国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

日本の国債発行残高が多い理由

2011年02月01日 | 日本国内
もし日本が国債を今ほど発行していなかったら、日本はもっと酷い大不況に苦しんでいた筈である。日本の国債発行は明らかに景気下支えの効果があったと考えられる。それ以前に、企業分野と家計分野の状況変化によって国債発行増加は避けられない状態になっているのだ。かつての高度成長時代には、工業製品は作れば売れる状態であり、企業は借金して工場を建設し製品を製造した。しかし、バブル以降のゼロ成長時代では市場が飽和状態になっており、売れる商品と売れない商品の二極化が進んでいる。このような時代では、借金して製品を製造するのは製品が売れなかった時のリスクが大きすぎる。そのため、借金ではなく自己資金、つまり内部留保で工場を建設し製品を製造する方向に進んでいる。つまり、製造業の借金が減って貯蓄が増えているのだ。 家計分野でも変化が起きている。日本の金融資産の大部分は高齢者に保有されている。金融資産以外の不動産などでも事情は同じだろう。つまり、日本人は一部の富裕な高齢者とその他大勢に二極化し始めているのだ。そして、高齢者は青壮年と異なりあまり消費を行わない。高齢化社会の到来に伴って、この二極化は進む一方である。従って、高齢者が増加するに従い今後も家計分野の貯蓄は増えていくことだろう。長生きして貯蓄が尽きる危険を考えると、高齢者はあまり貯蓄を取り崩せないことも重要である。長寿は素晴らしいことだが、何事も負の側面がある。 企業部門と家計部門が貯蓄を増やすならば、当然ながら経常黒字が増加することになる。しかし、経常黒字の増加は貿易不均衡として諸外国からの批判を招くために回避する必要がある。そうすると、政府・地方自治体などの公的部門が借金を増やしていくしかなくなるのだ。日本の国債発行残高増加はこのような必然性に基づいているのである。 . . . 本文を読む
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