ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

旅しながら淡々と写真を張る~なまはげトラウマ

2012-09-03 | お出かけ

このパノラマ写真の撮り方って、ご存知ですか?
シャッターを押したまま、→の方向に向かって、ぐるっと体を回転させるのです。
意外と原始的な撮り方をするものなんですね。
撮っている間はどんな画像がおさめられているのか全く分からないので、
水平線が水平にならなかったりしてしまいます。
シャッターを押す間カメラは「カシャカシャカシャカシャ」と言い続けるのですが、
回転が遅くても早くても画像にならず、「もっと早く」とか「もっと遅く」とかいちいち指導が入ります。

いやー、なかなか面白いオモチャですこと。

さて、前にも一度言いましたが、秋田の夏は暑い。
東北地方で冬は雪が降って、かまくらなんか作ったりするくせに、夏は無茶苦茶暑い。
しかも、パロアルトの湿度の低いからりとした空気ではなく、ねっとりと肌に絡みつく、
不快指数満点の蒸し暑さです。

車から一歩降りたとたん、サウナの中のような重たい熱気に包まれ、
全身の毛孔と言う毛穴から汗が吹き出します。
この過酷な気候の中、はっきりいって観光というものの存在意義、そして
「観光とは楽しむものなのか」という根源的な疑問が脳裏をかすめっぱなしなのですが、
案内する方もされる方も、諦観と無我の心境にわが身を置き、ただひたすら慣行に則って
観光を敢行するマシーンとなって粛々と行程をこなすのでございます。

案内のA氏にすれば仕事。TOにとっても仕事。
そういうしがらみがなければ、すでに存在意義もない「誰特」行事なのです。

日本のビジネスマンって、偉いなあ・・・・・・・。(しみじみ)

 お次の観光地、入堂崎。

A氏のメールには
「入堂崎(男鹿半島北西突端の岬)芝生の大地から海岸へ絶壁となっており、灯台に昇れます。

狭く急な階段ですが昇りましょう。

狭く急な階段ですが昇りましょう。

狭く急な階段ですが昇りましょう。

と書いてありました。
大事なことなので三回書いたのはエリス中尉で、A氏ではありません。

そして、この日の異常な暑さ、ギラギラと照りつける太陽にむしむしした空気。

「じゃ、灯台に昇りましょうか」

A氏が意を決したようにおっしゃいました。

これは苦行なのか、人は(以下略)
とまたぞろ哲学的な命題がエリス中尉(と、おそらくそこにいた大人全員)の脳裏をかすめたときです。

そこで「裸の王様」の子供並みに空気読まない発言を、宅の豚児がぶちかましてくれたのです。

「NO!」

A氏の発言からわずか0.03秒後のことでございました。
慌てるTO。
しかし、TOが、「せっかくだから昇ろうよ」と息子をなだめるのより一瞬早く、
当のA氏その人が、打てば響くように

「NOですか!じゃやめましょう」

と即答なさいました。
それはまさに阿吽の呼吸。
内心息子の却下を心から歓迎しているらしい安堵の様子が声音に表れているのを、
エリス中尉の鋭い耳は聴き逃すことはなかったのです。



火曜サスペンス劇場で10回以上は舞台になったのではないかとおもわれる崖。

「ここで犯人が、自分の犯罪を得意になってしゃべるんですよね」
「そうそう、そして『あの世への土産に聴かせてやる』とか言っている間にパトカーが来てしまうと」
「いつもあれをやっている間にパトカーが来てしまうので、あれはやめた方がいいですね」

 北緯40度ライン。
 40度ライン上に石碑が点々と。

石碑の隙間から向こうの石碑が見える。

いくつか立っている石碑を辿る線は、伸ばして行けばニューヨークなんだそうです。
逆に行けば、多分ロシアです。(いい加減)
それがどうした、とは言ってはいけません。


このあとここのパーキングにあるお食事どころで海鮮どんぶりやサザエの壺焼きを食べました。
これもA氏が「せっかくだからどうぞ」とわざわざ買って下さったのです。

好きでも無いし、美味しいと思ったこともないし、それでも、こういうところに来たら食べてしまう。
サザエの壺焼きって、まさにその典型のようなものです。
これも「観光」の不思議なところです。
案の定この岩場で採れたサザエは、身が硬く、砂だらけで、お世辞にも美味しくありませんでした。

TOはこういうのが苦手なはずですが、なんといってもこれは「仕事」です。
恐らく死んだ気で食べ、おそらく砂でもあったのか、しばらくしてからさりげなく洗面所に立っていました(笑)

この灯台と岬を望む一角は、バスがたくさん停められるため、二階を座敷にしたお食事処がずらりと
ならんで、この日は大変なにぎわいを見せていました。
この駐車場に、なまはげ発見。

 なまはげの刀を真剣白刃取りする息子。

そう言えばもりあがれずに閉店してしまった八望台の食堂も「なまはげ食堂」でした。
「なまはげキャンプ場」なんてのも見ました。

「オーベルジュ・なまはげ」とか、「ル・ジャルダン・ド・なまはげ」なんてのもあるんでしょうか。

小さいとき、なまはげのなんたるかを本で読み、それだけで
夜一人でお手洗いに行けなくなるほどの怖がりさんだったエリス中尉には、
このなまはげに泣きわめく子供の、少なからぬ人数がトラウマを持つに違いないと固く信じていました。



ところが、A氏によると「青森の人間は絶対にあれはトラウマにはならないらしいですよ」

生まれてから大学卒業までずっと東京の人であったA氏が
一体何人の青森県人から統計を取ったのかは知りません。

しかし、とにかく小さい時に散々怖がっても、いずれ理解し、心的外傷は決して残らないのだそうです。
それはときとして自分の好きな隣のおじさんだったり、ときには自分のお父さんがその正体で、
愛情ゆえに為されたことであると自分の心の中で問題解決するのかもしれません。

また、そのような行為によって子供の心が傷つけられることはないのでしょう。



さて、秋田観光、最後はお待ちかね、水族館!

きっと中も涼しいであろうこの戸賀水族館、楽しみにしていました。
変わった魚やペンギンなど見ていると何時間でも過ごせてしまうくらい、水族館が好きなのです。
なのに・・・・なのに・・・・。

嗚呼、やはりというかなんというか、案内のA氏は、連れてくるだけ連れてきて、
「私は何度も来ているから外で待っています」
といって、わたしたちだけで入館することになってしまったではありませんか。

外で仕事関係の人を待たせておいて、心行くまで魚を眺めるなんてこと、
普通の日本人ならとてもできる仕業ではありません。 そうでしょ?

ですから、この水族館の目玉であるシロクマの豪太くんと、ペンギン以外は、ほとんど立ち止まらず
駆け足で見学しました。

 岩飛びペンギン。

この水族館にはこの岩飛びとジェンツーペンギンの二種類がいます。
この岩飛びくんは、横にいたジェンツーにこの直後なぜか突き落とされていました。
しかし、いったん水に入るとペンギンって実に「鳥」だなあといつも思います。

体を弾丸のように流線型にして縦横無尽に泳ぎまくるのです。
泳ぐとき、あの「とさか」がぴったりと頭に張り付いたようになるのを初めて見ました。

ところで、この時にはもうカメラが使えなかったので、写真は全て携帯です。

 シロクマの豪太くん・・・・なんですが・・・

 ズームできないからわけわかりません。

それにしても、何でこんな灼熱の屋外に、しかも日向にシロクマを放置するのでしょうか。
氷の柱をもらっていて、それをかじったり抱いたりしていましたが、気の毒でした。
動物愛護協会から文句が出ないのかしら。



実は、この水族館は岩場のある海に面していて、A氏のメールには
時間が有れば軽く磯遊び(水には入らず岩渡りで)
などと書いてあったのですが、何度も言うように岩わたりどころか、駐車場までのバスを待つ間も
外にいられないので、皆室内からバスが来るのを待って、バスが到着したとたんどっと出ていく始末。
協議するまでもなく岩場に出る案は無くなりました。
というか、人っ子一人外に人影はありませんでした。

水族館見学を終わって、皆でソフトクリームを食べ、それから空港に向かいます。

「早く空港についてしまいますが、構いませんか」

勿論です。もちろんですとも。
本当に、あの花火の次の日に一日中運転して暑い中いろんなところに連れて行って下さり、
Aさんの御心には本当に感謝するばかりです。
一刻も早くお開きにして、お家に帰って休憩して下さい。


さて。

そんなこんなで暑く長かった秋田観光の一日は終わり、こうして家に帰って写真を眺めていると、
階段が辛かった展望台も、砂だらけのサザエの壺焼きも、ただただ暑かった灯台の岬も、
皆のど元過ぎればで面白くも楽しい経験として良い思い出になっているのを感じます。

なまはげと一緒で、たとえ仕事の付き合いとは言え人さまのご厚意から為される行為は、
見たもの体験したことに、「ありがたいと思う気持ち」が輝きとなって込められるからでしょうか。