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WIFE SWAP~妻交換番組

2012-09-30 | アメリカ

いきなりお見苦しい写真をお出ししてしまい、申し訳ありません。
なんだこの目のイッてるおばちゃんは?
その疑問には後でお答えするとして。

なんどかアメリカ滞在中に観た「テレビ番組」をご紹介してきました。
アメリカの「視聴者参加番組」は、日本のような国民性からは信じられない「露出番組」、
たとえば「モーリー」や「ジェリー・スプリンガー・ショー」など、
浮気したかどうか嘘発見器にかけたり、子供のDNAを調べてその結果父親を特定するなとという、
出演者総出で恥さらしをする形態のもの、或いは、
身の回りの変な人を周りの通報によって曝すものなどに人気があります。

何人もの男性をずらっとスタジオに呼んで(わたしの観た最高数は七人!)
「この中の誰かが赤ん坊の父親だから、DNAテストで調べて!」と女性が訴え、男性は
「You are not the Father!」といわれるとみな歓喜してダンスを始める。
こんな「世も末」な番組は、アメリカ以外のどの国にも存在しないし、これからもしないでしょう。

こういうことを「ネイション・ワイド」に放映されてしまって、世間とかご近所に対して恥ずかしいとか、
みっともないとかいう感覚はアメリカ人にないんだろうか。ないんだろうなあ。

そういう、「恥知らずなアメリカ人」の作るテレビ番組で、長い間人気を得ている企画ものがあります。

「妻交換番組」。Wife Swapです。
この番組はオリジナルではなく、Trading SpouseというFoxの番組が元祖だそうです。
内容は、なんと
二つの家庭の主婦を、主婦だけ期間限定で取り換える

というもの。

どういう基準でどこから参加者を探してくるのか知りませんが、

「リッチな生活をしている妻がハーレムの家庭へ」
「貧乏妻が超豪邸に」
「潔癖症の妻と片づけられない主婦を交換」
「浪費家としまり屋の交換」

およそ考え付く限りの対照的な家庭が選ばれます。
妻交換といっても、たいていのうちには子供もいるわけですから、彼らにとっては
その期間別の女性をお母さんにすることになります。


冒頭写真は、わたしが滞在中に観たこの番組の参加者。
仮にAさんとしておきましょう。
Aさんの家庭はいわゆる小金持ちです。
家は結構な豪邸で、旦那さんは何をしているかは知りませんが、稼ぎはかなりある模様。
ただし、言ってはなんですが、このご主人にも家庭そのものにもアカデミックな雰囲気はゼロです。



Aさんはご覧のように、着飾ってお出かけするのが大好き。
なんでも月に2000ドル(17~8万円)は自分のファッションのためにお金をつかう剛の者です。

 靴専用のクローゼットはアメリカ人女性の憧れ。

 同じような小金持ち主婦同士でしょっちゅう集まっています。

 こうやって、家で一人のファッションショーも。
踊りだしちゃってノリノリです。

それにしても、こういう格好をする前におなかを何とかしたほうがいいと思うのはわたしだけでしょうか。
ちなみに肥満への道まっしぐらな三人の息子は、ほとんど料理らしい料理などしてもらっていません。
勉強しろとも言わない母親なので、毎日ゲームとテレビとスナックフードで生きています。

 かたやこちら。名前が出ているのでキャシーさんと呼びます。

 

キャシーはつつましい家庭の良き妻、良き母。
彼女の関心事は家族のこと。子供の教育。自分のおしゃれなど二の次三の次です。

 

こんな奥さんの旦那だからこうなのか。この旦那の妻だからこうなのか。
いかにもしまり屋で小市民よき市民、良き父良き夫のようなキャシーの夫。
浮気の心配だけはなさそうです。
まあ、世の中何が起こるかわかりませんので、断言はしませんが。
テーブルにお金を並べているのは、それぞれが「家族のお小遣い」。
ひとりあて1ドル50でいったい何を買えというのか。

ところで、何人いるのこの家族。

なんか7人くらいいるんですけど、子供・・・。

これはまた典型的な貧乏人の、いや正直者の子だくさん。
とにかく彼らは、大きな子供が小さい子の面倒を見、けなげに助け合っています。

キャシーさんが訪れたAさん宅。

必ずたった一人で交換先に行き、家をくまなくチェックしてあれこれ(悪口を)いう、というのがお約束。
片方が豪邸の場合、広さに感心して、「メイドに掃除させているのね」などといいます。

 

Aさんが訪れた「交換先」にはなんとびっくり、ニワトリがお出迎え。
キャシーさんの家はファームなんですね。典型的なカントリーワイフです。
まずクローゼットに突入し、キャシーさんのワードローブを出して馬鹿にするAさん。

「ちょっとー、何この、ゴムスカートは!だっさー!キャハハハ」


 豪邸のAさん家族にあいさつするキャシーさん。

お金持ちのほうの家庭はたいていスノッブで、貧乏人妻をあからさまに馬鹿にしたりするのですが、
彼ら、特にこの旦那さんは気のいい人らしく、なかなか好意的。
子供たちも、お化粧もおしゃれも、ギラギラもしてない女性が珍しそうにしています。

 「このママは、なんだかよさそうだなあ」

と思ったのもつかの間、キャシーママは、さっそく子供たちのゲームを制限し、取り上げ、
「さあ、みんなでできる遊びをしましょ。まずはダイヤモンドゲームよ」
などとやりだし、子供たちは「シマッタ」。

さて、交換されたからには、彼女らはオリジナル妻と同じことをする必要もあります。
ニワトリを見ながら田舎で暮らしていたキャシーさんに、次に下ったミッションは、
Aさんの常連の小金もちマダムの集まりにおしゃれしていくこと。どっひゃー。

 

まずは行きつけのブティックであれこれ買い物することから。
しぶしぶ出かけたキャシーさんですが、そこはやはり女性の性。
気が付いたらいろいろ試着してお洋服を選ぶのにどっぷりのめりこんでおります。

 

おしゃれしたからには、と慣れないお化粧にもチャレンジ。
いくらし慣れないからって、化粧するときにこんな顔をする人がいるだろうか・・・。
でも、この人顔立ちがなかなかいいので、お化粧がちょっとさまになってますね。
本人も、まんざらでもなさそうです。

 かたやAさん。
子供がだくさんいて、朝も早くからやること満載なのに、みんなが出て行ったから悠々起床。
家のことは一向にしないけど、お化粧にキラキラの服で朝から出てくるお母さんに、子供たちは目を丸くします。
とくに、この家の年頃の女の子は、彼女のファッションに興味津々。

しかしAさん、慣れない手つきで皆のために健気にも卵を焼いたり、勉強を見(るふりをし)たり、大活躍。
すぐに根を上げてしまうのですが。

 やっぱりこんなことしているほうが楽しいの~。

小金持ちマダムのパーティに出てみたものの、皆から浮きまくっていごこちの悪い思いをしたキャシーさんも、
二週間目が近づくと、「やっぱりうちがいいわ」などと思い出します。

というところでスワップ期間終了。

 

最後に、両夫婦が一堂に集まり「反省会」。
この場では何とも言わなくても、後でカメラに向かって相手の家庭や妻の悪口を言いだす人もいます。
この二人は、まったく自分とは別方向の暮らしを体験したわけですが、お互い「自分の家がベスト」であることを確認しました。

 でも、その後、ちょっとした変化が二人の妻にありました。

これまでこどもたちを放任して、自分のことばかりしていたAさん、
「キャシーママがいたとき、皆でゲームしたら楽しかったよ」
と子供に誘われ、トランプなどを彼らとするように。
そして、たくさんの子供たちのために、おやつを作って喜ばれたので、
Aさん、自宅でもちょっとクッキーなど焼いてみる気にもなったようです。

そして、キャシーさんは、少しお化粧をして人前に出るのもいいわね、という気になったようですね。
二人で並んでいるキャシーさんの顔、ちゃんとお化粧しているでしょ?

 

さて、この日のもう一組の「交換妻」たち。
まずはこちらの夫婦から・・・・・・って、なにこれ!
ムキムキ筋肉男と腹筋妻。
ビリーズ・ブートキャンプか?と思ったら

 

そのものでした・・・・・。
こういうフィットネスチームを主催しているのがこの家の主人。

 夕食ができるのを待つ間に腕立て伏せ。

もうこうなったら運動ジャンキーです。
アメリカ人は極端で、太っている人は野放図に太っていますが、このように鍛える人は半端でなく鍛えます。
そして、もうこのあたりで予想がついた方もおられるかと思いますが、本日ここに交換妻としてやってくるのはこの人。

 

やせたら結構な別嬪さんであると思われるのですが、とにかく太っています。
そして、これもアメリカ人にありがちなのですが、妻がデブなら夫もデブ。(右)
この旦那さんも、痩せればティム・ロビンスなのに、ご覧の通りの超重量級。
食べるものが同じなのでこうなってしまうカップルが多いようです。

 

うちの妻になったからには、運動してもらわにゃ!という厳しい夫の命令で、いきなりトレーニングに参加させられるBさん。
日頃何もしていない人に、これはないでしょう。
心臓発作起こして死んじゃうよ~。

 かたや鍛え系妻。
カロリーの高いスナックフードをむさぼり食う旦那にうんざり。
「ちょっとは運動したら?」
「うちにはうちの考えがあるんですよ」
反発するデブ夫。
それでもやたらアクティブな鍛え系にハッパをかけられ、趣味のDJなどにチャレンジする気にはなったようです。
・・・・でも、やっぱりオレ楽な方がいいし、と、楽な方へ楽な方へと流れるデブ夫。

こちらではデブ妻ついにぶち切れ。

「こんなもの、こうしてやる!」
と、自分を苦しめる運動の象徴としてバランスボールにナイフをグサリ。
おいおい、何八つ当たりしてるんだよ。

「毎日毎日運動なんてもううんざりよ!」

デブ夫もぶち切れ。

「オレにこれ以上運動を強要するなあああ~!」ってなわけで、連れて行かれたジムでパンチングボールに八つ当たり。

こういう人たちって、なんかすごくこらえ性がないのね。
まあ、いきなりハードなブートキャンプを強要する方もする方だけど、どうもデブチームのキレ具合が半端じゃない気がします。
太っているから性格もおっとりしてる、ってことは全くないものなんですね。
むしろ砂糖の取りすぎでキレやすい傾向にあるような。

というわけで残念ながらこのチームの「反省会」は写真に撮れなかったわけですが、
何しろデブ夫とブートキャンプがどっちも怒っちゃって大荒れになってしまいました。

「Bさんはなにしろレイジーで食べてばっかりで・・・」とわーわー叫ぶブートキャンプ。
「あいつは馬鹿じゃないのか」とマジで嫌悪感をあらわにするデブ。

たいていの交換妻は、「うちにもいろいろ不満はあるけど、やっぱりあんなところから帰ってみるとうちの方がずっといいわ」
という結論に達するのが、この番組の「お約束的終わり方」。

それにしても、こうやって並べていくと、どうしても感じませんか。

強烈な「ヤラセ」臭を

バランスボールをナイフで引き裂いたり、ブートキャンプが激高して怒鳴ったり、
まあ多少の「地」ではあるにせよ、これはディレクターにあれこれ指示されているニオイが。
番組をおもしろくするために、あざとい演出は当然である、アメリカのこの手の「視聴者参加型番組」。
やらせは当然のこととして行われているものと思われます。

一昔前、日本でも「ジェリースプリンガー」を真似したと思われる暴露番組が放映されたことがあるそうです。
浮気したとか裏切られたとかのカップルが出てきて、悪い方(たいてい男)が責められるのですが、
その際、自分を非難したコメンテーターに向かって、参加者が「うるせえばばあ!」などと口汚く罵り、
さらに見ているものの嫌悪感を煽るというあざとい演出で、一時は「子供には見せたくない番組」の地位を獲得していたそうです。
実はそれに出演して暴言を吐いていた男性はヤラセもヤラセ、劇団員だったことがわかり、おそらくそのせいで番組は終了しました。

ちょっと見てみたかったかな。

日本人のメンタリティとして、いかに日頃そういう言動をしている人間でも、
わざわざテレビに出てまでそういう面を晒すことはあまりないと思うのですが。
実際、出演者、つまり一般の参加者が番組を継続できるほど確保できなかったのでしょうね。

「ジェリースプリンガー」や「モーリー」は、人口が多く、愚かな人間もそれだけ多く、
さらに恥を恥と思わない人間の多いアメリカでしか成立しない番組なのです。

さて、妻交換のあと、「やっぱりうちがいい」という結論に達したとしても、
別の家庭にしばし身を置いたことで見えてくるものもあります。
というわけで、
「確かにうちはいい。そしてあちらの家庭は最悪だった。でも、いい面もあった」
という「反省」を生かしてみせる交換後の彼らの姿が映されます。


 笑ったのがこれ。

運動を強要されて反発した二人ですが、さすがに太りすぎはあまりよろしくない、ということに考えが至りました。
あそこまでハードにやるのは無理だけど、そう、まず歩くことから始めてみようか。

これは、おそらくやらせなので、もしこの瞬間、二人がその気になっていたとしても、
せいぜい3日もしたら二人そろってやめてしまうことを確信するのは、エリス中尉だけではありますまい。
そもそもこういう地道な運動が継続できるような人であれば、ここまで太りはしないのよ。
なんてったって、彼らの表情が、全てを語っています。

この、つまらなさそうな様子・・・。