◎エーテル体のイメトレ
冬らしい気候になってくると、風邪を引く人が多い。江戸時代の禅者白隠は、70歳となって、冬であっても足袋を履かず身体はぽかぽかと暖かいと語るほど健康を維持できた。
白隠は生来多病であったが、青年期に京都の白幽子に軟酥の看法を教えられて、それを行ずるようになってからは、病患を去って気力充実して修行に邁進することができた。気力充実するためには体力の裏付けがないと何事もなかなか進むものではない。
軟酥の法とは白いバターの固まりのようなものがあると想像して、それが、頭頂から手、足の先まで潤し、しみわたると看ることによって身体の健康、バランスを取り戻そうとする方法である。
この国学者平田篤胤の養父篤穏の養生法も、肉体そのものでなく、軟酥の看法のようにイメージでもってエーテル体全体に気を巡らすことにより、健康を維持しようとするもの。
『①まず仰向きに寝る
②次いで両足を揃えてかかとを押し出すように強く踏み伸ばせ。
③そして全身の気を臍のあたりから、その下丹田、そして腰、脚、足の裏にまで充たす。
④次には指を折って、呼吸を百まで数えるがよい。
⑤呼吸を百数え終わったならば、踏みしめた力を緩めよ。
⑥これを一晩に四、五回続けるのだ。
「これを行なえば、元気が全身に充満して、腹中にあるしこりなども消える。どのような良薬も、この術に優るものはないのだ」と養父は服をはだけてその腹を出した。見れば腹力は充実して張って固いことコツコツと音がするようであったとして,この法の効能を篤胤は強調している。』
(古武術と身体/大宮司朗/原書房から引用)
篤穏は84歳の長寿であったという。篤穏の方法には、保息があるところが特徴。効果の遅速についての言及はない。これは、彭祖の長命法をイメージさせるところがある。