国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

「コソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」というEUの無責任さ

2008年01月09日 | 欧州
コソボの独立を巡るEU内部の調整が大詰めを迎えているようだ。しかし、自国内に分離独立運動の芽を抱えるスペイン・ルーマニア・スロバキア・ギリシャ・キプロスはコソボ独立に反対ないし慎重論の構えを崩していない。 1月8日の朝日新聞では、「EUとしてコソボ独立後の支援はするが、国家承認については加盟各国の判断に任せる」という線での合意を狙うという驚くべき妥協案が述べられている。つまり、独立したコソボをスペイン・ルーマニアなどが国家として承認しないことを容認するというのだ。これはあまりに無責任な妥協案であり、そのような提案が存在すること自体、EUが本気でコソボ問題に取り組んでいないことを示している様に思われる。では、EU諸国の真意は何だろうか? ボスニア紛争が多くの死傷者を出した上で解決に向かいつつあることからも分かるように、民族問題は一度戦争を起こして多くの犠牲者を出さない限り解決できない傾向がある様に思われる。戦争の痛みが当事国を平和的解決に向かわせる原動力になるのである。EU諸国はそのような観点からわざとコソボの独立の意志を煽り、セルビアと激突させることを狙っている様に感じられる。 仮に戦争になったとしても、コソボの住民の大部分がアルバニア系であることから、コソボの独立を撤回させることはセルビアには困難だと思われる。セルビアにできるのは、コソボの一部をセルビア領にすること程度であり、戦争の落とし所はその様な条件闘争になるのではないだろうか。 1月20日にはセルビアで大統領選挙が予定されており、民主派と民族派が争っている。選挙戦によりセルビア国民の民族意識が鼓舞されることで、2月にも予想されるコソボの独立宣言の後にはセルビアとコソボの間で戦争が勃発するのではないかと私は想像している。セルビアがルーマニアと国境を接している事を考えると、ロシア軍がルーマニアを経由してコソボに介入するという可能性もあるかもしれない。 . . . 本文を読む
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