島次郎さんとの幾つかの仕事を思い出す。
2009年初演の『BUG』は、アメリカの田舎のモーテルの一室が舞台である。
ある意味、リアリズムである。私と島さんが組むときはどちらかというと抽象が多いような気がするのだが、この劇はガチガチの本物感を重視している。人の官能や皮膚感覚に訴えさせる内容なので、当然なのだ。俳優の裸体が重要な意味を持つ劇でもある。
それがあるシーンだけ、変調する。驚くほどの異様な空間になる。極めて短い時間で変化し、同様に瞬時にして元に戻る。これはかなり観客を驚かせた。こういう「仕掛け」を相談するときに目を輝かせる島さんも、いた。
この『BUG』で、島次郎さんは、読売演劇大賞 優秀スタッフ賞を得ている。
作者トレイシー・レッツは、『八月の家族たち』『殺し屋ジョー』等で知られるが、最初に日本に紹介したのは、私たちである。レッツ作品の中でも、私が『BUG』に惹かれるのは、極めてシンプルであるにもかかわらず、圧倒的に構造が優れていて、人間存在の根源を問う作品だからである。日本初演の数年前、私はオフ・ブロードウェイ版を制作の古元道広と観て、これを日本でやろうとすぐに決意したのだった。というか、我々がやるべき仕事だと確信したのだった。
燐光群公演 『BUG』
作○トレイシー・レッツ 上演台本・演出○坂手洋二
<東京>2009年9月18日(金)〜9月30日(月)下北沢ザ・スズナリ
<大阪>2009年10月2日(金)〜4日 (日) 精華小劇場 [精華小劇場5周年記念事業「越境する表現者たち」関連企画]
<伊丹>2009年10月7日(水)名古屋市西文化小劇場
< CAST >
アグネス・ホワイト・・・・・西山水木
R・C(ロニー)・・・・・・宮島千栄
ピーター・エヴァンス・・・・大西孝洋
ジェリー・ゴス・・・・・・・猪熊恒和
スウィート博士・・・・・・・川中健次郎
ピッツァ・ボーイ・・・・・・武山尚史/西川大輔/杉山英之
< STAFF >
美術○島次郎
美術助手○松村あや
照明○竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
音響○島猛(ステージオフィス)
音響操作○徳久礼子(ステージオフィス)
衣裳○宮本宣子
衣裳助手○山下和美・白畑茂美
舞台監督○高橋淳一
下訳○秋葉ヨリエ
演出助手○清水弥生
宣伝意匠○高崎勝也
特殊メイク協力○坂田有希子
制作○古元道広・近藤順子・永坂悠