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No1290-2『日曜日の人々』その2~みずみずしい恋のときめき~

この無声映画、主な登場人物は5人。
最初に簡単な人物紹介がある。
タクシー運転手と、モデルの妻。
レコード屋の店員をしている女性、
ワインの行商人をしているイケメンの青年、
映画のエキストラ女優。

日曜日。
妻は、一日、家で寝倒してしまうけれど、
4人は、湖へ遊びに行って、楽しいひとときを過ごし、
月曜からは、また仕事がはじまるというお話を、
ベルリンの街のざわめきとともに描く。

若い男女のささやかな恋物語というか、
ひとときのときめきのようなお話。
何気なく撮られた無数のベルリンの街の人々の日常の姿が
素晴らしいのは、前回書いたとおり。
この五人をとらえた映像も美しく、書きとめておきたい。

イケメン青年は、ちょっとしたプレーボーイ。
女性は二人とも、淡い恋心を抱き、胸を熱くしたけれど…
みたいな感じ。

青年が、土曜の晩、
街でエキストラ女優の女性に声をかけ、
道端のカフェに入る。
それまでロングショットで、小さく映っていたところ、
いきなり、それぞれの顔のアップが映る。
相手の手か腕を後ろから少しなめて、とらえる感じがよく、
交互に写した後、
今度は、二人を同じ画面の中にとらえる。
二人が隣り合って座っていて、その距離がずいぶん近く、
睦まじそうなことがわかる。
ストローの袋を縮めて、水滴をかけて遊ぶなんて、
懐かしいことも、とても絵になる。

明日の日曜に湖に遊びに行こうと約束して別れる二人。

青年は、タクシードライバーの友達を誘い、
女優は、レコード屋の店員の親友を誘う。

女優は、青年に心ひかれたのに、
湖でいきなり、すげなくされ、
青年は、親友の店員と意気投合して、仲良く泳ぎ始める。

しょげて、沈みがちになる娘を
ドライバーの青年が、笑わせようとする。
そんなやりとりが、光きらめく湖の水辺で展開する。

店員とイケメン青年が森の中を追いかけっこをして、
とうとう捕まえた青年がキスをする…
その姿をロングショットでとらえたまま、
カメラは長まわしで、ゆっくり森の木々をパンして、
また元に戻っていく。
二人は、キスを終えて、立ち上がっていて、
このワンカットの美しいこと。
店員の少女のみずみずしい初恋のときめきが伝わる。

言葉がない分、一つひとつのシーンが心に強烈に焼きつく。
LPレコードの上に座って、割ってしまったり、
木の枝にひっかかった帽子をとるため、
店員の少女が、男性らに助けられて、
木に登る時の、ワンピースの裾が舞う美しさ。

女性同士も、喧嘩したり、仲直りしたり、表情豊かで、
最後は、足漕ぎボートで湖に繰り出す。

無声映画でこそ体感できる映画の呼吸、息遣いに
ぴたりとあわせた柳下美恵さんの弾くピアノが
心地よく身体に入ってくる。

DJパンチョス!globe祭りだぁ!!!

2人の若手監督、29歳のロベルト・シオドマクと
25歳のエドガー・G・ウルマーのデビュー作。
名監督ビリー・ワイルダーが23歳で脚本に参加、
22歳のアルフレート・ジンネマンも演出と撮影の補佐で参加しており、
若い映画魂が結集してできた作品。

この5人を演じたのは、役者ではなく、
公開後は、仕事に戻って、普通に暮らしているとの字幕に、
思わず、つい先日、スイスのロカルノ国際映画祭で
最優秀女優賞を受賞された、
濱口竜介監督の新作『ハッピーアワー』の
4人の主演の女性の方々のことを思い浮かべた。

この4人の方々も職業俳優ではなく、映画の出演経験もなかったそうで、
濱口監督が受賞時に、メディア等に向けて書かれたツイッターによれば、
「現時点では今後も演技を続ける意志は、明確には持たない人々」で、
「彼女たちには生業があり、自分の個人的な情報が世に広く出ることは望んではいません」
ということで、なんだか、この映画の5人の境遇と重なると思った。

ほかにも、ベルリンの高架を通り過ぎる電車は、
監督の短編で、新長田駅横の道路の上の高架を走るJRの列車の映像に重なり、
線路が分かれていくシーンは、
『親密さ』のラストで、
恋人たちがそれぞれ乗った電車が分かれていくシーンを思い出させ、
いろいろ共通点があって、
より感銘が深くなった。

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