Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

『宮の前キャンプからの報告』

2011-12-06 | Weblog
『宮の前キャンプからの報告』は清中愛子さんの「自家製詩集」である。そんじょそこらの「自家出版」とは違って、紙までが「自家製」だ。彼女の自宅から出た古紙を溶かし、再度紙を漉いている。彼女自身が紙と装丁のデザインもしているのだ。表紙というか束を補強するために新聞のテレビ欄の一部が、中表紙の前の薄紙にはスーパーのチラシの残像が透けて見えている。初版は十冊ということだ。優雅な作業ではない。彼女が詩で描く「生活」の姿に、このリサイクル行為じたいが見合っていると考えられているのだ。「宮の前キャンプ」とは、長嶋巨人の伝説の強化合宿に「地獄の伊東キャンプ」というものがあり、それにちなんで、彼女が自分の今の暮らしを「宮の前キャンプ」と呼んでいることに由来したものだそうだ。「宮の前」とは彼女のアパートの建物の名前。また、キャンプのテント生活のような小さな暮らしを意味しているという。アパートの生活をテーマに作った詩ばかりだから、冒頭に収録された、私が三田文学新人賞で推した『宇宙みそ汁』の連作集と云えるだろう。『貧乏かぶと虫』という一篇は泣ける。彼女の住んでいる町には沖縄とフィリピンからの移住者が多い。やがて造船所の肉体労働を重ねつつ幼い子を育てている彼女の現実の姿がリアルを突き抜けたファンタジーの様相を呈してくる。後半になると階下の住人との闘争を経て、作者は便所で自分の小便の音を聴きながら、宇宙のことを考えている。掲載順が一冊のドラマとして計算されていて、彼女が戯曲を書けるはずだという私の直感は、確信に変わった。
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『学生版日本の問題』インタビューを受けて

2011-12-06 | Weblog
処理すべきことが山積み、というか、増えている。自分が増やしてしまっていると言えなくもない。知らない間に十二月になっていた感じだが、油断大敵である。半分くらいの時間は、日曜日に公開審査が迫った劇作家協会新人戯曲賞候補作、劇作家協会セミナー研修課作品、他にも故あって若い作家の戯曲を読み続ける。……さて、件の『日本の問題』には「学生版」もある。過去に燐光群の手伝いにも来てくれたことのある酒井一途くんが、責任者というか学生版担当プロデューサー。その「取材訪問企画」ということでインタビューを受けた。もう三週間前になるか、座高円寺入りの日に劇場脇の喫茶店で喋った。その記事がまとまったので、興味のある方は公式ブログを読んでいただければと思います。http://blog.nipponnomondai.net/?p=194
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