沙羅の花 捨身の落花 惜しみなく 石田 波郷
沙羅は夏椿とも言われる。一日花なので、咲きたてのようなきれいな花が、夕方には
ほとりほとりと地に落ちる。まさに潔い捨身を思わせる落花、落ちた花も絵になる。
片づけるのがしのびない。
褐色(かちいろ)の 根府川(ねぶかわ)石に
白き花 はたと落ちたり
ありとしも 青葉がくれに
見えざりし さらの木の花 「沙羅の木」 森鴎外
梅雨の季節に雫を溜めつつ、いよいよ白く凛と咲き、潔く散る沙羅の花を見ていると、
梅雨だろうがコロナ禍だろうが、うつうつとばかりはしていられない、さあ、前を
向いて!と言われているような気がする。
白絹のようなこの花がそんな勁さを感じさせるのが不思議だ。
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