4年ぶりに、ジョン・ウィリアムスが来日した。
そして、「これぞギターで表現しうる最高の芸術」といいたくなるような素晴らしい名演奏を聴かせてくれた。
しかし、今回の日本公演は特別の意味を持ったツアーだ。
なぜなら、今年いっぱいでジョン・ウィリアムスが引退を表明しており、今回が文字通りのサヨナラ公演だったから。
すみだトリフォニーホールを埋めた聴衆も、きっと万感の思いでジョンの奏でる演奏を聴かれたことだろう。
<日時>2013年10月23日(水)
<会場>すみだトリフォニーホール
<曲目>
■ヴィラ=ロボス:5つの前奏曲
■ソル:モーツァルト「魔笛」の主題による変奏曲
■バッハ:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番より)
■アルベニス:アストゥリアス
■タルレガ:アルハンブラ宮殿の思い出
■ジョン・ウィリアムス:
・ステッピング・ストーンズ 第1番
・オッド・ナンバーズ
・フロム・ア・バード第3番
・ハロー・フランシス
■マイヤーズ:カヴァティーナ
■バリオス:ワルツ 第3番
■フィゲレード:ロス・カウハリートス
■カリージョ:星の涙
■カノニコ:エル・トトュモ
(アンコール)
■バリオス:フリア・フロリダ
軽やかにステージに登場したジョンは、とても70歳代とは思えないほど若々しかった。
最初のプログラムは、ヴィラ=ロボスのプレリュード全曲。
第1番は、チェロを思わせる低音の表現力が凄い。
第3番は、思いがけない箇所でミスがあって少し危なかった。しかし、リピートした後、最高音からカンパネラをともなって神秘的に下降するフレーズは鳥肌がたつほど美しかった。
続く第4番は名演。ただ最後の第5番はいささか雑な演奏で、正直いただけなかった。度忘れか即興か分からないが、中間部以降の配列も原曲とは異なる。
次のソルは原曲通り序奏付の演奏。
テーマは、後半の1フレーズがジョン・ウィリアムス流。
バリエーションでは、第4変奏が弾けるようなリズム感で見事だった。
そして、前半のメインは、バッハの聖典シャコンヌ。
この深遠で高貴なシャコンヌを聴けただけでも、この日は十分に値打ちがあった。
「ギターでバッハを、それもシャコンヌをなぜ演奏するのか」という問いに対する最高の答えがそこにあった。
旋律を美しく奏でられて、しかも和声を十分に表現できる。そして、分散和音等においては、他の楽器の追従を許さない見事な表現が可能なのだ。しかし、それはあくまでも可能性であって、今宵のジョンのように演奏することは極めて難しい。
やはり、ジョンはギターの神様だと思い知らされた。
少し技術的なことを備忘的に書いておく。
とにかく左指も右指も本当に動きが小さい。本物の技術とはこういうことなのだ。
前半の連続するスケールの難所を合理的な運指で楽々と弾き切った後、続く長大なアルペッジョを圧倒的な昂揚感で表現してみせた。
アルペッジョの後半では左指が悲鳴を上げる音の跳躍が出てくるが、ジョンは無理な運指を避けてハイポジションだけで弾いていた。(極めて自然な運指に見えたが、これもジョン様マジックかも・・・)
また、再びニ短調に戻った後、録音よりもさらに早い時点から高いAのカンパネラを使っていたのが印象に残った。
後半は、さらに素晴らしい。
ジョン・ウィリアムスの芸術の深さ・広さを満喫させてもらった。
アストゥリアスの最初のEの音が鳴った瞬間、「あっ、これこれ!」という魅惑の世界に引き込まれる。
そして最後の和音は、なんとタンボーラだ! しかし、この余韻の深さを聴かされてしまうと、奇策ではなく真実の発見だと感じてしまう。
その後の「アルハンブラ宮殿の思い出」以降も、「どの曲が」とか「どんな風に」といったコメント無用の名演ぞろい。
ジョンの名人芸に酔いしれているうちに、気が付くと盛大な拍手に応えてアンコールが始まるところだった。
アンコールは、バリオスの「フリア・フロリダ」。
「バリオスの・・・」ではなく、「アグスティン・バリオス・マンゴレの・・・」とフルネームで作曲家を紹介したジョンの謙虚さ・誠実さにも心打たれた。
それにしても、あの「フリア・フロリダ」の美しさは何と形容すれば良いのだろう。
聴きながら、私はずっと幸福感に浸っていた。
前回2009年の来日公演の折、私はこんな風にブログに書いた。
「ジョン・ウィリアムス様
来年いや再来年でもいいから、日本で元気な姿をステージで見せてください。
そして、最高のギターを聴かせてほしい。
できることなら、そのときはバッハも聴かせてほしい。
今から楽しみにしています。」
この願い事は、今回すべて叶えられた。
しかも、その時もう一つの夢をブログに書いていたが、それも明日白寿ホールで叶えられようとしている。
「たとえ5割増しの料金であっても中規模のホール~たとえば紀尾井ホールとかカザルスホール・・・~で、一度ジョンの演奏を聴いてみたいと思ったのは、私だけだろうか・・・」
本当に神様に感謝しなければ・・・
右の画像は、終演後に、ニューアルバム「Stepping Stones」に書いてもらったジョン自筆のサインです。
そして、「これぞギターで表現しうる最高の芸術」といいたくなるような素晴らしい名演奏を聴かせてくれた。
しかし、今回の日本公演は特別の意味を持ったツアーだ。
なぜなら、今年いっぱいでジョン・ウィリアムスが引退を表明しており、今回が文字通りのサヨナラ公演だったから。
すみだトリフォニーホールを埋めた聴衆も、きっと万感の思いでジョンの奏でる演奏を聴かれたことだろう。
<日時>2013年10月23日(水)
<会場>すみだトリフォニーホール
<曲目>
■ヴィラ=ロボス:5つの前奏曲
■ソル:モーツァルト「魔笛」の主題による変奏曲
■バッハ:シャコンヌ(無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第2番より)
■アルベニス:アストゥリアス
■タルレガ:アルハンブラ宮殿の思い出
■ジョン・ウィリアムス:
・ステッピング・ストーンズ 第1番
・オッド・ナンバーズ
・フロム・ア・バード第3番
・ハロー・フランシス
■マイヤーズ:カヴァティーナ
■バリオス:ワルツ 第3番
■フィゲレード:ロス・カウハリートス
■カリージョ:星の涙
■カノニコ:エル・トトュモ
(アンコール)
■バリオス:フリア・フロリダ
軽やかにステージに登場したジョンは、とても70歳代とは思えないほど若々しかった。
最初のプログラムは、ヴィラ=ロボスのプレリュード全曲。
第1番は、チェロを思わせる低音の表現力が凄い。
第3番は、思いがけない箇所でミスがあって少し危なかった。しかし、リピートした後、最高音からカンパネラをともなって神秘的に下降するフレーズは鳥肌がたつほど美しかった。
続く第4番は名演。ただ最後の第5番はいささか雑な演奏で、正直いただけなかった。度忘れか即興か分からないが、中間部以降の配列も原曲とは異なる。
次のソルは原曲通り序奏付の演奏。
テーマは、後半の1フレーズがジョン・ウィリアムス流。
バリエーションでは、第4変奏が弾けるようなリズム感で見事だった。
そして、前半のメインは、バッハの聖典シャコンヌ。
この深遠で高貴なシャコンヌを聴けただけでも、この日は十分に値打ちがあった。
「ギターでバッハを、それもシャコンヌをなぜ演奏するのか」という問いに対する最高の答えがそこにあった。
旋律を美しく奏でられて、しかも和声を十分に表現できる。そして、分散和音等においては、他の楽器の追従を許さない見事な表現が可能なのだ。しかし、それはあくまでも可能性であって、今宵のジョンのように演奏することは極めて難しい。
やはり、ジョンはギターの神様だと思い知らされた。
少し技術的なことを備忘的に書いておく。
とにかく左指も右指も本当に動きが小さい。本物の技術とはこういうことなのだ。
前半の連続するスケールの難所を合理的な運指で楽々と弾き切った後、続く長大なアルペッジョを圧倒的な昂揚感で表現してみせた。
アルペッジョの後半では左指が悲鳴を上げる音の跳躍が出てくるが、ジョンは無理な運指を避けてハイポジションだけで弾いていた。(極めて自然な運指に見えたが、これもジョン様マジックかも・・・)
また、再びニ短調に戻った後、録音よりもさらに早い時点から高いAのカンパネラを使っていたのが印象に残った。
後半は、さらに素晴らしい。
ジョン・ウィリアムスの芸術の深さ・広さを満喫させてもらった。
アストゥリアスの最初のEの音が鳴った瞬間、「あっ、これこれ!」という魅惑の世界に引き込まれる。
そして最後の和音は、なんとタンボーラだ! しかし、この余韻の深さを聴かされてしまうと、奇策ではなく真実の発見だと感じてしまう。
その後の「アルハンブラ宮殿の思い出」以降も、「どの曲が」とか「どんな風に」といったコメント無用の名演ぞろい。
ジョンの名人芸に酔いしれているうちに、気が付くと盛大な拍手に応えてアンコールが始まるところだった。
アンコールは、バリオスの「フリア・フロリダ」。
「バリオスの・・・」ではなく、「アグスティン・バリオス・マンゴレの・・・」とフルネームで作曲家を紹介したジョンの謙虚さ・誠実さにも心打たれた。
それにしても、あの「フリア・フロリダ」の美しさは何と形容すれば良いのだろう。
聴きながら、私はずっと幸福感に浸っていた。
前回2009年の来日公演の折、私はこんな風にブログに書いた。
「ジョン・ウィリアムス様
来年いや再来年でもいいから、日本で元気な姿をステージで見せてください。
そして、最高のギターを聴かせてほしい。
できることなら、そのときはバッハも聴かせてほしい。
今から楽しみにしています。」
この願い事は、今回すべて叶えられた。
しかも、その時もう一つの夢をブログに書いていたが、それも明日白寿ホールで叶えられようとしている。
「たとえ5割増しの料金であっても中規模のホール~たとえば紀尾井ホールとかカザルスホール・・・~で、一度ジョンの演奏を聴いてみたいと思ったのは、私だけだろうか・・・」
本当に神様に感謝しなければ・・・
右の画像は、終演後に、ニューアルバム「Stepping Stones」に書いてもらったジョン自筆のサインです。