小説府立真田山学院高校演劇部・3
〔段ボール一杯のパンツ!!〕
いよいよ変なオッサンやった!
ビニールシートの上に段ボールから取り出したパンツを一枚ずつ取り出しては、広げて並べ始めた。
どないみても変態のパンツフェチ。
「ところで、オッチャン、卒業生の人ですか?」
「え……ああ、まあ、そんなとこや🎵」
返事があいまい、いよいよ怪しいんで、はるなに先生を呼びにいかせる。あやめは遠ざけて、あたし一人腹くくって相手をする。
「あの、何期生の方ですか、演劇部にいてはったんですか?」
「そんなんは、どうでもええ。とにかく、ここに僕らの青春があったんや🎵」
並べたパンツは、思いのほか多種類やった。いわゆるショーツから、ビキニの下みたいなやつ、Tバックのご先祖のスキャンティーとか言うような奴。種類だけやちごて、デザインもさまざま。縦縞、横縞、チェックにニコニコマーク、イチゴ模様。
不審者の侵入には厳しい学校やけど、冬休み前の短縮授業の下校時間。学校の校門は、ほとんどお出入り自由。こんな変態が入ってきても分からへん。
いろいろ話しかけて間を持たせる。時間にしたら10分も無かったやろけど、先生が来るのは、ひどく遅く感じた。
「なにしてはるんですか!?」
やっと、顧問の淀貴美先生が、体育の先生二人連れてやってきた。で、最初の第一声は淀先生。
「邪魔せんでくれんか。久方ぶりに僕は高揚してるんやさかい……」
「先生ら、この人確保してください。あたしは警察に電話します!」
それから、パンツを巻き上げながら大騒動。オッサン見かけの割に力があって、先生らも苦労してた。あたしも気ぃついたらオッサンの足にくらいついてた。あやめとはるなは、ビビって倉庫の外に出てしもた。
やがてパトカーがきて、びっくりした先生やら、残ってた生徒やらが集まってきた。
「コラ、抵抗したら公務執行妨害になるぞ!」
言うたお巡りさんが、オッサンに後ろ手に捻られて、ひっくり返り、もう一人のお巡りさんが背負い投げされたところで、校長先生が来た。
「あ、高橋先輩!」
校長先生が青い顔になって説明した。
オッサンは高橋三郎いうて、直木賞とった作家さん。うちの学校には留年を含めて三年半通うて、中退。その後作家生活に入って、テレビやら映画の脚本でも有名。あたしでも名前は知ってたけど、顔までは知らんかった。
その高橋さんが、なんと、今度のコンクールを観に来てくれてはって、えらい感心しはった。そんで、一回久しぶりに、中退した母校を訪れたということが、ハンカチで汗拭きまくりの校長先生から説明された。
ちなみに、校長先生は夏休みに演劇部が自衛隊の体験入隊やったことで、今時珍しい学園紛争にまでなって、学校の統制がとられへんかったいうことで、交代してる。前の校長は、いわゆる民間人校長で、もともと問題の多い人やった。そんで、府教委は本校の卒業生である今の校長を寄越してきた。
で、この校長先生が生徒やったころ、少林寺拳法部の先輩やったんが高橋さん。で、なんで少林寺拳法が演劇部に……?
あたしは、はるか先輩の時の山中さんと、うちらの仲間の長曾我部先輩のことを思い出した。二人とも少林寺拳法や!
あたしは因縁のようなものを感じた。けど、あのパンツとの関係は、まだ分からへんかった……。
〔段ボール一杯のパンツ!!〕
いよいよ変なオッサンやった!
ビニールシートの上に段ボールから取り出したパンツを一枚ずつ取り出しては、広げて並べ始めた。
どないみても変態のパンツフェチ。
「ところで、オッチャン、卒業生の人ですか?」
「え……ああ、まあ、そんなとこや🎵」
返事があいまい、いよいよ怪しいんで、はるなに先生を呼びにいかせる。あやめは遠ざけて、あたし一人腹くくって相手をする。
「あの、何期生の方ですか、演劇部にいてはったんですか?」
「そんなんは、どうでもええ。とにかく、ここに僕らの青春があったんや🎵」
並べたパンツは、思いのほか多種類やった。いわゆるショーツから、ビキニの下みたいなやつ、Tバックのご先祖のスキャンティーとか言うような奴。種類だけやちごて、デザインもさまざま。縦縞、横縞、チェックにニコニコマーク、イチゴ模様。
不審者の侵入には厳しい学校やけど、冬休み前の短縮授業の下校時間。学校の校門は、ほとんどお出入り自由。こんな変態が入ってきても分からへん。
いろいろ話しかけて間を持たせる。時間にしたら10分も無かったやろけど、先生が来るのは、ひどく遅く感じた。
「なにしてはるんですか!?」
やっと、顧問の淀貴美先生が、体育の先生二人連れてやってきた。で、最初の第一声は淀先生。
「邪魔せんでくれんか。久方ぶりに僕は高揚してるんやさかい……」
「先生ら、この人確保してください。あたしは警察に電話します!」
それから、パンツを巻き上げながら大騒動。オッサン見かけの割に力があって、先生らも苦労してた。あたしも気ぃついたらオッサンの足にくらいついてた。あやめとはるなは、ビビって倉庫の外に出てしもた。
やがてパトカーがきて、びっくりした先生やら、残ってた生徒やらが集まってきた。
「コラ、抵抗したら公務執行妨害になるぞ!」
言うたお巡りさんが、オッサンに後ろ手に捻られて、ひっくり返り、もう一人のお巡りさんが背負い投げされたところで、校長先生が来た。
「あ、高橋先輩!」
校長先生が青い顔になって説明した。
オッサンは高橋三郎いうて、直木賞とった作家さん。うちの学校には留年を含めて三年半通うて、中退。その後作家生活に入って、テレビやら映画の脚本でも有名。あたしでも名前は知ってたけど、顔までは知らんかった。
その高橋さんが、なんと、今度のコンクールを観に来てくれてはって、えらい感心しはった。そんで、一回久しぶりに、中退した母校を訪れたということが、ハンカチで汗拭きまくりの校長先生から説明された。
ちなみに、校長先生は夏休みに演劇部が自衛隊の体験入隊やったことで、今時珍しい学園紛争にまでなって、学校の統制がとられへんかったいうことで、交代してる。前の校長は、いわゆる民間人校長で、もともと問題の多い人やった。そんで、府教委は本校の卒業生である今の校長を寄越してきた。
で、この校長先生が生徒やったころ、少林寺拳法部の先輩やったんが高橋さん。で、なんで少林寺拳法が演劇部に……?
あたしは、はるか先輩の時の山中さんと、うちらの仲間の長曾我部先輩のことを思い出した。二人とも少林寺拳法や!
あたしは因縁のようなものを感じた。けど、あのパンツとの関係は、まだ分からへんかった……。