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寒空の下に広がる笑い

新年初めの買い物で賑わう街中で、いいものを見た。
映画を観に訪れた梅田ロフトの前。
人だかりがしていて、どっと笑い声が聞こえた。

チケットを買いに映画館に入った時は、
いつもの人だかりと思い通り過ごした。
ビルを出て、斜め向かいの本屋に行こうとしたら、
人だかりの囲みの端の方は人も少なくて、
大道芸人の姿がみえた。
観客らしき若い男性の一人を立たせて
輪投げをしていた。

頭に一つ、
続いて、曲げて挙げた両腕に二つ、同時に輪を投げ入れる。
最後は三つの輪を同時に、頭と両腕に・・
結果は失敗。
ちょっと笑い怒った顔して、
輪に頭をくぐらせるようにと、男性にパントマイムで伝える芸人。
再度挑戦の機会を観客に願い出て、見事、成功。
拍手が起こる。

芸人は小柄な男性で、若くはなく、ちょこまかとよく動いた。
よくみれば、今季一番の寒波が吹きすさぶ中、
半袖のTシャツ姿である。

四人の男性の観客を並べ、背中合わせに座らせて
次の芸を始める。
どんな芸なんだろうと、もうその場から離れられなくなる。
大小のおもちゃのトンカチをつかって、
四人の男性を見事、組み合わせ、
座っていた椅子を四つとも抜いて、空中椅子を成功させる。
「フィナーレ」と用意したボードが楽しい。

芸に協力した男性を一列に並べ、金メダルを首にかけていく。
国旗掲揚はないけど、同じ方向を向かせるパフォーマンスがおもしろい。
と思ったら、渡した金メダルはするっと回収して、
代わりに、参加賞のプレゼントとして
うやうやしく差し出したのは、
ペロペロキャンティ、マーブルチョコ、うまい棒といった駄菓子。
とまどう有志の男性たちに、順に、丁寧に客席に戻るよう促し、
最後に残ったのは四人目の男性。
しかし、鞄の中は空っぽ。
うしろのトランクから小さな何かを嬉しそうに大切に取り出す。
これが花になったらすてきだと思って見ていると、
芸人は息を吹き入れ、
赤くて長~い風船が青空に向かって生まれ出た。
ちょっと劇的で、すてきな光景で、思わずまわりから感嘆の吐息がもれた。

芸人は風船を二つにちぎって、半分を男性に渡そうとすると
風船は空気が抜けて、逃げてしまった。
残った半分を器用に幾つかに折り曲げ、
男性の鼻にちょんとのせておしまい。

芸を手伝った観客の四人が去ると、
芸人は、
ぜんまいで回る、機械仕掛けの人形のように、
ぎくしゃくした動きになって、
丁寧に深々とおじぎをし、
黒のシルクハットの帽子の上部の蓋を開けた。
そこに書かれていた文字が「おしまい」だったか、「拍手」だったか、
残念なことに、記憶が定かでないが、
観客があたたかい反応をしていたのは覚えている。

その後、真顔に戻った芸人は、
マイクを持って、
寒い中、足を止めて見てくれたお礼を述べた後、
名を名乗り、大道芸を始めて19年、目下45歳だと話し、
バイトもせず芸の道一筋でやっており、
交通費の足しにでもお願いしますとしゃべった。
その話が始まったとたん、輪から離れていく人もいれば、
芸人が差し出した帽子に、多くの人が集まっていったのは
心あたたまる光景だった。
中には千円札を差し出す若い男の子もいて、
さすが大阪人の心意気だと思った。
「芸を見てなくても遠慮は要りません、お賽銭がわりに」と
付け加える芸人。

街角の人ごみで、
思い切り笑って、いっぱい拍手もし、ちょっと胸熱くなって、
皆の笑い声を聞くことができ、
すっかり心あたたまって、人ごみをそっと抜け出した。


以上、
今日、日曜日、街角で見つけた光景について
エッセイふうにまとめてみました。
弟に教えてもらったテザリングを駆使し、
満席でにぎわうカフェからの初投稿です。

先週後半から週末にかけて
音楽や映画や、本当に書きたいことがいっぱいで、
時間がどれだけあっても足りません。
といいつつ、これから映画も観る欲張りです。
外国映画のベストテンも遅くなっていてすみません。
どうぞ今年もよろしくお願いいたします。

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