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日記に…なるかしらん

まぁ……こんなんも、ね。 ラヴクラフト暗黒神話メモ2

2014年10月21日 00時23分40秒 | ホラー映画関係
「クトゥルフ神話」とは
 クトゥルフ神話とは、アメリカで1920~50年代に流行したパルプ・マガジンの小説群を元にした架空の神話体系である。
 ハワード・フィリップス=ラヴクラフトと、友人である作家クラーク・アシュトン=スミス、ロバート=ブロック、ロバート=アーヴィン・ハワード、オーガスト=ダーレスらの作品間での、架空の神々や地名や書物などの固有名詞の貸し借りによって創り上げられた。
 太古に地球を支配していたが現在は地上から姿を消している、強大な力を持つ恐るべき異形のものども(旧支配者)が現代に蘇るというモチーフを主体とする。中でも、旧支配者の一柱であり、彼らの司祭役を務めているともされる、太平洋の深海で眠っているという、タコやイカに似た頭部を持つ軟体動物を巨人にしたような古代神クトゥルフは有名である。
 邪神の名前である「Cthulhu」は、本来人間には発音不能な音を表記したものであり、クトゥルフやクトゥルーなどはあくまで便宜上の読みとされているため、「クトゥルー神話」、「ク・リトル・リトル神話」、「クルウルウ神話」とも呼ばれる。
 この神話体系で用いられた固有の名称は、後の多くの作家たちに引き継がれているが、名称に伴う設定については各作家の自主性に任されている。
 ラヴクラフト本人は自身の作品群や世界観について、1928年に「アーカム・サイクル(アーカム物語群)」と呼んだ後、1930年頃には「クトゥルフその他の神話……戯れに地球上の生物を創造したネクロノミコン中の宇宙的存在にまつわる神話」と書いている。
 「クトゥルフ神話」という用語は、長らくダーレスの考案とされてきた。そのため、「クトゥルフ神話」はダーレスが独自の見解を加え体系化した後の呼称として、ラヴクラフトの作品群のみやその世界観を指す「原神話」や「ラヴクラフト神話」と区別する意味で、「ダーレス神話」と呼ばれることもあった。特に、ダーレスによって持ち込まれたとされている、「旧神」「旧支配者」という善悪二元論的な対立関係に否定的な立場の読者は、「クトゥルフ神話」と「ラヴクラフト神話」とを明確に区別しているが、近年、ラヴクラフトがダーレスの「旧神」設定を生前に自作に取り込んでいた形跡も、新たに指摘されている。

 クトゥルフ神話は多数かつ多様な作品によって構成されており、その源泉を単純に述べることは困難だが、創始者とされるラヴクラフトは、自らが理想とするホラー小説について「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」という概念を提唱している。これは無機質で広漠な宇宙においては人類の価値観や希望には何の価値もなく、ただ意志疎通も理解も拒まれる絶対的他者の恐怖に晒されているのだという不安と孤独感をホラー小説に取り込んだもので、吸血鬼や幽霊などの人間の情念に基づいた恐怖を排除する傾向、宇宙空間や他次元などの現代的な外世界を取り上げるなどの要素がある。ただし、ラヴクラフトの「宇宙的恐怖」にまつわる言説については時折変化があり、気に入ったフレーズとして場当たり的に用いていた可能性もある。また、ラヴクラフトの全ての作品が「宇宙的恐怖」を描いていたわけでもなく、「クトゥルフ神話」を「宇宙的恐怖」という言葉と関係づけて強調したのはむしろ、ラヴクラフトの作品をその死後に刊行したオーガスト=ダーレスである。また、ヒロイック・ファンタジーの文脈を取り入れたロバート=アーヴィン・ハワード、善悪二元論的な作品を描いたオーガスト=ダーレスやブライアン=ラムレイを始めとして、「宇宙的恐怖」以外のテーマを持つ作品も多く存在する。

 一連の小説世界はラヴクラフトとフランク=ベルナップ・ロング、クラーク・アシュトン=スミス、オーガスト=ダーレスらの固有名詞・設定のやり取りによって創始され、彼の死後、ダーレスやリン=カーターらがそれらの設定を整理して「クトゥルフ神話」として体系化していった。ラヴクラフト自身、後期の作品群にはある種の体系化を試みた形跡が見られ、共通した人名、地名、怪物名、書名等が現れ、作品間の時系列的関係にも考慮の跡がみられる。しかし、背景をなす神話世界の全体像に関しては、もっぱら暗示するにとどまっていた。
 ラヴクラフトの愛読者であったダーレスは、独自の解釈に基づいて1925年に『潜伏するもの』などを執筆し、「旧神」が邪悪な旧支配者を封印したとする独自の見解や、旧支配者と四大属性の関連性を匂わせるなどの新たな解釈を行なった。ダーレスは1931年にラヴクラフトに『潜伏するもの』の原稿を送っているが、ラヴクラフトが力作と褒めて彼を激励し、自作『インスマスを覆う影』(1936年)においてその設定を取り込んだ形跡がある。この同時期にラヴクラフトは他の友人へ書き送った手紙の中でもダーレスを高く評価しているため、この激励が年少の友人へのリップサービスというわけでもなかったことが窺われる。その後、ダーレスは自らの解釈に基づく作品を多数発表していくことになるが、他の作家たちもそれぞれ好き勝手な解釈や設定を付け加えていた。なお、ダーレスによると、「クトゥルフ神話」という名称は、神話の基本的な枠組を明らかにした作品がラヴクラフトの『クトゥルフの呼び声』(1928年)であることに基づいており、神名ではなく作品名に由来するものである。
 ダーレスはラヴクラフトの死後に、出版社「アーカム・ハウス」を創設してラヴクラフトの作品を出版する一方、「クトゥルフ神話」体系の普及に努め、他の作家が「クトゥルフ神話」作品を書くように働きかけた。これによってラヴクラフトという作家は広く認知されることとなったが、ダーレスは、ラヴクラフトの文学を後世に伝え広めた最大の貢献者として称賛される一方で、ラヴクラフトのコズミック・ホラーを世俗的な善悪の対立図式に単純化したという理由で死後に批判されることにもなった。 とはいえ、ダーレスの存命中、アーカム・ハウスから刊行された新たな作家によるクトゥルフ神話作品は、必ずしも旧神や四大属性などのダーレスの独自設定に準拠しておらず、ダーレスがその「体系」を強要した形跡は見られない。
 なお、ダーレスはラヴクラフトやスミスの書簡集も刊行したが、クトゥルフ神話については、あくまでも作品として発表された記述にのみ注目していた。だが、書簡の中でのみ言及されている設定や神々の名もあり、最初にそこに注目したのはリン=カーターだった。カーターは、クラーク・アシュトン=スミスがロバート=バーロウ宛ての書簡の中で述べた「ツァトゥグァ」の系図を採用し、作品中に「クグサクスクルス」の名前を導入したりした。今日では、書簡で述べられていた設定も、次々とクトゥルフ神話作品に取り入れられている。
 ラヴクラフトは彼に先行する作家アルジャーノン=ブラックウッド、ロード・ダンセイニ、アーサー=マッケンやエドガー・アラン=ポオなどから強い影響を受けている。今日ではマッケンの『白魔』(1899年)やロバート=W=チェンバースの『黄の印』(1895年)など、ラヴクラフトに先行する作品もクトゥルフ神話体系の一部とみなす見解もある。
 多くの執筆者の手によって諸々の作品が書かれたことや、創始者のラヴクラフトが構想の全貌を体系化することを試みていなかったことから、クトゥルフ神話が誕生した正確な時期を特定することは困難である。「クトゥルフ神話」という名称がラヴクラフトの『クトゥルフの呼び声』に基づいていることから、『クトゥルフの呼び声』が執筆された1926年(または発表された1928年)をクトゥルフ神話誕生の年と見なすことは可能であろう。
 ラヴクラフトが創始したクトゥルフ神話作品の基本パターンは、好事家や物好きな旅行者が偶然に旧支配者にまつわる伝承や遺物に触れ、興味を引かれて謎を探求するうちに真相を探り当てて悲劇的最期を遂げ、それを本人が遺した手記あるいは友人が語るというもので、特定の地名や神名、魔術書などの独特のアイテムが作中にちりばめられる。
 クトゥルフ神話はこうしたアイテムによって定義されているとも言え、小説の素材として多くの作家に利用されてきた。ラヴクラフト以後の作家によって書かれた神話作品は、こうしたラヴクラフトの基本プロットを踏襲して、そこに新たに創作した遺物を付け加えるなどクトゥルフ神話の一部と呼ぶに相応しい本格的なものから、単に旧支配者の神名や召喚の聖句などが作中に出てくるだけのものまで、さまざまに共有・拡張され、神話体系ができあがっている。
 作家たちの想像力を尽くした、この世のものとも思えない異形の旧支配者たちは、怪奇小説ファンのみならず多くの読者を楽しませており、今や怪奇小説ひとつの枠に納まらなくなりつつあり、近年、小説のみならず、マンガやゲームの世界にも神話世界は拡張され続けている。

日本でのクトゥルフ神話
 日本でのクトゥルフ神話の始まりは、雑誌『宝石』1955年9月号に『エーリッヒ=ツァンの音楽』(1922年)の翻訳が掲載されたことであったとされている。ただしラヴクラフトやクトゥルフ神話が広く知れ渡ったのは、1972年の雑誌『 SFマガジン』9月臨時増刊号で、クトゥルフ神話が初めて特集されたことであるとされる。翌1973年の怪奇小説専門誌『幻想と怪奇』第4号(歳月社)で「ラヴクラフト=CTHULHU神話」と題され特集されたことから、1970年代ごろから注目されるようになったと推定できる。
 初めはラヴクラフトの翻訳作品だけだったが、1980年代には日本の小説家によるクトゥルフ神話作品が創作されるようになる。紹介された時期がアメリカで作品の発表された時期よりずっと遅れたせいか、ダーレスによるクトゥルフ神話よりはラヴクラフト作品そのものに近づいている傾向が強い。翻訳されていなかった時期にも、ラヴクラフトの作品自体は江戸川乱歩により紹介はされており、高木彬光の『邪教の神』(1956年)には、ファンタジー要素は一切無いがクトゥルフ神話を想起させる邪教の神が登場しており、これが日本の小説家によって書かれたクトゥルフ神話の最初の作品であるという説もある。
 また、1990年代後半以降の成年向けパソコンゲームの隆盛の中では、ホラーものの定番のモチーフの一つとして用いられ、たびたびクトゥルフ神話の独自解釈、パロディや萌え系作品など様々な要素を含んだ作品が数々生まれた。そうした流れを受けて、今日ではライトノベルやマンガでも同じ傾向の作品が発表されていることで、クトゥルフ神話自体の認知度も高まっている。

クトゥルフ神話の神々と生物
旧支配者(古き神々、古のもの)
 「旧支配者(Great Old Ones)」という呼称自体は、ラヴクラフトの小説『クトゥルフの呼び声』で言及されているものの、ラヴクラフト自身は旧支配者の名前や正体について触れておらず、クトゥルフは「旧支配者(Great Old Ones)の祭司」とされている。後続の作家・研究家による解釈では、この「祭司」という記述を旧支配者の「配下」、あるいは「指導者」とするなどまちまちである。また、ラヴクラフトは『狂気の山脈にて』(1936年)において、「旧支配者(Great Old Ones)」という呼称を「古(いにしえ)のもの」に対して用いている。
 クトゥルフ神話作品においてこのカテゴリに分類されている神々を旧支配者と呼び、「旧神」と対立する邪悪な神々と位置づけたのは後のことであり、ダーレスは旧神を登場させた『潜伏するもの』において、「Great Old Ones」の語を旧神に対して用いている。

 ダーレスによる設定では、旧支配者はそれぞれ、四大元素(火、水、土、風)のいずれかに属し、旧支配者同士の対立も存在する。現在は活動が制限されているが、これは時代の移り変わりによるものとも、旧神との戦いに敗れて封印されたためであるともいわれる。いずれにせよ、その眷属や信者が主である旧支配者の復活を画策しており、仮に旧支配者が復活すれば、人類文明などはあっけなく滅ぼされるとされている。
 これらの神々をまとめて旧支配者と呼んだのはダーレスであり、ラヴクラフト自身はクトゥルフ以外の旧支配者の名はまったく挙げていない。したがって、ラヴクラフトの作品のみに準拠する限り、ヨグ=ソトースやハスターやナイアーラトテップが旧支配者であるという根拠は存在しない。
 なお、英語の「Great Old Ones」という用語は、ラヴクラフトの小説『クトゥルフの呼び声』で言及されている呼称であるが、これを日本語訳で「旧支配者」としたのは、後にダーレスによって創作された「かつては宇宙を支配していたが失権した神々」という設定を踏まえた意訳であり、ラヴクラフトの意図に基づく正確な訳とは言えない面もある。

アザトース(Azathoth)
 ラヴクラフトの小説『闇に囁くもの』(1931年)では「もの凄い原子核の渾沌世界」と描写され、『闇をさまようもの』(1936年)では「万物の王である盲目にして白痴の神」とされている。『魔女の家の夢』(1933年)においては「時空のすべてを支配するという白痴の実体」とされる。居場所に関しては「白痴の魔王アザトースが君臨する、『混沌』という窮極の虚空の暗澹たる螺旋状の渦動」と記されている。『未知なるカダスを夢に求めて』(没後発表1943年)では「果てしなき魔王」と表現されている。
 狂気に満ちた宇宙の真の造物主であり、いかなる形をも持たない無形の黒影、飢えと退屈に悶える白痴の魔王、名状し難くも恐るべき宇宙の原罪そのものとされている。無限の宇宙の中心部で不浄な言葉を吐き出し続けていると形容される。
 暴走するエネルギーの塊で、三次元空間に押し込められるものではないと説かれ、沸騰する混沌が渦巻く最奥に存在する、時を超越した無名の房室で、あたかも玉座に大の字になって寝そべっているような様子で泡立ち、膨張と収縮を繰り返している。アザトースの座する周囲では、心を持たない無形の騒がしい踊り子の群れが常に取り巻いて踊り狂い、太鼓の連打と魔笛の音色で、常に乾いているアザトースの無聊を慰めているという。
 宇宙の全ての「存在」というものはアザトースの思考によって創造され、逆にアザトースを見たものは存在の根底を破壊されると語られている。しかし、アザトース自身が何かをなすことは滅多に無く、神々の使者であるナイアーラトテップが代行者としてその意思を遂行する。今は眠りについているという、かつて地球を支配していた「旧支配者」が復活する時、アザトースもまた無明のレン高原に舞い戻ると予言されている。この神が現れるところは常に創造と破壊の入り混じった爆発的な混沌のみが吹き荒れるため、これを待望する崇拝者はほぼ存在しない。火星と木星の間にある小惑星帯(アステロイドベルト)は、以前そこにあった星が、召喚されたアザトースによって破壊されたなれの果てであるという。
 また、ラヴクラフトは1933年4月に友人に宛てて記した書簡において、アザトースが自身の魂魄にして使者でもある「這いよる混沌」ナイアーラトテップを生み、さらにはクトゥルフ神話体系における最高神「ヨグ=ソトース」を生んだという神「無名の霧(Nameless Mist)」や、ヨグ=ソトースの妻であるという「豊穣の女神」シュブ=ニグラスを生んだという神「闇(The Darkness)」を生んだと語っている。

クトゥルフ(Cthulhu)
 太古に、外宇宙から地球に飛来した侵略者。先に地球を支配していた「古のもの(樽型人)」たちは防ぎきれず、戦争を経て最終的には講和を結び、南太平洋の大陸をクトゥルフ達に譲り、クトゥルフは陸を支配するようになる。ルルイエの都が海に沈み、クトゥルフは眠りにつく。残されたクトゥルフの種族たちは、「善神クトゥルフが、宇宙の魔物のしわざで封印された」と伝承していく。
 ダーレスが体系づけたクトゥルフ神話(特に四大霊を唱える派)においては、旧支配者の一柱で「水」を象徴し、「風」の象徴であるハスターとは対立するものとされた。
 「旧支配者の大祭司」とされるが、『ダンウィッチの怪』(1929年)で引用される『ネクロノミコン』の記述によるとクトゥルフは旧支配者を崇拝する者たちの中の神官にすぎず、旧支配者特にヨグ=ソトースなどには及ばない存在とされる。

ダゴン(Dagon)
 水棲種族。身長6メートル以上、よどんだ両目は突出し、分厚くたるんだ唇と水かきのついた手足を持つ2足歩行をする半魚人と言われる。ダゴンを小型化し人間大にしたものが、「深きものども」である。ダゴンは「深きものどもの指導者」兼「旧支配者クトゥルフに仕える従属神」と位置づけられる。
 ダゴンの初出はラヴクラフトの短編『ダゴン』(1919年)で、後に『インスマウスの影』(1936年)でダゴンを小さくしたような深きものどもが登場する。深きものどもは、地上の人間と混血し、ダゴン秘密教団を組織している。
 「ダゴン」という名称は、旧約聖書でペリシテ人が崇拝していた「ダゴン神」に由来する。ペリシテはイスラエルの敵であり、ダゴン神はユダヤ教からの視点では異教の神(悪神・悪魔)である。『インスマウスの影』作中でも、ダゴンはアスタロト・ベリアル・ベルゼブブなどキリスト教の悪魔たちに並んで呼ばれている。

ガタノゾーア(Ghatanothoa)
 旧支配者。石化の能力を持つという特徴がある。初出はヘイゼル=ヒールドとラヴクラフトの合作『永劫より』(1935年)。
 そのおぞましい容姿は、人間が目にすると、脳を生かされたままで全身が石と化す。とある手段で姿を垣間見た者は、「巨大で、触腕があり、象のような長い鼻が備わり、蛸の目を持ち、なかば不定形で、可塑性があり、鱗と皺に覆われている」と表現している。
 ガタノゾーアの伝説は『無名祭祀書』に記される。ユゴス星の民がガタノゾーアを地球に連れて来たという。ユゴス星人が姿を消してからも、邪神ガタノトーアはムー大陸の聖地クナアのヤディス=ゴー山の要塞地下にいる。
 ムー大陸が沈んだ後の消息は不明。だが信仰の名残が、ムーが存在した太平洋地域を中心に世界中で見られる。ヨーロッパの妖術にも関係し、キリスト教勢力によって徹底的に破壊されたが、邪教団の根絶には至っていない。

ナイアルラトホテップ(Nyarlathotep)
 初出はラヴクラフトの散文詩風短編小説『ナイアルラトホテップ』(1920年)。古代エジプトのファラオのような「背の高い浅黒い男」と表現されている。旧支配者の一柱にして、アザトースを筆頭とする外なる神に使役される使者でありながら、アザトースと同等の力を有する土の精であり、人間はもとより他の旧支配者たちをもさげすんでいる。「這い寄る混沌」の異名をもつ。
 顔がない故に千もの異なる顕現を持ち、特定の眷属を持たず、狂気と混乱をもたらすために自ら暗躍する。彼が与える様々な魔術や秘法、機械などを受け取った人間は大概破滅している。天敵であり唯一恐れるものは火の精と位置づけられる旧支配者クトゥグアのみ。また旧神ノーデンスとも対立している。
 旧支配者の中で唯一幽閉を免れ、他の旧支配者と違い自ら人間と接触するなど、クトゥルフ神話において特異な地位を占める神であり、クトゥルフ神話におけるトリックスターとも言える。アザトースの息子とも言われる。
 ラヴクラフトの手紙によると、この宇宙の中心、正常な物理法則が通用しない混沌とした世界には、絶対的な力をもった存在アザトースが存在したが、アザトースは盲目で白痴なので、自らの分身として「闇」と「無名の霧」と「ナイアルラトホテップ」を生んだ。ナイアルラトホテップは自らの主人であり創造主であるアザトースら異形の神々に仕え、知性をもたない主人の代行者としてその意思を具現化するべくあらゆる時空に出没する。
 ラヴクラフトの短編『未知なるカダスを夢に求めて』では、簡単にひねり潰せるはずの人間を騙して自滅に追いやろうとするなどトリックスター的な役割を担っている。

ヨグ=ソトホース(Yog-Sothoth)
 「外なる神(The Outer GODS)」で、旧支配者とは別格の神々。
 「存在」ではなく「空虚(void)」とも表現される。時空の制限を一切受けない最強の神。この神性は過去・現在・未来、全存在(旧支配者さえ)をも含有しており、かつあらゆる時間・空間と共に存在している。ラヴクラフトの『銀の鍵の門を越えて』(1934年)では、ヨグ=ソトースに関して「始まりも終わりもない。」とされ、「かつてあり、いまあり、将来あると人間が考えるものはすべて、同時に存在するのだ。」とされている。

ノーデンス(Nodens)
 「旧神(Elder Gods)」の一柱。実在するケルト神話の神をモデルにしているが、別個のキャラクターと化している。「偉大なる深淵の主(Lord of the Great Abyss)」とも「大帝」とも呼ばれる。
 初登場作品は、『霧の高みの不思議な家』(1931年)。マサチューセッツ州の港町キングスポートには、「偉大なる深淵」という異界につながる館があり、ノーデンスが訪れる。ノーデンスは白髪と灰色の髭をもつ老人の姿をしており、イルカの引く巨大な貝殻チャリオットに騎乗する、海の神のような性格を持つ。
 『未知なるカダスを夢に求めて』では、ドリームランドの地下に広がる暗黒世界「偉大なる深淵」を治めている。ドリームランドでは神族の秘密を探ることはタブーとされており、禁忌を冒そうとする不埒者を、ノーデンスは夜鬼を使役して妨害する。それさえなければ、人間族に対しては比較的好意的な神である。ナイアルラトホテップとはライバル関係にあり、両者は異なる思惑を以て神族を保護している。この作品では救世主的な役回りでノーデンスが登場している。

ショゴス(Shoggoth)
 ラヴクラフトの連詩『ユゴス星より』(1930年)で名前のみ言及され、物語への初出は『狂気の山脈にて』(1936年)である。
 太古の地球に飛来した宇宙生物「古のもの」によって創造された漆黒の玉虫色に光る粘液状生物で、表面に無数の目が浮いている。不定形で決まった姿を持たず、非常に高い可塑性と延性を持ち、必要に応じて自在に形態を変化させ、さまざまな器官を発生させることができる。タールでできたアメーバのようだと表現される。体長約4mと説明されているものの、中には地下鉄の車両ほどに大きなサイズの個体も登場する。水中で活動するように作られたため、地上では動きが鈍くなる。呪文やテレパシーで操ることが可能だが、比較的知性が高く、従順でないため危険な生物である。南極圏における「古のもの」の奉仕種族として巨大都市・狂気山脈の建設などに使役された。
 「テケリ・リ、テケリ・リ(Tekeli-li, Tekeli-li)」という独特の鳴き声をあげる。これはエドガー・アラン=ポオの『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』(1838年)に登場した鳥の鳴き声をモデルとしたものであり、もとは、「古のもの」の出す音をショゴスたちが真似て声帯器官を発達させたもの。
 ラヴクラフトの『インスマウスの影』では「深きものども」がショゴスを使役しているらしいことが仄めかされる。

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