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「スパコンとは何か?」 金田康正 ウエッジ選書

2012年06月25日 09時00分00秒 | 雷日記
こんにちは、落雷抑制システムズの松本です。

若かりし頃、スパコンの開発チームの一員であった事がありました。米国への最初の長期出張もこの仕事でした。この本の著者の金田先生はも若い頃からスパコンに携われ、その関連でお会いした頃は、確か名古屋大学の助手をされていたかと記憶していす。私の携わったスパコンは、世界初のベクトル型でして16台の演算器が、16の別々のデータに対し一つの命令を実行するものでした。例えば、人間の属性を【身長、体重、胸囲、腰回り、靴のサイズ・・・・】など16種類のデータで表した場合、各データは独立していますから、同時に扱う事は問題ありません。100万人の平均値を取る場合、例えば、身長を100万人分足し算することが必要ですが、演算器が一つでしたら合計で1600(16x 100)万回の足し算が必要になりますが、演算器が16あるので、100万回の足し算で済むと言う代物でした。

ハードウェアは完成したのですが、プログラムの中から並列演算が可能な部分を見つけ出して、並列演算へと書き換えるソフトの開発に失敗し、この世界初の並列計算機プロジェクトはお蔵入りになってしまいました。しかし、30年以上のハードウェアの進歩は、体育館にやっと入れる位のこの巨大な並列計算機よりも優れた性能になって私の机の上に乗っています。これで、メールとかワード、パワポ位しか使わないのは本当にもったいないことです。30年以上も前には、日本の大企業にしかなかったような大型コンピュータと同等以上の性能を有するPCが何処の家庭にも転がっています。また、家電製品や車の部品としてのPCまで加えたら、一軒の家庭の所有するPCの数は3ケタになります。スゴイ社会になったものです。しかし、PCの数が増えても人はすこしも賢くなってはいませんね。

以前、「2位ではダメなんですか?」で不評を買ったスパコンの事業仕分けですが、あの仕分けチームの中に、金田先生もおられて、日本のスパコンの生き字引のような方が、なぜ世界一を目指さないのか?と最初は単純に思いましたが、金田先生の真意は、ハードだけで世界一を競うよりも、2位でも良いからスパコンの台数を増やし、利用技術を普及させるべきであると言う事であったかと思います。スパコンは、単に演算速度が速ければそれで良しというものではないのです。スパコンの利用は主として自然現象のシュミレーションですから、自然現象をどのような数学モデルで表すか、それをどのように計算するかなど、ソフトが大事で単純に四則演算の速度だけでは性能に優劣はつきません。

しかし事業仕訳では、マスコミやノーベル賞学者の方々からも強烈な文句を食らいました。運転初心者にいきなりレーシング・カーを与えるよりは、少し性能が落ちてもスポーツ・カーの台数を増やして、沢山の初心者に運転技術を向上させるべきという真意が伝えられずに、面白おかしくマスコミに取り上げられる様子を見ていまして、真意を伝える事の難しさを感じました。マスコミは、真実を伝えようとする努力よりはネジ曲げて興味本位で面白おかしく伝え、殆どの人はマスコミに操作された情報をそのまま受け取ってしまいます。恐るべきマスコミです。

スパコンの性能順位は毎年の変動が激しく、昨年は世界一であった日本の「京」コンピュータもIBMの「セコイア」に抜かれて今年は第二位になってしまいました。この本、注文して未だ手元に届かないのですが、楽しみです。

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