カントリーリスク(country risk)という言葉があります。海外へ投融資や貿易を行うに際して、相手国の政治・経済・社会環境の変化のために、例えば内乱や革命、政情不安などで、収益を損なう危険の度合いを言います。カントリーリスクの一つに、チャイナリスク(China Risks,China's Business Risks)があります。中国の政治・経済・社会環境の変動が理由で、例えば1989年の天安門事件、2005年の反日運動、2008年の食品中毒問題などで、外国企業が中国国内で経済活動を行うに際して、損失を被るリスクを言います。
チャイナ・プラス・ワン(China plus one)という言葉もあります。チャイナリスクを回避するためのリスクマネジメントの手法の一つです。中国に投資をしても集中させず、平行して他の国、例えばタイ、ベトナム、インドなど他の新興諸国にも一定規模の投資を行い、生産拠点を複数化させて、リスクの分散を図ることをいいます。
しかし、11月に入って、タイでスワンナプーム国際空港が封鎖され、インドで同時多発テロが起こり、日系企業もリスクマネジメントで苦労を強いられています。「インドリスク」という言葉はすでに存在しますが、「タイリスク」や「タイランドリスク(Thailand's Business Risks)」という言葉も普通に使われるようになってしまうのでしょうか。
タイ陸軍のアヌポン・パオチンダ(Anupong Paochinda)司令官は、以前から、軍が行動を起こしても、「反タクシン派」のバンコクの旧支配層や中産階級と「タクシン支持派」の地方や都市の低所得者層との対立の溝を埋めることはできない(The military cannot heal fundamental political rifts between the Bangkok elite and middle classes and the poor rural and urban majority.)と発言しています。
11月30日、タイの反政府市民団体の「民主市民連合(PAD)」がスワンナプーム国際空港などを占拠して5日目に入っています。同日深夜、ソムチャイ首相の退陣を要求してPADが同じく8月から数千人を動員して占拠を続けている首相府で、投げ込まれた手榴弾の爆発によりPAD支持者の少なくとも46人(51人という報道もある)が負傷しました(The grenade blasst occurred around midnight at Government House, where thousands of supporters of the People's Alliance for Democracy (PAD), who have occupied the prime minister's compound since August in a bid to unseat him, were attending a rally.)。
民間の空港施設が殆どない軍民共用空港のウタパオ国際空港は、まったくの無秩序だといいます(There was chaos at U-Tapao, a military airbase with almost no civilan flight facilties.)。この状況を経験した日本人をはじめとする外国人は、タイに戻っては来ないでしょう。何万人という国外に出ようとする人たちによって、ウタパオ国際空港は混乱をきたしています。空港の外には搭乗を待つ乗客のためにテントが張られ、簡易トイレが設置され、難民の収容施設の観を呈しているようです。空港に向かう道路は、数キロに渡って渋滞しているようでもあります。(Tens of thousands of stranded passengers have been squeezing into the only terminal at U-tapao airport to catch flights out of the country. Tents have been erected outside the terminal to provide shelter to the passengers and more mobile toilets have been installed. Traffic to the airport, in Rayong's Ban Chang district, has been backed up for several kilometres. )。