写真は、先日行ってきた北海道最古の寺、有珠善光寺の
僧坊、書院の様子です。
書院というのは、輸入された知識体系である
仏教教説などを学ぶためのたっぷりと採光の確保された
日本的な教養的空間です。
日本人というのは、世界でも有数の狩猟採集文化である
縄文時代のなかで、つい2000年前までは
海洋性の狩猟である漁業と木の実の採集で豊かな文化を実らせていたけれど、
それ以降はひたすら、海外からの文化摂取に取り組んできた。
その嚆矢が稲作農業の受け入れであり、
その後、その農耕社会が必然的に持つ、文字体系の文化を
まるごと受容してきたのでしょう。
王朝国家の最北端出先機関・秋田城の木簡記録に、
息子が勉強しないことを嘆く地方官吏の愚痴が発見されていますが、
たぶん、1600年近くか、それ以上の長きにわたって、
わたしたちは、「勉強」を尊いものと考え続けてきたに相違ない。
この「書院」という建築装置も、
その住まい手の「立派さ」を引き立てる装置として機能し続けてきた。
たぶん、見栄の部分の方が大きかったと思われますが(笑)、
しかしその「見栄」にみんなが同意していたことは間違いない。
書院造り、という言葉がわたしたちの独特の建築文化として
伝えられ、残されているくらいなのです。
まぁ、今日、こういった空間装置は
一般的には西洋的書斎に置き換わっていて、
こういった書院は、和室の定型デザインとして残っているのでしょう。
書院というのに、そこで座って読み書きするひとは
あんまり見たことも聞いたこともない。
しかし、この写真のような空間を見ていると、
机テーブルに落ちる光彩のみずみずしさ、
木格子の規格的な障子のデザイン。
光をやわらかく受け止め拡散させている白い紙の障子と、
「読み書き」する精神の集中力喚起の装置としては
かなり理に叶っているのではないか。
そんな風に思われてなりません。
ここんところ、集中的に書くという営為を続けていることもあって、
建築として「集中力を高める」という機能性に興味が湧いてきています。
こういった残されてきた建築文化と
現代のわれわれの日常性との距離感というのは
やはりものすごいものがありますね。
当たり前のように思っていることですが、
でもやっぱり一度、この「距離感」について、
目を覚まして考えてみる必要性はあるのではないでしょうか。
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