さて皇室ゆかりの建築・龍雲閣の内部であります。
1階は従者のみなさんのための部屋で、特段の格式は感じません。
知識なく見ていたはじめは、
「ふーーん、まぁね、こんなもんでしょう」というように見学していました。
床の間付きの部屋もあったのですが
当時のこととて、基礎が不同沈下をしているのか、
床の間の水平架構材が一部、水平を確保できていないのではないかとも
印象を持ちました。
ただし、今上陛下が腰を下ろされた椅子という展示があるあたりで
「え、それって、どうして?どうして天皇がここに来るの?」
っていう疑問がはじめて湧いてきました。
で、説明員のような方に聞くと、この建築の由来をはじめて知らされたのです。
ですが、まぁ、そういうのは上の空で聞いている。
しかし2階の「上の間」を見て、衝撃を受けました。
上の写真は、隣接している「次の間」から見たところですが、
書院の雰囲気がなんともいえず、清々しい清涼感に満ちている。
なんですが、よく目をこらすと、その複雑微妙な意匠性に引き込まれる。
使われている木材は、すべて銘木で、縮み木というのだそうですが、
独特の木目模様で誘い込まれるような雰囲気。
その書院からの採光が過不足なく室内を「やわらかく」満たしている様が秀逸。
その光彩と木材の木目のバランスが調和しているのだと伝わってきます。
天井の格天井の羽目板にも、この銘木板目が使用されている。
それと曼荼羅のようなカーペット、漆喰の独特の質感のやわらかさらが、
渾然一体となって、雰囲気を奏でているのです。
建築とは「たたずまい」である、という著名な建築家の言葉がありますが、
そういう雰囲気がそのまま目の前にあるのです。
この書院の銘木、ヤチダモの「縮み」というのだそうですが、
障子越しの光彩に反映する照り返しの質感が軽快さと、重厚感を兼ねたような
そんな雰囲気を醸し出しています。
素材を生かす意匠性に、ちょっと引きずり込まれました次第。
この写真は、正面右手にあった「違い棚」。
書院と床の間、違い棚がこのように配置されているのは、
あんまり見たことがありませんでした。
通常は、違い棚が床の間とがひとつの面を構成するのが一般的ですが、
ここでは、「破」の構成と言うことなのでしょうか?
しかし、書院の幅もゆったりとしていて、
実にバランスがいいものだと感心させられた次第です。
このあたりで、ようやく
この建物の存在価値を説明していただく方の言葉が
耳に聞こえるようになってきて、こちらも次々と質問が出て参ります。
写真は床のカーペット。
どうもこれもどういった由来であるのか、聞いたのですが、
これはお答えいただけませんでした。
しかし、全体の雰囲気の中で、このカーペットも重要なプレーヤーだと思われました。
この主室「上の間」、なによりもその全体の調和感がすばらしい。
広さと、天井の高さ、壁の質感、採光状況、インテリアの造作などなど、
やはりよく考えられた意匠性で迫ってくるものがあります。
「いい雰囲気」というものは、体感するしかないのですが、
まさにそういったものが、伝わってくる思いが致しました。
<明日は、ディテールを紹介します>
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