風立ちぬ
2013年 日本
監督・脚本:宮崎駿
製作:奥田誠治、福山亮一、藤巻直哉
声の出演:庵野秀明、瀧本美織、西島秀俊、西村雅彦、スティーブン・アルパート、志田未来、野村萬斎
戦闘機ゼロ戦を設計したことでも知られる航空機技術者・堀越二郎をモデルとし、堀辰雄の小説「風立ちぬ」で描かれた、
結核患者である恋人を支えながら生きるストーリーもからめつつ、太平洋戦争当時の恋人たちを映し出します。
日本の貧しい暗い時代の物語を、こんなに夢いっぱいに魅せるなんて !!
主人公の二郎は、夢の中で憧れの航空機設計者カプローニと出会い、飛行機を造る夢を追い続けて
何があっても繰り返し繰り返し夢を見続けています。
どこまでが二郎の頭の中のことなのか、回想なのか、すべてが夢のよう。
見る人によって、受け取る物語が違うだろうなあと感じられる作品です。
風立ちぬ いざ行きやめも・・と、堀辰雄が訳したポール・ヴァレリーの詩が沁みてきました。
それを宮崎駿は「生きねば」と更に強い解釈を加えています。
二郎と、その恋人・菜穂子にとっての「生きる」とは、ただ単に命を長らえるという意味ではありません。
愛する人の側に居て、やらなければいけない事を行動し続け、我がままかもしれないけれど
めいっぱい生きたいように、生きるのです。
だからこそ菜穂子が二郎にあてる「生きて!」は力強い。
その背景となる空や雲には、突き抜けるような美しさがあります。
長年に亘り、空を、風を、描いて来たスタジオジブリの真骨頂。
おそらくは、ゼロ戦好きの監督の心の奥底に昔から眠っていた物語。
宮崎駿は、こんなことを思って、ずうっと風を描いていたのか!