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レアメタルの太平洋戦争  藤井非三四 学研パブリッシング

2013年08月07日 09時00分00秒 | 雷日記
こんにちは、落雷抑制システムズの松本です。

レアアースと聞けば、産出国である中国による輸出規制など話題になり、ハイテクを陰で支える大事な希少元素ですが、ここでいうレアメタルとは、マンガン/クロム/モリブデン/タングステン/ニッケル。銅、鉄などのべースメタルの特性を引き出すには必須のもので、戦術/戦略を云々する前に、それを支える産業力として金属を使いこなすための、採掘/選鉱/輸送/製錬/加工のシステムが確立されていなければ大量の金属を必要とする戦艦/戦車/飛行機どころか小銃の弾の1発も作れずに、戦う前から勝敗は決まっているようなもので、これは「大和魂」のような精神論ではどうにもならない技術的な事実です。本書ではレアメタルを「金属工業のビタミン」とよび、これらのビタミンを加えた鉄は様々な性質へと変化して戦争を支えた「骨格」となり、戦争のたんぱく質「銅」と共に、戦前、戦中の冶金技術や産出量などから日本の軍需産業に如何に大きな影響を与えたかを解説しています。

戦争はいつの時代も根底にあるのは技術の戦いで、例えば小銃の弾を一つ作るにも発射されて飛んでいく弾丸、弾丸を吹き飛ばす発射薬、そこに点火する雷管、これらを一体にまとめる薬莢【やつきょう:ケース】からなり、数種類の金属で構成されています。「八重の桜」の八重さん達がお城の中で作っていたのは和紙にまとめた発射薬ですは、現在は銅のケースが使われ、何ともうまく機能するのは、これは単なる発射薬の容器と言うだけではなく、雷管への衝撃で発射薬が高圧のガスになるとその熱で膨張し、発射ガスが後部に流れるのを防ぎ、これが急激に1気圧に戻ると薬莢自体も収縮して元のサイズの戻り、次の弾を装填するために簡単に排出されるという、この働きミクロに見れば発明した人はスゴイですね。映画ではいとも簡単に銃を撃つシーンを見てもそこまで考えた事はありませんでした。

人類の文明を支えた基本的な金属である、銅、鉄が炭素やレアメタルが本の少量加わるとどの様に性質を変え、どの様に有効な材料に代わるのか、当時の産出量など経済的な話から材料工学とも言うべき話まで、レアメタルの果たした役割、旧日本の軍事産業の技術力の正体まであからさまにしています。

今、再び脚光を浴びています零戦の設計者堀越二郎先生も仰っていたように、機体設計で欧米をマネル必要性は無くても、製造技術ではやはり2-3歩後ろを言っていたようで、機体自体は堀越オリジナルであっても、エンジンは米国ライト、200mm機関銃はスイスのエリコン、7.7mm機銃は英国ビッカースと乗せているものの系譜は外国製の物なのです。

この他、日本陸軍と海軍の不仲など、笑い話よりは現在の日本においても、過去を学んで同じ失敗をしないと言う点では良き反面教師としての話題を沢山提供してくれています。 単なる兵器の話でも、経済の話でも無く、それらを上手に融合させた読み物として第一級の出来栄えです。

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