京恋し

頑張った時のご褒美は京都。ずっと憧れ。

思い草

2005-09-25 17:55:13 | 季節のことば
「忘れ草」があるなら「思い草」も紹介しなければ。

道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ (万葉集2271)

道のほとりのススキの根本にうつむいて咲く思い草のように、今さらなんでうちしおれて思い悩むことがあろうか、という意味。作者は誰とはわかりませんが、女性の歌でしょう。恋人と別れて、というより、男が去っていったと思われますが、終わった恋は追わないと毅然と顔をあげて前を向いている姿を感じます。そうそう、頑張って!ってエールを送りたくなるようです。日本の古典の中には「さてしもあるべきならねば」という言葉がよく出てきます。いつまでもそうばかりもして(悲しみにくれてばかりも)いられないので、と言って我と我が身と立ち上がらせるのです。気分が乗らずにグダグダしている時に、私もこうつぶやいて我が身をたたき起こしています。

ところで、思い草というのは、南蛮ぎせる説が最有力。花のイメージは先の歌とピッタリです。ススキなどの根に寄生。きせるの形に似た、紅紫のグラデーションが可憐な不思議な花です。
昨日、向島の百花苑で見つけました。雨上がりで更にうな垂れているようで励ましてあげたくなってしまいますが、この風情がいいのでしょうね。