A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

Recording Words 082 いちばん肝心なこと

2011-06-25 23:59:22 | ことば
 いや、事態はもっと困ったことになっていて、ロベルト・カルロスだの体脂肪率だのの知識を深めることに気をとられ、そもそも、いちばん肝心なことが何だったのかを忘れてしまっている。
 私にだって、昔から何度も反芻してきた重要な自問があったはずなのだ。そして、何よりそれこそが自分の人生に課された大きなテーマだと認識していたはずなのである。たしか。
 それを忘れてしまったのか、あるいは知らないうちにいつのまにか時効が訪れ、問いそのものが価値を失ってしまったのか、それともなんなのか?
「ああ先生ね、それが歳をとったっていうやつなんです」
 その夜の食堂で、帽子屋さんがあっさりそう言ってのけた。
「わたしにも経験あるなぁ。そういう日がね、来るんです。来ちゃうんです。いや、決して何かをあきらめたとか、そういうんじゃなく、何かもっと自然にね、どうでもよくなってしまうんだなぁ、これが」

(吉田篤弘『つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)』筑摩書房、2005年、pp.94-95)


そんな日が来るのかなぁ。いや、もう来てるのか?


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