瑳川哲朗さんがお亡くなりになっていた。
「大江戸捜査網」の渋く剛胆な二枚目として、子供の頃に強い印象を持っていた。他の俳優とは違った何かがあった。
シアターV赤坂という劇場を運営されていた時期があって、『ブレスレス ゴミ袋を呼吸する夜の物語』の再演、追加公演をさせていただいた。
私が脚本を書き下ろした蜷川幸雄さん演出による『エレンディラ』で、ヒロインの祖母役を豪快かつ繊細に演じてくださった。何かの雑誌で生涯で印象に残るせりふとして『エレンディラ』を挙げてくださった。ご自分の代表作とも言っておられた。
瑳川さんのあの声が、「エレンディラのおばあちゃん」の声として息づいたときの衝撃、原作にはないラスト近くの屋上の病床シーンの演じ分けの巧みさ、忘れがたい。
最後にお目にかかったとき、「そろそろ一緒に芝居やりましょう」と言うと、喜んでおられてはいたが、「からだ次第だなぁ」とも、おっしゃっていた。
ちょうど、上演前の数年間お世話になった、翻訳・研究家の野谷文昭さんから、新版の『エレンディラ』を含むガルシア・マルケス短編集をいただいたところだった。(写真)
本当に残念である。
ありがとうございました。
おつかれさまでした。