A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記341 「レベッカ・ホルン」

2009-11-26 23:27:41 | 書物
タイトル:レベッカ・ホルン
監修:東京都現代美術館
ブックデザイン:折原滋(O design)
製版:中江一夫(日本写真印刷株式会社)
編集:淡交社美術企画部
印刷・製本:日本写真印刷株式会社
発行:株式会社淡交社
発行日:2009年11月18日
定価:本体2,667円+税
内容:
ドイツの現代美術家レベッカ・ホルン(1944–)は、1970年に鳥の羽根やユニコーンの角を身にまとったパフォーマンスで注目され、1972年に28 歳で「ドクメンタ 5」展(ドイツ、カッセル)に参加。以来、アートの領域を拡大する精力的な活動を通して、美術のみならず、ダンスや映画の世界でも、多くのひとびとを魅了してきました。
初期パフォーマンスは、やがて機械仕掛けで動く立体作品へと展開し、さらにはその後の映像作品にこれら動く彫刻が登場するなど、作品はメディア間を横断しつつ、意味の変容と連関を見せていきます。また1980年代にドイツに戻って以降は、近現代史と向き合う作品を手がけ、高い評価を得てきました。近年は、作曲家とのコラボレーションや舞台美術、のびやかに描かれた絵画を手がけ、新たな関心を集めています。
日本初の本格的な個展「レベッカ・ホルン:静かな叛乱 鴉と鯨の対話」(2009年-2010年、東京都現代美術館)を記念して刊行された本書は、初期パフォーマンスから最新作まで、映像・絵画・彫刻・イ ンスタレーションを含む主要作品約130点を通じて、レベッカ・ホルンの創造世界を紹介するものです。(本書カバー見返し解説より)

作品 Works 1992-2009
論考「黒い森に住むタオイスト」長谷川祐子(東京都現代美術館チーフキュレーター)
作品 Works 1962-1999
論考「乱流の零地点にて―ある旅行記」ドリス・フォン・ドラーテン、清水穣 訳
論考「繭から拘束服へ:レベッカ・ホルンの映像作品について」セルジオ・エデルスタイン、木下哲夫 訳
「略歴」関直子(東京都現代美術館主任学芸員)
年譜(展覧会、映像作品)
主要参考文献
作品リスト
(本書目次より)

購入日:2009年10月30日
購入店:東京都現代美術館 NADiff contemporary
購入理由:
東京都現代美術館にて開催されている「レベッカ・ホルン:静かな叛乱 鴉と鯨の対話」展のオープニング・内覧会に行った際に購入。

レベッカ・ホルンで思い出すことがある。昔、渋谷のユーロスペースという映画館で<アート・ドキュメンタリー映画祭>というアート・ドキュメンタリーを紹介する今となっては奇跡のような映画祭があった(当時は桜丘町にあり、現在は円山町に移転している)。おそらく1995年頃から始まったと記憶している(書棚の奥にあるファイルに当時のチラシを残していれば上映作品のラインナップがわかるのだが、ちょっと手間取るので探していない)。その映画祭の第1回か2回に、『レベッカ・ホルン』というドキュメンタリーがあり、見た記憶があるような気がするのである。内容も全然憶えていないにひとしいので、なにか言える立場ではないが、レベッカ・ホルンの作品が日本の観客に紹介された事例として貴重だと思う。カタログに記載されているドキュメンタリー『過去をつきぬけて/Cutting Through the Past』(1995)という作品がその時に上映された作品なのかもしれないが、アート・ドキュメンタリー映画祭のことはまったく記載されていない。ビデオも出ていたが、現在は廃盤である。インターネット普及前夜の時代だったため、まったく記録に残らないのかと「記憶」の彼方の映像に思いを馳せるばかりである。

1階展示室で流れていた映像作品のどれかにジグマー・ポルケの名前をクレジットで見た気がした。カタログで確認したが、どこにも記載されていなかった。《ジーモン=ジグマール》という映像作品はあったので、勘違いだろうか。同じドイツ出身の作家なので、どこかで共同制作していてもおかしくはないが・・。

展示は、機械仕掛けで動く立体作品に興趣を感じた。デイヴィッド・クローネンバーグの映画に出てきそうな、不気味で攻撃的なオブジェの佇まいに戦慄を覚える。

本書収録の論考では、長谷川祐子氏がタオイズムとの関係を指摘されていたのが興味深い。個人的にタオイズムに興味を持ち始めていたときだったので、その偶然にそそられた。レベッカ・ホルンにもタオイズムの影響があるとは意外でさらなる研究を期待したい。タオイズムについて書くには研究が足りないが、別の視点からレヴューを書いてみたりしたが、結局、発表は見送った。