Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

ドキュメンタリーの二大巨人と

2024-06-25 | Weblog
あまりにも愉快な写真なのでご本人たちの承諾を得て、アップします。
左より、奥秋聡さん、松倉大夏さん。

奥秋聡さんは、NHKのディレクターとして活躍され、ETV特集『海の放射能に立ち向かった日本人~ビキニ事件と俊鶻丸~』で2013年度メディア・アンビシャス大賞を受賞。著書に、同番組を書籍化した「海の放射能に立ち向かった日本人 ビキニからフクシマへの伝言」がある。私が昨年『わが友、第五福竜丸』を創作した際、重要なパートを担った「俊鶻丸」の存在を描くことができたのは、彼の御陰である。五年の沖縄局勤務から関東地方に戻って二年である。
奥秋さんについての私の記事 ↓
https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/2222e461d5ae1c9834c2d41aee4c5b3d

松倉大夏さんは、現在大ヒット公開中の映画 『ちゃわんやのはなし 四百年の旅人』の監督であり、これまでも様々な、ユニークなセルフドキュメンタリーも含めた作品を作り出して来られた方である。渡辺美佐子さんのドキュメンタリーも撮られている。岡山で私も知る人々が関わった映画『やまぶき』ではプロデューサーも務められている。フィクションも手掛ける方なのだ。『ちゃわんやのはなし』のアフタートーク登壇皆勤日数は、ポレポレ東中野での新記録だという。まだまだ上映中なので、ぜひ駆けつけて、松倉監督の新記録更新に貢献してください。
私の紹介記事↓
https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/s/ちゃわんや

松倉さんもNHKの番組に携わったこともあるし、お二人は知り合いなのかもしれないと思ったが、たまたま同じ日に『地の塩、海の根』を御覧になったので、もしやと思ってご紹介したら、初対面であった。

世代も近いし、小さな子どもを育てながら仕事されている点も共通していて、お二人の話はとても楽しく盛り上がった。よい出会いをプロデュースできたことは、こちらも嬉しいのである。

ドキュメンタリーの二大巨人と、というのは、お二人とも今後の活躍に目が離せない注目のドキュメンタリー作家であると同時に、まず、お二人とも体がでかいのである。
洒落です。失礼しました。

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加藤直樹さんからのメッセージ 『地の塩、海の根』

2024-06-25 | Weblog
加藤直樹さんより「地の塩、海の根」評が寄せられました。

※   ※   ※   ※   ※

燐光群「地の塩、海の根」を見てきた。素晴らしかった。

100年前のウクライナ西部を舞台にユダヤ系ポーランド人が執筆した反戦的、国家批判的な小説「地の塩」。その朗読劇をやろうとしている現代日本の劇団。ポーランド語で書かれたその小説をウクライナ語に翻訳しようとするウクライナ(ヘルソン)の作家。そしてその息子でロシアに拉致され、ロシア化を強要される少年。こうした重層的な物語が、最後に「海の根」という言葉に集約されていく。

ぼくは不覚にも何度か涙が出そうになった。アフタートークで出演しなければいけなかったので何とかこらえた。心を揺さぶられた。

100年前の小説「地の塩」の舞台は、第一次世界大戦下。今のウクライナ西端、カルパチア山中の少数民族「フツル人」であり、飼い犬の他には誰にも心を許していない貧しい孤独な男が、当時この一帯を支配していたオーストリア帝国の臣民として招集され、わけも分からないまま兵士にされていくというものだ。ここには、前近代の人々が戦争を通じて「国民」「民族」へと暴力的に形成されていくさまが描かれている。

一方、100年後。ウクライナの作家の夫とホロドモール研究者の夫婦とその息子は、「ウクライナ人」として確立しつつあるナショナル・アイデンティティをはぎ取ろうとするロシアの侵略という暴力に向き合っている。作家が抱いているナショナリズムは、抵抗民族主義としてのそれである。

「国民」「民族」が上から暴力的に押し付けられていく100年前と、「国民」「民族」を暴力によってはぎ取られようとしている100年後の、同じウクライナの人びと。この合わせ鏡が、この物語に重層性と深みを与え、謎を投げかけてくる。

「国民」「民族」といったフィクションが「人間」にとって何であったかを描きながら、一方で、たった今、それを暴力的に否定されるウクライナの人々の痛みへの共感をはっきりと前提に置いている(だから劇中ではロシア擁護論批判も展開される)。その上で物語は、少年が「その先」を目指すことを暗示して終わるのである。

「海の根」は当初、クリミアを指している。ロシアという内陸の帝国が海に延ばす支配の根。だが、最後にはまったく違う何かとして示される。100年前に「兵士となれ」と言われて動員されていった孤独な男と、「ロシア人になれ」という暴力に抵抗する少年。その二人の無念を受け止めて、しかしその先を指さす何か。つまり、「海に開かれた根」という不思議で力強いイメージへと転身している。歴史的現実の中で人間性を守っていくための根となる、海に開かれた「根」に。

7月7日までやっているので、ぜひ多くの人に観てほしいと思う。


※   ※   ※   ※   ※

加藤直樹さんからのメッセージが寄せられました。Facebookにだが、Facebookをやっていらっしゃらない方のために、こちらにも転載させていただきました。


撮影・姫田蘭。

左より 南谷朝子 武山尚史 円城寺あや 猪熊恒和


上演情報 ↓
https://rinkogun.com/portfolio/20240621_chi_no_shio/

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