大坂なおみさんが、米ウィスコンシン州で起きた警官の黒人男性銃撃事件への抗議のため、ウエスタン・アンド・サザン・オープン準決勝を棄権した件について、大体大体育学部の梅垣明美教授が同大学の公式サイトなどで、
「大坂選手の行動に賛意を示す報道が目につきますが、私は大会の運営側のWTA(女子テニス協会)などが翌日の試合を延期し、大坂選手と話し合って出場をお願いした対応に注目します」とコメントしたという。
棄権公表後、大坂選手に賛同し、もともと準決勝予定だった日を休止にしたWTAの対応(大坂選手が翌日開催された準決勝に出場が実現)は、もっと注目されていいと思うが、スポーツ倫理学専攻・梅垣教授、の次の発言には頷けない。
「競技会場で意思表示をする場合は、その差別がスポーツの場面で生じた問題かどうかを判断する必要があります。今回はテニスとは関係のない問題であり、棄権ではなく、別の方法での発信を考えても良かったと思います。スポーツ選手の行動は子どもへの影響が大きく『主義主張があれば競技を棄権してもいい』と思わせてはいけないと考えます」
大坂選手の決断を「主義主張があれば競技を棄権してもいい」にまとめるのは、内容を見ていなさすぎる。スポーツの場面で生じた問題しかスポーツ選手は主張してはいけないのか。
「別の方法での発信」とは具体的に何なのか。
大坂選手の主張にWTAも賛同したのだ。「主義主張があれば競技を棄権してもいい」と言っているというのは、捏造というか、ねじ曲げすぎである。
スポーツというのは、フェアプレイを求められる場である。
結果として、この社会を、差別のない理想世界に近づけることに繋がる。
例えば、差別が行われたら、差別語を発する者がいたら、場合によっては、その相手に厳しい抗議の言葉を浴びせることは、あってもいいと思う。ただ、それが人々にショックを与える言葉であれば、思わぬ二次被害になるので注意しなければならない、とは思う。
今回の大坂選手の決断は、警官による黒人への暴力が、殺人という形で問題になっていたにもかかわらず、重ねてこのような事態が起きたことへの、真剣な抗議行動であり、ほんとうに、緊急性の高いことであった。
「子どもへの影響」ということならば、きっちりと「差別」について、そこまでやらなければ根絶できないという厳しさをこそ教えるべきである。
大坂選手の抗議は、抑制されていて、公正であった。