Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

映画 『夜明けまでバス停で』 の「一本気」

2022-08-10 | Weblog

映画『夜明けまでバス停で』は、2020年11月に渋谷区幡ヶ谷のバス停でホームレス女性が襲撃され死亡した実際の事件をもとにしている。

梶原阿貴さんのオリジナル脚本。シナリオライターが、現実の出来事を自分の側に思いきり引き寄せて、書きたいことを一気に書いた、という真っ直ぐさが、本来ダークで深刻な背景を乗り越えがたいはずのこの映画に、揺らぎのない爽快感とでもいうべきものを、備えさせている。

じっさい、襲撃者が石をコンビニ袋に入れ、それを女性の頭の上に振り上げる場面もあるのだが、本篇そのものがその陰惨さに呑み込まれてゆかないのだ。

 

主人公は、プロのアクセサリー作家として、昼間はアトリエで製作販売をしながら、夜は居酒屋チェーン店でアルバイトとして働いている。そうした暮らしぶりは、ある意味、我々フリーランスの演劇人らアーティストの多くと共通している。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、解雇、閉店が相次ぐ状況下、行き場がない、しかし誰かを頼ることもしないと決めた主人公が、最終バスの去った後の停留所ベンチで夜明けまで過ごすようになるところまでの説得力は、ある。

高橋伴明監督の映画は、「伴明プロ」の映画を、私が上京した1980年頃にたくさん観たが、当時からの反骨精神と怒りが、本作にも受け継がれている。それが梶原阿貴脚本の「一本気」と相まって、なぜか、素直にまっすぐ、のテイストを醸し出している。

構造的に、あるハリウッド映画の監督の最新作と相似性があるのだが、それはネタばれになるので、ここには記さない。 

 

映画『夜明けまでバス停で』は、2022年10月8日(土)より【東京】K`s cinema、池袋シネマロサ、イオンシネマ多摩センター、MOVIX昭島等で、公開

 

※追記

『藤原さんのドライブ』座高円寺公演 11月8日(火)14時の回のトークゲストに、梶原阿貴さんをお招きしました 。

https://blog.goo.ne.jp/sakate2008/e/85b8de2419426d8bfbd7968364b17196

 

 

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