国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

フロリダ高速鉄道計画 白紙に

2011年02月19日 | 米国
米国のフロリダ州の高速鉄道計画が白紙となった。恐らく、他の州の高速鉄道計画も多くが白紙撤回されることだろう。 米国は多極分散型国家であり、中枢機能が全国の大都市に分散している。国土が広いこともあり、鉄道が得意とする200-800km程度の都市間輸送の需要が小さく、飛行機が得意とする800km以上の都市間輸送の需要が大きいのだ。更に、米国では公共交通機関が発達しておらず、自動車利用を前提として広い地域に都市が拡がっている。200km-400km程度の移動なら、ドアtoドアで移動できる自動車の方が便利であろう。従って、高速鉄道を建設しても採算がとれる地域は非常に少ないと思われる。候補としては、東海岸のボストン-ニューヨーク-ワシントンDC間、西海岸のサンフランシスコ-ロサンゼルス-サンディエゴ間、バンクーバー-シアトル間程度ではないかと思われる。東海岸のボストン-ニューヨーク-ワシントンDC間には既に鉄道が存在し、これを高速化するだけでよいことを考えると、新路線建設の可能性があるのは西海岸の二カ所だけになるだろう。これも、採算がとれるかどうかは微妙である。例えば西海岸の二大都市であるサンフランシスコ-ロサンゼルス間だが、日本の東京大阪間と比較すると需要ははるかに小さいようである。上越新幹線か九州新幹線程度の需要しかなく、補助金を投入しないと建設は無理ではないかと思われる。そして、現在の米国経済が双子の赤字で火の車であることを考えると、鉄道建設に補助金を出す余裕はないと思われる。 航空機と自動車に依存した米国の国土構造・都市構造は安価な石油を前提にしていた。世界の石油生産がピークを越え原油価格の上昇が止まらないであろう21世紀、米国は輸送コストの高さ故に衰退していく可能性が高いと思われる。衰退を免れる唯一の方法は、軽量で大容量の超高性能の蓄電池開発による電気自動車への切り替えと、石油を使用しない航空機の導入であるが、この二つの技術は少なくとも現状では全く目処が立っていない。米国に代わって、鉄道輸送に適した国土構造・都市構造を持つ日本と欧州が世界の先進地域の双璧になると思われる。米国の西海岸は高速鉄道が整備されれば何とか先進地域として生き残れるだろう。 . . . 本文を読む
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