Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

〈別役実メモリアル〉「別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました」 ごあいさつ

2021-06-25 | Weblog

〈別役実メモリアル〉「別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました」

パンフレットに記載した、ごあいさつ文です。

 

今回の別役実短篇集四作連続上演は、ほぼ共通のセットで上演される。

別役作品の舞台は、公園や道端、電信柱やベンチがあるという設定が多いから、人が通り過ぎる場所で足を止めたときに何かが起きる、事件に巻き込まれる、といったシチュエーションが多い。

だが私たちは、昨年上演した『天神さまのほそみち』もそうだが、通り過ぎる場所ではなく、「行き止まりの場所」を選んだ。

人々は、町の中の、ふと入り込んだ袋小路のような地点で、つまり、どん詰まりの場所で、出会い、やり取りすることになる。

屋内の設定の場合も、そこはほとんど、登場人物にとって「先のない場所」だ。

 

『いかけしごむ』は、なにしろ、イカの断片と消しゴムが似ていることに着目した別役さんが、こんな戯曲を書いてしまったことに驚かされる。都市の孤独、そして人間は何のために生まれ死ぬのかというテーマを読み取る人もいるだろう。私は一読して、この不条理な喜劇の理不尽な魅力の虜になった。

 『眠っちゃいけない子守歌』は、別役作品屈指のキャラクターが登場する。なにしろ、彼らは「世界と対決」するのだ。演劇の楽しさに満ちた、しかし、せつない作品だ。

今回上演する四本のうち唯一、テキレジをさせていただいたのが、『舞え舞えかたつむり』である。といっても、せりふのカットはない。別役氏のライフワーク〈犯罪症候群〉に向き合う第一作である本作は、今回、もっとも華やかで賑やかな作品になるはずである。

『この道はいつか来た道』は、実に不思議な戯曲である。別役さんはどこに向かおうとしていたのか、と思う。人生の終末期を描いた戯曲であり、今回の四本の中では一番最後に書かれた作品だが、執筆時の別役さんは現在の私よりやや若い年齢だ。

いろいろお話しするようになった頃の別役さんは、五十歳前後だったはずである。当時の私は、別役さんと同じく、最寄りの駅が西永福だった。私と別役さんは「この町」を共有していたともいえる。

この劇のため、一ヶ月以上、西永福も含めた杉並区内を通って、下北沢に毎日通っている。別役さんが予見していた「行き場のなさ」を痛感しながら、である。

 

〈別役実メモリアル〉「別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました」は、四作品で一つの作品であると考えています。くれぐれも、四作品全てを御覧いただきたく思います。半数の二本だけを御覧になるつもりだったお客様も、ぜひ後の二本を御覧いただけますと幸いです。

 

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写真は、2017年9月、別役実さんご夫妻と、ジャコメッテイ展(国立新美術館)にご一緒したさいのもの。

ジャコメッテイ作品の手前に、別役さんの影。

別役さんは、私との、サミュエル・ベケットについての対談(「国文学」誌)で、「僕は、ベケットの登場人物は、みんなジャコメッテイの彫刻の姿で浮かんでくるんだよ」、と言われていた。

 

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〈別役実メモリアル〉「別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました」

6月25日(金)〜7月11日(日)
下北沢ザ・スズナリ

『舞え舞えかたつむり』『眠っちゃいけない子守歌』『いかけしごむ』『この道はいつか来た道』、一挙、四本立て。

〈全4作品通し上演〉の日は四日しかありません。売り切れ必至ですので、〈全4作品通し上演〉をご希望のお客様は、早めにご予約ください。

他の日も、二時間程度の長いインターバルを挟んで、全四作品を御覧になれる日がほとんどです。観劇の合間には下北沢の街を散策していただき、一日で四作品を見ていただくことが出来ます。

四日間だけ、半数の二本だけを上演する日があります。スケジュールの問題で観劇のご都合が着かないときには、是非この日と別な回を組み合わせてみてください。

〈別役実メモリアル〉「別役実短篇集 わたしはあなたを待っていました」は、四作品全てで一つの作品であると考えています。便宜上、二本ずつ分けて「Aプログラム」「Bプログラム」という表記もしていますが、くれぐれも、四作品全部を御覧いただきたく思います。

ご観劇料も、この規模の上演ではあまりない低価格でご用意しております。

 

http://rinkogun.com/Betsuyaku_Tanpen.html

 

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