どんも~こんばんは、そうだいでございます。今日は久しぶりに一日中の雨となりましたね。みなさんは良い休日を送ることができましたでしょうか。
私の身のまわりは、この3連休に入ってやっと落ち着きを取り戻してきたような気がします。いちばんわかりやすいのは、コンビニの食べ物コーナーね! ようやく、からっぴっぴになっている時間が減り始めてきました。
結果として連休中は計画停電もついに実施されることはなく、私のお店も、看板灯や店内の照明の一部がついていないことをのぞけば、いつも通りの休日らしい感じになりました。
ただ、依然として福島の原発は未曽有の危機のまっただ中にあるし、余震も少なくなったとはいえゼロになることはまだないし、計画停電は週明けから再開されるだろうし。いまだに被災地も予断を許さない状況のままですし、「日常が戻ってきた!」と気を抜くことができるのはまだまだ先のことのようです。
と思ったらねぇ、最近あったかかったり寒かったりと気温の上下がはげしすぎたせいか、この非常時に職場でインフルエンザにかかったスタッフが出てきちゃいまして。今ですか!? 人手不足でもうタイヘンですよ。こういうときは、なおさら体調管理に気をつけないと!
……と言っておきながら、かくいう私も、病気にかかる気配は幸いにしてないものの、意味不明な長距離徒歩を決行してみずからの両足のひらをムチャクチャにするていたらく。なぜ自分からすすんでケガをする!? バカなのねぇ~、どMなのねぇ~。
問題の「雑色~桜木町ツアー」は19日の土曜日にやらかしまして、翌20日、職場で私は、常にお能のようなスロースピードで仕事をする気味の悪い店員になっていました。なんだよ、そのけだるい動き! 有閑マダムかお前は。
でもねぇ、感謝すべきは健康なこの身体! 「よく食べてよく眠る」という『カリ城ルパン』式治療法を実践したところ、本日21日にはふつうに歩いていて痛くないくらいまでに回復しました。人間のからだって素晴らしい! 昨日はもう、一歩一歩あるくごとに「やるんじゃなかった! やるんじゃなかった!」って思ってましたからね。
そして、今日になってからの筋肉痛スタート。運動の2日後って……私も立派なおっさんです。ムリももうできねぇかもなぁ。
ただ、今回も知らない街を3時間歩いてみて楽しんだ部分は多くありました。さまざまな場所で見慣れない風景に出会うことができたのはいい収穫だったのですが、さすがに2~30台の車やバイクがズラズラっとならんでいるガソリンスタンドを3~4回見かけたのにはゲンナリしてしまいました。あれ、何時間待ちなんだろう……大変な世の中ですよ。
さて今回は、その19日、自分で勝手に呼び込んだ惨劇の果てにたどり着いた桜木町で観た映画『英国王のスピーチ』のことでもつづりたいと思います。
いやー、良かったね。なにが良かったって、まず映画館が良かった!
私が行ったのは、JR桜木町のすぐ隣にある複合ビルの中にあったシネコン「横浜ブルク13」。その名の通り、ビルの2階分(6階と、そこからのぼる専用の8階)に13ものスクリーンを擁している堂々たる施設でした。
もう、ビルの中とは思えないほどのゆったりした広々スペースでねぇ。文字通り足を引きずってやってきた流れ者の私をやさしく受け入れてくれました。横浜人じゃない私にもこんなにしてくれるなんて……
私がやって来たのは夜の8時ちょいすぎで、観たい『英国王のスピーチ』の上映開始は9時20分。1時間半ちかくもの空きをどうしようかと思っていたのですが、休むのに最適な待合い空間がちゃんとある! しかも、ただソファをならべてるってだけじゃなくて、微妙に柱をおいたりして入り組んだ構造になってるので、人目も気にせず隠れて居眠りすることが可能!! 最高だ……
この待ち時間、ラズベリーのフランボワーズソルベを食べてうとうとしていた幸せといったらありませんでしたよ。あやうく『英国王のスピーチ』をみのがすところだったからね。しかし、はっと時間に気づいて立ち上がると、両足の激痛からたちまち過酷な現実に引き戻されてしまう哀しさよ。スクリーンまでの通路が遠い遠い!
さて、そんなこんなで観た『英国王のスピーチ』だったのですが……
まずは、やっぱりおもしろかった! これはもう、揺らぐことのない事実でした。
とにかく役者さんが軒並み、信頼の演技力なのね。うまいと言うのもバカバカしくなるくらいにうまいんです。観る前に出演者の名前を見て、「主人公・ジョージ6世の王妃エリザベス役にヘレナ・ボナム=カーター」というところだけなんとなく浮いているように見受けたのですが、この作品でのヘレナさんは、抑えめながらもチャーミングな存在感で夫をささえる女性を好演していてとても良かったです。しかし、ヘレナさんも40代なかば……若干、大竹しのぶさんに見えなくもないショットも各所でチラホラしてきました。
いちおう、この映画のヒロインと言える方はヘレナさん演じるエリザベス王妃(現在の英国王・エリザベス2世の母)くらいで、この『英国王のスピーチ』は、おもしろいくらいにガキンチョかおっさん、おばさんしか出てこない映画です。
これはもう、主人公のアルバート王子(ジョージ6世)をとりまく当時のイギリス王室や政界がそうだったから、と言うだけなのかもしれませんが、登場人物がやたら年をくった方だけなのね! しかも、みなさんそれなりの教養と品格を持ったひとかどの人物ばかりなのですが、誰からもフレッシュさが感じられない。けなしているわけでなく、ほんとにそうなの! 「ああ、今、私は重厚なドラマを観ているんだなぁ。」ということはひしひしと感じられるのですが、ハリウッド映画のような華やかさは徹頭徹尾ありません。
物語も、第2次世界大戦直前という非常にきな臭い時代であるのにも関わらず、戦争を直接えがく激しいシーンは皆無で、自身の吃音症に悩むアルバート王子とその治療にあたる言語聴覚士のライオネル・ローグ、そしてその周辺の群像をひたすら淡々と描くことに専念しています。
脚本は、「アルバートとライオネルの治療トレーニング」、「アルバートの父・ジョージ5世の崩御」、「アルバートの兄王・エドワード8世の即位と退位」、「せまり来る第2次世界大戦の足音」、そしてクライマックスの「吃音を克服したジョージ6世のラジオ演説」といった多くの話題を、やりすぎかと思えるくらいにわかりやすく2時間にまとめあげています。これはアカデミー脚本賞もとるわ。
私が「やりすぎ」と言ったのは、話をわかりやすくしたために、いささかキャラクターとしての色が単色になりマンガみたいに薄っぺらい印象になってしまった登場人物が少なからずいた、という意味でです。
それでも、イギリス人以外の人々にとってはちょっとマイナーだった1930年代のイギリス王室事情が、『英国王のスピーチ』によって広く関心を持たれるようになったのは素晴らしいことだと思います。
そういった意味でも、この『英国王のスピーチ』はあくまでも「入門編」といった感じで、これに対する「応用編」や「反論」といったかたちで、おやじのジョージ5世が主人公の映画とか、『英国王のスピーチ』ではただの放蕩ドラ息子のイメージしかなかった兄貴・エドワード8世が主人公の映画なんかが出てきたら、おもしろいんじゃないですかねぇ。ヒットは……しないかなぁ。エドワードはジュード・ロウなんかがやったら、ええんちゃう? 今回のガイ・ピアースさんは損な役回りでしたね!
前回も言ったんですが、私がこの映画を観て泣いちゃったのは、やっぱり最後に持ってこられたジョージ6世の「玉音放送」シーンだったんですね。
まずはやっぱり、演説をするコリン・ファースの名演と、それをサポートするライオネル役のジェフリー・ラッシュ(世界一イギリスの時代劇が似合う役者さん)のいぶし銀の表情が何をさておいても良かったわけなんですが、それにあわせて、「第2次世界大戦」という史上最悪の国難に直面することになったイギリス連邦全国民に向かって語りかけるという流れがいいんだなぁ! ジョージ6世の吃音の克服と王としての勇気ある行動が、ダブルで心を揺さぶるんだなぁ。
特に、というか、泣いちゃったほとんどの理由はここにあるんですが、今現在、私のいる日本も世界中が注目している史上最悪になるかもしれない国難のまっただ中にあるわけで、今の日本と当時のイギリスとが私の中で勝手にガチコーンとシンクロしてしまったんですね。
そんなこんなでえらく感動してしまったわけなんですが、もしも今回の東日本大震災が起きていなかったとしたら、私はこの『英国王のスピーチ』をどう観ていたんでしょうかね。もしかしたら、「シブいけど……ただうまくスピーチできたってだけでしょ?」くらいにしか思っていなかったのかも。うむむ、平和って、なんなんだろうか!?
結論から言いますと、『英国王のスピーチ』は、今だからこそ日本人が観ておくべき映画なんじゃないかと思います。激シブながらも、それゆえに保証された作品の質の高さは確かなもの。特におっさん、おばさん好きな方にはたまらないひとときを提供することはうけ合いの名作です。
ただ! 国王たる人間がスラングを連発する、幼少期の苦い思い出を告白するといった衝撃の内容はあるものの、全体的には非常にオーソドックスで静かな作品になっています。アカデミー賞を作品賞など4部門で獲得するということは充分に納得できる水準ではあるものの、10年後にも語り草となる伝説の域に達するものなのかどうかは……ちと疑問。
この作品を若干38歳で撮りきったトム・フーパー監督の手腕は大したものですが、作り方が明解すぎて、ところどころで強調される「イギリス人によるオーストラリア人差別問題」くらいにしか監督独自の視点が感じられないような気がしました(フーパー監督はイギリス人とオーストラリア人のハーフ)。
まぁとにかく、観ている側がどのくらいアルバート王子の苦悩に共感できるかで、おもしろいかつまんないかも決まってくるかと!
あとね、忘れちゃいけないのは、この映画が「フィクションとしてよくできた作品」であるということですね。
例えば、アルバート王子の吃音症の病状と治療の様子はどうやら『英国王のスピーチ』ほどドラマチックなものではなかったらしいですし、感動のスピーチの直後もイギリスはすぐにナチス・ドイツに全面戦争をしかけたわけではなく、映画のようには単純にいかない両国の複雑な事情もあって、半年以上おもだった戦闘を起こさない、いわゆる「まやかし戦争(奇妙な戦争)」というモヤモヤした時期に入っていました。イギリスらしいっちゃあイギリスらしいんですが、あの感動はなんだったのよ?
でも、実は序盤、霧のロンドンとシルクハットの英国紳士が出てきた時点で、私の自己採点チャートはすでに「88点」くらいになってたりして……結局、ヴィクトリア朝のかおりが好きってだけなんじゃ!? さすがにシャーロック・ホームズは出てこなかったけど。
『英国王のスピーチ』、おすすめでございます。イケメンだ腐女子だ3Dだという昨今に飽き飽きしておられる方は、ぜひ!
飲み物でたとえたら、まさにアールグレイティーかヘルシア緑茶といった一品でございます~。
私の身のまわりは、この3連休に入ってやっと落ち着きを取り戻してきたような気がします。いちばんわかりやすいのは、コンビニの食べ物コーナーね! ようやく、からっぴっぴになっている時間が減り始めてきました。
結果として連休中は計画停電もついに実施されることはなく、私のお店も、看板灯や店内の照明の一部がついていないことをのぞけば、いつも通りの休日らしい感じになりました。
ただ、依然として福島の原発は未曽有の危機のまっただ中にあるし、余震も少なくなったとはいえゼロになることはまだないし、計画停電は週明けから再開されるだろうし。いまだに被災地も予断を許さない状況のままですし、「日常が戻ってきた!」と気を抜くことができるのはまだまだ先のことのようです。
と思ったらねぇ、最近あったかかったり寒かったりと気温の上下がはげしすぎたせいか、この非常時に職場でインフルエンザにかかったスタッフが出てきちゃいまして。今ですか!? 人手不足でもうタイヘンですよ。こういうときは、なおさら体調管理に気をつけないと!
……と言っておきながら、かくいう私も、病気にかかる気配は幸いにしてないものの、意味不明な長距離徒歩を決行してみずからの両足のひらをムチャクチャにするていたらく。なぜ自分からすすんでケガをする!? バカなのねぇ~、どMなのねぇ~。
問題の「雑色~桜木町ツアー」は19日の土曜日にやらかしまして、翌20日、職場で私は、常にお能のようなスロースピードで仕事をする気味の悪い店員になっていました。なんだよ、そのけだるい動き! 有閑マダムかお前は。
でもねぇ、感謝すべきは健康なこの身体! 「よく食べてよく眠る」という『カリ城ルパン』式治療法を実践したところ、本日21日にはふつうに歩いていて痛くないくらいまでに回復しました。人間のからだって素晴らしい! 昨日はもう、一歩一歩あるくごとに「やるんじゃなかった! やるんじゃなかった!」って思ってましたからね。
そして、今日になってからの筋肉痛スタート。運動の2日後って……私も立派なおっさんです。ムリももうできねぇかもなぁ。
ただ、今回も知らない街を3時間歩いてみて楽しんだ部分は多くありました。さまざまな場所で見慣れない風景に出会うことができたのはいい収穫だったのですが、さすがに2~30台の車やバイクがズラズラっとならんでいるガソリンスタンドを3~4回見かけたのにはゲンナリしてしまいました。あれ、何時間待ちなんだろう……大変な世の中ですよ。
さて今回は、その19日、自分で勝手に呼び込んだ惨劇の果てにたどり着いた桜木町で観た映画『英国王のスピーチ』のことでもつづりたいと思います。
いやー、良かったね。なにが良かったって、まず映画館が良かった!
私が行ったのは、JR桜木町のすぐ隣にある複合ビルの中にあったシネコン「横浜ブルク13」。その名の通り、ビルの2階分(6階と、そこからのぼる専用の8階)に13ものスクリーンを擁している堂々たる施設でした。
もう、ビルの中とは思えないほどのゆったりした広々スペースでねぇ。文字通り足を引きずってやってきた流れ者の私をやさしく受け入れてくれました。横浜人じゃない私にもこんなにしてくれるなんて……
私がやって来たのは夜の8時ちょいすぎで、観たい『英国王のスピーチ』の上映開始は9時20分。1時間半ちかくもの空きをどうしようかと思っていたのですが、休むのに最適な待合い空間がちゃんとある! しかも、ただソファをならべてるってだけじゃなくて、微妙に柱をおいたりして入り組んだ構造になってるので、人目も気にせず隠れて居眠りすることが可能!! 最高だ……
この待ち時間、ラズベリーのフランボワーズソルベを食べてうとうとしていた幸せといったらありませんでしたよ。あやうく『英国王のスピーチ』をみのがすところだったからね。しかし、はっと時間に気づいて立ち上がると、両足の激痛からたちまち過酷な現実に引き戻されてしまう哀しさよ。スクリーンまでの通路が遠い遠い!
さて、そんなこんなで観た『英国王のスピーチ』だったのですが……
まずは、やっぱりおもしろかった! これはもう、揺らぐことのない事実でした。
とにかく役者さんが軒並み、信頼の演技力なのね。うまいと言うのもバカバカしくなるくらいにうまいんです。観る前に出演者の名前を見て、「主人公・ジョージ6世の王妃エリザベス役にヘレナ・ボナム=カーター」というところだけなんとなく浮いているように見受けたのですが、この作品でのヘレナさんは、抑えめながらもチャーミングな存在感で夫をささえる女性を好演していてとても良かったです。しかし、ヘレナさんも40代なかば……若干、大竹しのぶさんに見えなくもないショットも各所でチラホラしてきました。
いちおう、この映画のヒロインと言える方はヘレナさん演じるエリザベス王妃(現在の英国王・エリザベス2世の母)くらいで、この『英国王のスピーチ』は、おもしろいくらいにガキンチョかおっさん、おばさんしか出てこない映画です。
これはもう、主人公のアルバート王子(ジョージ6世)をとりまく当時のイギリス王室や政界がそうだったから、と言うだけなのかもしれませんが、登場人物がやたら年をくった方だけなのね! しかも、みなさんそれなりの教養と品格を持ったひとかどの人物ばかりなのですが、誰からもフレッシュさが感じられない。けなしているわけでなく、ほんとにそうなの! 「ああ、今、私は重厚なドラマを観ているんだなぁ。」ということはひしひしと感じられるのですが、ハリウッド映画のような華やかさは徹頭徹尾ありません。
物語も、第2次世界大戦直前という非常にきな臭い時代であるのにも関わらず、戦争を直接えがく激しいシーンは皆無で、自身の吃音症に悩むアルバート王子とその治療にあたる言語聴覚士のライオネル・ローグ、そしてその周辺の群像をひたすら淡々と描くことに専念しています。
脚本は、「アルバートとライオネルの治療トレーニング」、「アルバートの父・ジョージ5世の崩御」、「アルバートの兄王・エドワード8世の即位と退位」、「せまり来る第2次世界大戦の足音」、そしてクライマックスの「吃音を克服したジョージ6世のラジオ演説」といった多くの話題を、やりすぎかと思えるくらいにわかりやすく2時間にまとめあげています。これはアカデミー脚本賞もとるわ。
私が「やりすぎ」と言ったのは、話をわかりやすくしたために、いささかキャラクターとしての色が単色になりマンガみたいに薄っぺらい印象になってしまった登場人物が少なからずいた、という意味でです。
それでも、イギリス人以外の人々にとってはちょっとマイナーだった1930年代のイギリス王室事情が、『英国王のスピーチ』によって広く関心を持たれるようになったのは素晴らしいことだと思います。
そういった意味でも、この『英国王のスピーチ』はあくまでも「入門編」といった感じで、これに対する「応用編」や「反論」といったかたちで、おやじのジョージ5世が主人公の映画とか、『英国王のスピーチ』ではただの放蕩ドラ息子のイメージしかなかった兄貴・エドワード8世が主人公の映画なんかが出てきたら、おもしろいんじゃないですかねぇ。ヒットは……しないかなぁ。エドワードはジュード・ロウなんかがやったら、ええんちゃう? 今回のガイ・ピアースさんは損な役回りでしたね!
前回も言ったんですが、私がこの映画を観て泣いちゃったのは、やっぱり最後に持ってこられたジョージ6世の「玉音放送」シーンだったんですね。
まずはやっぱり、演説をするコリン・ファースの名演と、それをサポートするライオネル役のジェフリー・ラッシュ(世界一イギリスの時代劇が似合う役者さん)のいぶし銀の表情が何をさておいても良かったわけなんですが、それにあわせて、「第2次世界大戦」という史上最悪の国難に直面することになったイギリス連邦全国民に向かって語りかけるという流れがいいんだなぁ! ジョージ6世の吃音の克服と王としての勇気ある行動が、ダブルで心を揺さぶるんだなぁ。
特に、というか、泣いちゃったほとんどの理由はここにあるんですが、今現在、私のいる日本も世界中が注目している史上最悪になるかもしれない国難のまっただ中にあるわけで、今の日本と当時のイギリスとが私の中で勝手にガチコーンとシンクロしてしまったんですね。
そんなこんなでえらく感動してしまったわけなんですが、もしも今回の東日本大震災が起きていなかったとしたら、私はこの『英国王のスピーチ』をどう観ていたんでしょうかね。もしかしたら、「シブいけど……ただうまくスピーチできたってだけでしょ?」くらいにしか思っていなかったのかも。うむむ、平和って、なんなんだろうか!?
結論から言いますと、『英国王のスピーチ』は、今だからこそ日本人が観ておくべき映画なんじゃないかと思います。激シブながらも、それゆえに保証された作品の質の高さは確かなもの。特におっさん、おばさん好きな方にはたまらないひとときを提供することはうけ合いの名作です。
ただ! 国王たる人間がスラングを連発する、幼少期の苦い思い出を告白するといった衝撃の内容はあるものの、全体的には非常にオーソドックスで静かな作品になっています。アカデミー賞を作品賞など4部門で獲得するということは充分に納得できる水準ではあるものの、10年後にも語り草となる伝説の域に達するものなのかどうかは……ちと疑問。
この作品を若干38歳で撮りきったトム・フーパー監督の手腕は大したものですが、作り方が明解すぎて、ところどころで強調される「イギリス人によるオーストラリア人差別問題」くらいにしか監督独自の視点が感じられないような気がしました(フーパー監督はイギリス人とオーストラリア人のハーフ)。
まぁとにかく、観ている側がどのくらいアルバート王子の苦悩に共感できるかで、おもしろいかつまんないかも決まってくるかと!
あとね、忘れちゃいけないのは、この映画が「フィクションとしてよくできた作品」であるということですね。
例えば、アルバート王子の吃音症の病状と治療の様子はどうやら『英国王のスピーチ』ほどドラマチックなものではなかったらしいですし、感動のスピーチの直後もイギリスはすぐにナチス・ドイツに全面戦争をしかけたわけではなく、映画のようには単純にいかない両国の複雑な事情もあって、半年以上おもだった戦闘を起こさない、いわゆる「まやかし戦争(奇妙な戦争)」というモヤモヤした時期に入っていました。イギリスらしいっちゃあイギリスらしいんですが、あの感動はなんだったのよ?
でも、実は序盤、霧のロンドンとシルクハットの英国紳士が出てきた時点で、私の自己採点チャートはすでに「88点」くらいになってたりして……結局、ヴィクトリア朝のかおりが好きってだけなんじゃ!? さすがにシャーロック・ホームズは出てこなかったけど。
『英国王のスピーチ』、おすすめでございます。イケメンだ腐女子だ3Dだという昨今に飽き飽きしておられる方は、ぜひ!
飲み物でたとえたら、まさにアールグレイティーかヘルシア緑茶といった一品でございます~。