G7=主要7か国としては初めてとなる。
国連の四分の三の国がパレスチナを国家として承認するには、あと何カ国必要なのか。
日本も続くべきであり、その社会的な気運を作らなければならないとは思う。
だが、今さら、という気持ちにもなる。
情報が得づらい中でも、少なくとも事実として行われていることは伝わってきている。
万単位の人間が餓死させられている。
食料を受けとろうとした人間が殺害されている。
国際的な人道支援が不足しているために、その実行が阻止された後、間に合うだけの動きをとれていないから、人々が命を落としている。
私たちは「見殺し」にしている。
なぜ国際社会は正義を守るために動けないのだ。