昨日「暖かい」と言ったことを撤回しなきゃ、というしかない、寒風の到来。……今日も机に向かっているうちに時間ばかりが過ぎていく。……それでも意外に暖かさが戻った夜、〈こゆび侍〉を初めて観る。宮崎駿テイストのファンタジーを狙っているのか衣裳などアニメからそのまま出てきた感じだ。主演の女の子はたいへんかわいらしいが、劇団員ではないらしい。二十代後半の集団である。今週観た三十代劇団たちに比べると格段に話はわかりやすい。いつもそうなのかどうかは知らないし、そこに微妙な世代間差があるのかどうかもよくわからない。……帰路、夜の電車の車内で感じるのは、だいの大人がだらしないこと。なんというか他人に対するデリカシーのなさ。他の国ならもっと人に対して丁寧だ、というか、他者の怖さを知っている。感覚が麻痺している子供社会。……現実の厳しさには直面しているはずだ。だが、とにかく三十年前なら当たり前だったレベルでさえ、ハングリーさがない。それはそれで今の時代の苦しさということなんだろう。……息子がニューヨークタイムスの記事「Japan May Declare Control of Reactors, Over Serious Doubt(日本政府が原子炉制御成功を宣言しても、その裏には重大な疑問)」を原文で読みたいというので携帯に転送する。受験に関係あるのかどうかは知らない。壊れた原子炉を抱える福島原発の「冷温停止状態」が嘘っぱちなのは誰もが知っている。「冷温停止」という用語は通常は健全な原子炉に対して使うもので、原子炉が十分に安全で格納容器を開いて中の燃料棒を取り出すことが出来る状態を示すものである、「冷温停止宣言」は福島原発があたかも収束に近づいているというような誤解を招きかねない、というのも既に周知の事実。アメリカが「地震や津波が再び襲って、東電の間に合わせの原子炉冷却システムを使用不能にしてしまう可能性」をしきりに指摘するのは、日本産業への不信を煽るためでもあるだろうが、間違っているとは言えない。この文中で九州大学原子力工学科の工藤和彦教授が「冷温停止」について言っている、「私が知りたいのは、本当にそんなこと言ってしまっていいのか、ということです」という通りなのだが、それは教授自身にも、私たちみんなにも、かかってくる。他人のせいにはできない。実は、まったく今現在、日本という国に対する信用そのものが問われているのだ。これはファンタジーではなく、現実である。
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