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「船舶と無線システム」 RFワールド  CQ出版

2013年08月19日 09時00分00秒 | 雷日記
こんにちは、落雷抑制システムズの松本です。

タイトルのように船舶で使用されている無線システムについて解説した技術書なのですが、第1章から第8章まで鳥羽商船高等専門学校の鈴木治準教授による、架空のコンテナ船【RFワールド号】での船内の日常生活から新人で配属された【信長君】の体験などを通して、大型船の中でどの様な機器がどの様に使われているのか分かり易い解説です。

大型船に乗って航海してみたいと思いながら実体験が無い私には技術解説というより小説のように面白くドンドンと引き込まれながら読み入ってしまいました。大型航空機から航空機関士がいなくなったように船の世界でも専門の無線通信士はもういないのですね。企業での合理化とか人員削減だけでなく、「ゆりかもめ」のような無人運転とか地下鉄も車掌さんのいない運転手だけの線もあるように交通機関でも確実に人員削減が進んでいます。昔の船の映画では必ず出てきたのがモールス信号を扱う通信士や船の遭難を知らせるSOSです。これらは余りに有名ですが、実態はといえば船舶の遭難に必死になってSOSを打電する風景はもう無いのです。船が沈没すれば、船外に取り付けられているブイからその船のID等を発信し、その電波を受けた衛星が付近の位置情報を自動的に中継する仕組みがあるのです。

ある護衛艦でブリッジ付近の外に設置してある救難ブイを見ましたが、破壊責任者の階級/氏名が記されていました。護衛艦は軍艦ですから、もし、全員が退艦という事態になれば機密書類、暗号書など敵の手に渡ってはマズイものは退艦する前に破壊しますが、救難ブイモその一つのようで、何時何分、どこで、その護衛艦が沈んだなどという情報が発信される前に自分で破壊するのでしょうが、それでは助けも呼べずに、一体このブイは何のために付けているのでしょう? ということになりますが、民間の船舶であれば遭難信号は全て自動で発信されるようです。

この本には、自動車運搬船で一等航海士として働く女性が船内の様子や一等航海士の仕事を紹介しています。日本の船会社さんも米国海軍並みに開かれた職場を提供しているのですね。飛行機にはトランスポンダーという自分のIDなどを発信して、相手のレーダーに自分のIDを表示する装置を備えていますが、船舶にもAISという船名、速度、進路などの情報を発信し付近の船舶の表示装置ではレーダーとは別に付近の船舶の状況が分かるそうです。船舶の無線システムは、航法用装置【レーダ、ロランなど】、天気図を受信するFAX救、難信号用、業務用通信、インターネット接続など多彩な無線機器を備えています。

今までは、船の底の方にあるエンジン制御室をブリッジからは直接制御はできなかったのですが、これらは船内ネットワークでブリッジから制御できるようになりつつあるようです。将来、発生しうるのは海賊が船に乗り込まなくても、外部のネットワ-クから船の制御を乗っ取ってしまう「ネット海賊」でしょうね。これは既に映画「スピード」で使われた題材ですが、外部と繋がって便利になればその代償もありますから手放しでは喜べませんが、船舶はただ走るだけでなく、その安全を支えるために大型船の中にこれだけ沢山の無線システムがあるのは面白い事です。

こんなに面白い内容なのですが、この本は工学書の無線関係の売場に置いてあるので余り人の目に触れることもなく、とてもベストセラーにはならないでしょうね。残念!

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